人はうまくいかなかったことを忘れられない…「キリの悪いところ」でやめるほうが作業を続けられるという逆説

◼️あえて未完にすると「続きをやりたくなる」

こういったメカニズムを知り、「そうだったのか!」と得心した人は多いのではないでしょうか。現代の広告の手法としても重用されているツァイガルニク効果ですが、研究によって証明されたのはなんと80年以上も前にさかのぼります。

そのとき行われた有名な実験は、次のようなものです。

被験者を2つのグループに分け、簡単な作業や粘土細工、パズルを解く課題などに取り組んでもらいます。

Aグループは最初から最後まで、すべての課題を完了させます。一方、Bグループにはひとつの課題を途中でやめさせ、次の課題に移ってもらうようにします。

全課題を終えたとき、それぞれのグループに「今やった課題にはどんなものがあったか?」とたずねると、課題をいちいち中断されたBグループのほうが、Aグループの約2倍の数の課題を覚えていました。

さらに「未完成の図形」と「完成した図形」の知覚実験も行われています。その結果「未完成の図形」のほうが「完成した図形」より記憶や印象に強く残ることが判明しました。

実は、これこそが、明日も明後日も「続ける」ためのコツです。人は、大抵の作業や仕事を「キリのいいところ」まで終わらせてその日を終えます。そして、次の日も「キリのいいところ」まで終わらせ……、この繰り返しです。しかし、これでは作業そのものがマンネリ化してドーパミンが出なくなってしまいます。

そこで、おすすめしたいのが「キリの悪いところ」でやめる方法です。あえて中途半端なところで終わらせるのです。こうすると「続きをやりたい」という欲求が強くなり、翌日にそれをできたことが脳への報酬になってドーパミンを放出。幸福感を得られます。

これが「続ける」ための原動力になるのです。

文/菅原道仁

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すぐやる脳

菅原道仁

2024/8/81,540円(税込)208ページISBN: 978-4763141675

今日も、はじめられなかった人へ
脳をその気にさせる方法、教えます!

【こんな人にオススメ】
・あれこれ考えてなかなかはじめない
・何をやっても長続きしない
・やってみたい事はいろいろある
・成長意欲はある。でも、まだ本気出してない

やせたい、片付けたい、
英語が話せるようになりたい、
スキルアップしたい。

すぐに行動すれば効果が
ありそうなことはわかってるんだけど、
なかなかはじめられない……。

10人いたら9人くらいは
こうやって「先延ばし」にしちゃうし、
強靭なアスリートのような
不屈の闘志を持った1人だけが
「今日から」はじめる。

じゃあ、これは「意志力」の差か
といえばそうではなくて、
人間の脳ってもともとエネルギーを無駄に
使わないようにプログラミングされてるんです。

亀は海の中で手足を引っ込めてスーッと泳ぎます。
これはエネルギーを使わず、波に乗って進むため。
陸に上がったらめちゃくちゃゆっくり歩く。
これもエネルギーを使わないため。

人間も同じで「怠惰」なのではなくて、
エネルギーを消費しないために
「すぐやらない」「動かない」「考えない」
ことで体力を温存しているんです。

脳は取り込んだ酸素のうち20%を使う、
人間にとって最大のエネルギー消費器官なので
休もうとするのは当然なんですね。

じゃあ、どうすれば「すぐやる」かというと
あるホルモンをドバッと分泌させることです。
それが「ドーパミン」です。

仕事でも、家事でも、勉強でも、
「やりだすまで」がなかなか長くないですか?
で、やりだしたらいつの間にか
エンジンがかかってきて
一気にやっちゃうことがあります。

これこそドーパミンの力です。

ドーパミンは「やりだしてから」出る。
これが出るから、さらにやる気になる。
これを「作業興奮」と言ったりします。

だから、とりあえず、あれこれ考えずやりだすと、
「ドーパミン君の力で勝手に体が動きはじめますよ」

というのがこの本です。

それを現役の脳神経外科医が説明してくれるので
信頼性が高く、かつ、簡単な文章なので
短い時間で読めてしまいます。

やったほうがいいのはわかっちゃいるけど
腰が重くてなかなかはじめられない、
という人はぜひ読んでみてください。

【目次より】
序章 脳がそれを拒否する理由
第1章 ドーパミンこそが行動を決める!
第2章 すぐやる
第3章 こまめにやる、早めにやる
第4章 続ける
第5章 決める、選ぶ
第6章 挑戦する
第7章 怒らない