適度な〝賞賛〟を報酬とするのは正解
褒められた人は、脳内のA10神経が刺激されてドーパミンが放出され、強い幸福感に包まれるからです。
アメリカの教育心理学者、ロバート・ローゼンソール氏が行った実験では、「教師に褒められて期待された生徒」と、「そうでない生徒」では成績の伸びに明らかな違いが見られるという結果が出ています。
この実験は1960年代に行われたものですが、その後「再現性がない」などと反論する学者が現れるようになりました。
しかし、このローゼンソール氏の発見した「褒めの効用」については、「ピグマリオン効果」(pygmalion effect)という名称がつけられ、現在では非常にポピュラーな心理学用語のひとつとなっています。
ピグマリオン効果とは、ひとことで言うと、「他人から期待されることによって学習・作業などの成果が上がる現象」のことです。
褒められるとやる気になって、アウトプットの結果がよくなるというサイクルは実証されているのです。現代では、ヴァーチャルなSNSの世界においての「いいね」の数や、肯定的なコメントも「褒める行為」にほぼ相当すると言えるでしょう。ですから、適度な〝賞賛〟を報酬としながら、努力を積み重ねるという姿勢は正解です。
(広告の後にも続きます)
マウンティングばかりのグループからは抜けなさい
「承認欲求には、2種類ある」という説もご紹介しておきましょう。
ひとつは「他人から認められたい」という「他者承認」。
そして、もうひとつは自分自身が自分を認める「自己承認」です。
「他者承認」の方向だけに偏らず、「自分が今の自分に満足している」という「自己承認」の評価軸もきっちりともてばよいのです。
もちろん、「自己承認」に踊らされすぎることもありません。
ドーパミンを出すための味方として、他人からも、自分自身からも適度に「承認を得る」という姿勢が重要です。
注意点も申し上げておきましょう。
「承認欲求がうまく得られない集団」に所属すると、ストレスがたまることがあります。多くの人が「望まないのに帰属せざるをえない集団」にいるのも事実です。
互いに承認欲求を満たし合えている関係であれば、問題はありません。
けれども、そこに君臨する〝ボス〟的な存在に、過剰な気遣いが必要だったり、理不尽で不条理なヒエラルキーが存在していたり、ストレスフルなマウンティングや、格付け合戦が日常的に繰り広げられていたり……。
そのような環境下で承認欲求を満たす、というのはどんな人にとっても至難の業です。反対に「他人の承認欲求を満たす役割」まで、強制的に背負わされかねません。
そのような集団には所属しない、もしくは自分から遠ざかることが賢明です。
どうしても脱退できないのであれば、心理的な距離を置くべきでしょう。
そうしないと心が萎縮して、やる気を出すどころの話ではなくなってしまいます。
文/菅原道仁