絵柄が特徴的なマンガは多数存在し、人によってはその絵柄に抵抗を感じてしまうこともあります。そして、そのなかには見逃すには惜しい名作も存在しました。
個性的な絵柄の『シグルイ』第1巻(秋田書店)
【画像】え…っ? 「この筋肉の描き方がクセになる」 こちらがどんどん濃く、過激になっていく『シグルイ』の表紙です(6枚)
スルーするのはもったいない絵柄が個性的な名作たち
数ある名作と呼ばれるマンガのなかには、かなり絵柄が特徴的な作品も存在します。そんな独特の絵柄に抵抗を感じて手を出せず、名作を見逃してしまっている方も多いようです。ネット上で特に、「気になってるけど絵柄が苦手だから読めてない」「苦手だったけど読んだらドハマりした」などの声が多い、「濃ゆい絵柄」の4作について振り返ります。
「刃牙」シリーズ
現在は第6部『刃牙らへん』が連載中の人気格闘マンガ「刃牙」シリーズ(著:板垣恵介)は、1991年に連載を開始した長寿作品で、熱いバトルとひと目で『刃牙』とわかる独特の絵柄が特徴です。
その唯一無二の絵柄に関しては「顔(特に鼻)や筋肉の書き方が独特で苦手」などの意見もあり、それを理由に手を出していないという方もいました。それでも、主人公「範馬刃牙」の成長やその父で地上最強の生物と呼ばれる「範馬勇次郎」を筆頭に繰り広げられる、濃すぎるキャラたちの戦いは一見の価値があります。
また、バトルだけかと思いきや、刃牙と恋人の「松本梢江」との恋愛関係や刃牙と勇次郎の親子の確執、和解など、『刃牙』シリーズならではの濃くて特殊な人間ドラマも描かれているのです。特に、第3部『範馬刃牙』で描かれた、刃牙と勇次郎による「地上最強の親子喧嘩」とそれに至るまでの物語は、読み終えた後に大きな感動がありました。そのほか、妙に美味しそうな食事描写や、いくつもネットミームになっている独特な名言の数々も見どころです。
絵柄に関しても連載が続く間にどんどん変わっているので、昔読んで苦手だった方も再チャレンジしてみると、意外に受け入れられるかもしれません。
『シグルイ』
山口貴由さんの代表作『シグルイ』は、南條範夫さんの時代小説『駿河城御前試合』内の1編を原作にした作品で、江戸時代の駿河城内で行われた真剣での御前試合および、そこに至るまでの剣士たちの因縁の物語を描いています。主人公「藤木源之助」と宿敵「伊良子清玄」を中心とする緊迫感あふれる戦いはもちろん、主人公たちの剣術「虎眼流」の師匠「岩本虎眼」の奇行や、「お美事にございまする」に代表される数々の名ゼリフは、一度読んだら忘れられません。
とはいえ、劇画調のリアルな絵柄かつ身体欠損や臓物がこぼれ落ちるようなグロテスクな描写が多いため、読むのが辛いという方も多いでしょう。第1話の冒頭から斬首シーンが詳細に描かれ、その後の扉絵では腸がはみ出た裸の剣士同士の戦いが描かれており、苦手な人にはかなりハードルが高い作品です。
それでも、「最初は気持ち悪かったが、見始めたら止まらなくなった」「話も筆致も濃密過ぎて、この密度に慣れるとほかのマンガが物足りない」などの感想も多く、マンガ好きの間では長年高く評価されています。刺激的な作品を求めている方は、かなりハマる可能性が高いでしょう。
『ジョジョの奇妙な冒険』
現在、第9部「JOJOLands」が連載中のマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』(著:荒木飛呂彦)は、1986年から続く長期作品で、長く愛されているバトルマンガです。
人間の精神力が生み出す特殊能力を持つ存在「スタンド」を駆使した異能バトルや、独特な絵柄で表現されるキャラたち、クセの強い名ゼリフ、さらには「ジョジョ立ち」と呼ばれるスタイリッシュなポーズなど、ハマる要素は多々あります。
ただ、「絵が濃すぎる」「ジャンプらしくない絵柄で当時敬遠してた」といった声もあり、絵柄に抵抗を感じる人も少なくありません。それでも「苦手だったが、読んでみたらストーリーが熱い」「絵柄に慣れると、これこそが『ジョジョ』の魅力だと感じた」「どんどん絵が芸術的に美しくなっていってすごい」などの意見も多くあるのです。
「ジョジョ」シリーズは、各部ごとに物語のつながりが存在することもありますが、それぞれ主人公や舞台が異なるため、気になるキャラが登場する部から気軽に読み始めることも可能です。SNSなどでは、絵柄もやや現代寄りになり、スタンド能力も登場して人気の高い「第3部」から読み始めることを勧める意見も多くありました。
『ベルセルク』
世界的人気のダークファンタジーの金字塔『ベルセルク』は、2021年に作者の三浦建太郎先生が逝去されましたが、現在は高校時代からの盟友の森恒二先生の監修のもと、三浦先生が設立した「スタジオ我画」のスタッフにより連載が続けられています。
壮大な世界観を舞台に主人公「ガッツ」の壮絶な生き様を描いた同作は、マンガ史に残る惨劇「蝕」の場面が有名で、また圧倒されるほどの描き込みの量も特徴として挙げられます。慣れればこの容赦のない世界観と絵柄がクセになるのですが、「絵が濃すぎる」「グロ描写がきつい」など、苦手な方の意見も多いのも事実です。
三浦先生の死後の連載再開で話題になった際に初めて読んだ、という方もおり「コマのスクショとか見た感じ絵柄苦手だなぁと思ってたけど、通しで読んでみるとめっちゃ絵柄好きだし面白かった」「話が面白過ぎて読んでるうちに絵柄も平気になってきた」などの意見も出ていました。友情や愛情、憎悪など多くの感情を揺さぶる秀逸な物語と、尋常ではない描き込み量で多くの読者を虜にしてきた同作は、ぜひ一度読んで欲しい作品です。