セブン-イレブン・ジャパン(以下セブン)が店内で焼いたピザを最短20分で宅配するサービスを8月に約200店舗で開始することを発表した。提供するピザはマルゲリータ(税込780円)と照り焼きチキン(税込880円)の2種類。注文が入ると、店舗に設置されたオーブンでピザを焼き上げて自宅まで届ける。なぜセブンは「宅配ピザ」という意外性のあるサービスを開始したのか。
セブンの焼き立てピザ!
今年の7月4日、セブンは「7NOW(セブンナウ)」という自社の配送サービスを通じてピザの宅配を本格的に始めることを発表した。
これまでもコーヒー(セブン-イレブンが最初に導入)、スムージーなどさまざまな新サービスを提供してきたが、それでも「宅配ピザ」は予想の斜め上を行き、「コンビニで宅配ピザだと?」などSNSでも驚きの声も目立った。
ただ、そもそも「焼きたてピザ」は宅配のために開発されたものではないという。
「当社には、オーブンを設置して、メロンパンやクロワッサン、フィナンシェなどの焼きたてのパンやスイーツを提供する店舗が約900店(24年7月末時点)あります。そのオーブンを活用して、一部店舗限定ではありますが、焼きたての美味しいピザもお客様にご提供しています」(同社担当者 以下同)
焼きたてピザは、約30店舗(24年7月末時点)で試験展開していたが、2024年8月からは北海道、九州エリアに拡大し、200店舗展開したという。
「ピザ生地は、一枚ずつ手で伸ばしているのがこだわりです。冷凍で納品されたものを提供する際にお店のオーブンで焼き上げます」
ピザの大きさは、大手の宅配ピザのSサイズとMサイズの中間ほどで、おひとり様でも気軽にオーダーしやすいサイズだ。マルゲリータ(780円)、照り焼きチキン(880円)という2種類は、市場でも人気のある味として選んだという。
この焼きたてピザの「宅配」が実現した背景にある「7NOW」とはどのようなサービスなのか。
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なぜ最短20分の宅配が実現できるのか
「7NOW」は、店内のほぼすべてである約3000商品を専用のアプリやウェブサイトから注文できるサービス。集荷・配達はセブンが連携する配送業者が担い、配送料金は税込110〜550円。最低注文金額は1000円(税抜)で、注文受付は9時30分~22時15分を原則としエリアによって異なる。
「7NOW」は約16,000店舗で展開している(2024年8月時点)が、もともとは2017年に「セブン‐イレブンネットコンビニ」という名称で、一部店舗でテストという形でスタートした。
当時は最短2時間以降の時間枠からお届け時間を選べるサービスで、時間を指定して注文する方式だったが、もっと早く届けてほしいという声が多かったようだ。
コンビニは、気軽に食事を購入したい時や、雑貨などが急に必要になったときなどに、欲しいものが「すぐに手に入る」機能が重要視されている。届ける時間が長いと当然、コンビニに求められているベストな価値を提供できない。
その課題を解決した要因のひとつが、2020年からの「リアルタイム在庫連携」だ。店舗の在庫状況がリアルタイムで注文画面に反映される仕組みで、欠品した商品は表示されないため、「注文したのに無かった」という事態も回避できる。
また、配送業者とマッチングする仕組みも構築。配達員不足解消の背景には、コロナ禍より急激に普及したフードデリバリーサービスの後押しもあっただろう。
このような取り組みにより「7NOW」という配達インフラが構築され、その結果、数ある商品のうちのひとつとして「ピザ」も最短20分で届けられるようになった。別々に始まった2つのプロジェクトが交わる形で、実現したサービスが「宅配ピザ」というわけだ。