「ガンダム」シリーズの世界でも現実世界と同様に、戦争にはルールが設けられています。しかし「ルールは破られるために存在する」と誰かがのたまったように、チートそのものなガンダムが作られてきました。



南極条約で使用を禁止された核バズーカを搭載したガンダム試作2号機。「HG 1/144 ガンダムGP02A ガンダム試作2号機」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

【常識なぞ知らぬ】歴代「ガンダム」でも「最高にチートな機体」をチェックする!

ガンダム試作2号機は史上初の条約違反ガンダム?

 突然ですが「ガンダム」世界にも、違法脱法兵器は存在します。「宇宙世紀」など様々な世界観があるものの、それら全てには法律や条約、レギュレーションは取り決められており、「違法」「条約違反」という概念もあるからです。

 なぜ、ルールがあるのでしょうか。その理由は「破壊力が大きすぎて人道に外れる」「パイロットを廃人にする」など色々ですが、裏返せば「ルールを破った方が強い」ことが一般的です。バレなきゃいい、勝てば儲けモンの「違法脱法ガンダム」はロマンにして、「大人って汚い!」という象徴でもあるのです。

 ガンダム世界で初の「条約違反」をやらかしたのは、ジオン軍の「マ・クベ」大佐でしょう。オデッサの基地を任されながら防衛線を突破され、苦し紛れに水爆ミサイルを発射しています。

 これが、地球連邦とジオン公国が結んだ「南極条約」にモロに違反していました。おそらく『機動戦士ガンダム』は、ロボットアニメでオリジナルの条約を設定し、それが破られるまでを描いた記念すべき初めての作品でしょう。

 さらに、史上初の「条約違反ガンダム」と呼ばれるのが『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場したMS(モビルスーツ)「RX-78GP02A ガンダム試作2号機」、通称GP02「サイサリス」です。核攻撃を前提とした強襲型のMSであり、ジオン軍の残党「デラーズ・フリート」の一員である「アナベル・ガトー」少佐が強奪した上で、観艦式を行っていた連邦軍艦隊を「アトミック・バズーカ」により壊滅させました。

 この機体がややこしいのは、上記の攻撃後、デラーズたちが「核攻撃力を有するMSを連邦軍が開発していた」と非難したことです。いや、実際に核兵器を使ったのはアンタたちじゃないの?

 それに南極条約は、厳密には「核の使用」を禁じているだけで、核攻撃力を備えたMSを作ることには触れていません。しかも、南極条約はあくまで戦時条約であり、一年戦争が終わった後は効力がなくなっている可能性があります。つまり「条約違反かどうかグレーな機体を、奪った勢力が核兵器を使ってから存在意義を否定する」という、二重にも三重にもねじれた面白さがあるのです。

 かたや『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の世界では、「ニュートロンジャマーキャンセラー」(以下NJC)という技術を使ったMSや兵器が「ユニウス条約」で禁止の対象となっています。

 これは、「プラント」が地球のいたるところに撃ち込んだ「ニュートロンジャマー」により核分裂を使った装置が使えなくなったなか、核分裂を再び可能にして、核エンジンを使えるようにするものです。要は「限りあるバッテリーをやり繰りしているモブに対して、莫大な核分裂エネルギーで無双できる」チート技術です。

 この技術を初採用したのが、前作『機動戦士ガンダムSEED』の主人公「キラ・ヤマト」が乗るMS「フリーダムガンダム」でした。が、当時は「それまで存在していなかった技術」のため、完全に合法です。その後にフリーダムの設計図がリークされ、「連合」がプラントに向け核弾頭ミサイルを発射するのに悪用されたため、連合とプラントが停戦する際に結んだユニウス条約により禁止されました。

 そして条約が有効ななか、プラントは核エンジン+NJC搭載のMS「ディスティニー」とMS「レジェンド」を開発して投入しました。このふたつは完全にアウトですが、その前に地球連合がまたしても核ミサイル攻撃をしかけたことや、レジェンドは戦闘中に消滅、デスティニーは第三勢力の「ターミナル」に回収(映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』で明らかに)されたことで、有耶無耶になったようです。

 また同じ頃、キラも再び核エンジン+NJCを積んだフリーダムや後継機「ストライクフリーダム」に乗っていましたが、「ザフト」でも連合でもないので条約は適用されません。ユニウス条約、抜け道が多すぎやしないですか?



禁止された技術「阿頼耶識システム」により操縦される主役機ガンダムバルバトスは、やはり禁止技術の「ダインスレイヴ」により敗北。「HG 1/144 ガンダムバルバトス」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

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違法技術を上手く使った方が勝ち! 仁義なき「鉄血のオルフェンズ」世界

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』世界で禁忌とされている技術はふたつあり、ひとつは「阿頼耶識(あらやしき)システム」です。ザックリいえばパイロットの神経とMSなどのシステムを結びつけ、直感的に空間を把握したり機体の操縦ができたりする技術であり、たとえば「殴りたい!」と思えば、敵に照準を合わせてレバーを入れてボタンを押して……という手順をすっ飛ばしてすぐに殴れます。

 パイロットを訓練する必要もなく、素人でもMSに乗せて即戦力にできる便利さですが、過酷な手術が必要で、背中に突起ができるため仰向けに寝られなくなったり、大量の情報が脳に流れ込むことで身体に障害が生じたり、廃人化あるいは死亡したりします。「一般人を便利な捨て駒にできる」という意味でも非人道的すぎるため、開発した軍事組織「ギャラルホルン」が自ら禁止しました。

 それを主人公の「三日月」は使いこなして「ガンダム・バルバトス」と人機一体となり大活躍し、リミッターを外して強化した結果、右半身不随となりました。ギャラルホルン、正しかったんですね。

 もうひとつの禁忌は、針金のように細くて頑丈な特殊弾頭をレールガンで撃ち出す兵器「ダインスレイヴ」です。MSのフレームと同じ「レアアロイ」(合金)を使っており、MSの装甲も貫通する凄まじい威力を秘めています。が、詰まるところ「メチャメチャ速くて頑丈な弓矢」に過ぎません。

 なぜこんなものが猛威を振るうかといえば、この世界のMSは「ナノラミネートアーマー」で覆われてビーム兵器が効かないため、パイロットたちは射撃武器について「喰らっても大丈夫」という認識、習慣が身に染みついており、そこにつけ込むという、一周回ったチート兵器だからです。

 このダインスレイヴ、主人公側のMSである「ガンダム・フラウロス」も使えます。が、「レアアロイ製の弾頭を使っていないのでセーフ」という解釈のもとで運用されています。まさに「脱法ガンダム」ですね。

 そもそも本筋のストーリーも「ダインスレイブは禁止兵器」を軸のひとつとしていて、主人公たちと協力した組織「タービンズ」も荷物に紛れ込ませられ、その討伐のためにギャラルホルンの「イオク・クジャン」がこれを使って大戦果を挙げていました。ガンダム世界では「違法だと非難した側が違法武器を使う」パターンが多いですね。

 最終的には敵MS相手に激戦を繰り広げていた三日月たちも、大量に撃ち込まれたため避けきれずに致命傷を負わされました。無敵の力を持ったガンダムをも物量でねじ伏せてしまったことで、「戦いは数だよ兄貴!」は証明されたようです。