前田亘輝「夏のTUBEに負けたくなかった」“なにくそ精神”で秋冬だけツアーして、夏に関係ない曲を作って「夏バンド」のイメージと戦ったTUBEが手に入れたもの

バラードは世間のイメージと戦った時期に生んだ武器

――TUBEはバラードの名曲も多いし、バラエティに富んだ楽曲も魅力ですが、それは世間のイメージと戦った時期に生まれたものだったんですね。

バラードはそのときに我々が生んだ武器です。秋冬にバラード曲を出して、しっとりめの曲とロックチューンしかやらないツアーを回って。『シーズン・イン・ザ・サン』もやらない。するとまたクレームが来るわけですよ。僕らは「やるわけねえだろ。何月だと思ってんだよ!」って(笑)。そういうやりとりがありましたね。

でもその時期、それぞれプレイヤーとしてすごく成長したし、技術的にもいろんなものを吸収できて。それをごちゃ混ぜにしたら、美味しい料理ができたんですよね。

今、TUBEラテンとかTUBEシャッフルって呼ばれるものも、そこから生まれて。本当の味がないと、楽しくやる曲もただのチャラチャラしたものになっちゃうから。当時、きっとそれをつかめたんでしょうね。

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本当に伝えたいことを伝えるために楽しませる

――オーディエンスの求めるものに応えようという境地に至ったきっかけはあったのでしょうか。

ライブの中ではありました。全員で踊ってみようとか、宙づりになってサーフボードで浮いてるふりしてみようとか、アイデアを出して。ほとんどドリフの世界です(笑)。でもそれにファンが沸いてるのを見て、こういうエンターテインメントを求めているんだな、と気付いて。

楽しさが先行する中に、メッセージソングやバラードをちりばめていくようになりましたね。ヒット曲っていうのは、うまく使おうと。冒険するシーンはライブがあったまったところでやろうとか、ひと盛り上がりした後、今、本当に伝えたい歌をやろうとか。

秋冬のツアーで『Beach Time』なんかをセットリストに組み込むと全体が崩れちゃうんじゃないかって思っていたけど、そんなこともなくて。アルバム1枚に哲学があるというより、喜怒哀楽すべて詰まってるのがTUBEだから。それがやっとわかったんですね。