アニメといえば現実では体験できない、非現実的な展開を味わえることも魅力のひとつです。特に90年代の少女アニメには、令和では観られないような刺激の強い展開が多くみられました。
TVアニメ『魔法騎士レイアース』ビジュアル (C)CLAMP・ST/講談社・TMS
【画像】ガンダムファンも「気になる」 こちらは30年の時を経て蘇った『レイアース』です(5枚)
当時の子どもたちにトラウマを植え付けた?
ここ最近、『魔法騎士レイアース』や『らんま1/2』といった懐かしアニメの再アニメ化が発表され、多くのファンから喜びの声があがっています。90年代の作品において、『セーラームーン』のセーラー戦士が全滅してしまう展開はいまもなお知られる衝撃的なシーンでした。実は、それ以外にも90年代の少女アニメはかなり「衝撃展開」の作品が多かったようです。
※この記事には『神風怪盗ジャンヌ』『こどものおもちゃ』『魔法騎士レイアース』についてのネタバレを含みます。ご了承のうえお読みください。
1999年に放送が開始された『神風怪盗ジャンヌ』はトラウマ要素の目立つ作品です。原作は少女マンガ雑誌「りぼん」にて連載されていました。
主人公の「日下部まろん」は、神の使いである準天使「フィン・フィッシュ」の願いを聞き入れ「怪盗ジャンヌ」の力を手に入れます。まろんの使命は、神と魔王の力が対立する世界において、神の力を取り戻すために、魔王が放った美術品に宿る悪魔を退治していくことでした。
しかし、すべての悪魔を倒したところで、驚きの展開を迎えます。なんとフィンは魔王の使いであり、実はこれまでの戦いは、ずっと魔王の力を取り戻すことに加担していたことが判明します。
両親のいなかったまろんは、長い戦いのなかでフィンと家族同等の関係を築いていました。しかし、そのフィンがまさかの裏切り者だったという、かなりきつい展開を迎えます。
また1996年から放送が開始された『こどものおもちゃ』にも、度重なるトラウマ展開が見られます。原作は「りぼん」にて連載された恋愛コメディマンガです。
本作は、底抜けに明るく声の大きい売れっ子タレントの、主人公「倉田紗南」の成長が描かれます。一見した作品の印象は、ギャグ色の強いアニメでしたが、実は、紗南には生みの親に捨てられ、一時施設で過ごしていたバックボーンが存在します。さらに紗南の通う学校では、クラス担任が生徒からいじめられる、学級崩壊を起こしていました。
いじめ問題をなんとか乗り越えても、倉田家の破産、父の急死、失恋、芸能界追放の危機など、数えきれないほどの絶望展開が、紗南に襲い掛かります。
かわいらしい紗南の容姿のキャラクターデザインに惹かれて同作を視聴した人は、作中で展開される鬱展開とのギャップに驚愕したことでしょう。
そのほかにも1994年から放送されていた『魔法騎士レイアース』もトラウマアニメとして有名です。原作は少女マンガ雑誌「なかよし」にて連載された異世界ファンタジーです。
主人公は、中学2年生の「獅堂光」「龍咲海」「鳳凰寺風」の3人組です。
ストーリーは、世界を魔物から救うために「エメロード姫」が主人公たちを異世界「セフィーロ」に召喚するところから始まります。
光たちは、世界を混沌に陥れた元凶と思われていた「ザガート」を倒すことに成功しますが、状況はここで一変します。いままで「祈り」によって「セフィーロ」の平和と秩序を守っていた「エメロード姫」は、「ザガート」を愛してしまったことにより世界の秩序を守る力を失っていたのです。
そして「エメロード姫」は、「ザガード」を失った悲しみから、主人公たちに刃を向ける復讐の魔物と化してしまいます。
このとき主人公たちは、残された「柱としてのエメロード」の思念から、自分たちが機能を失った「柱」を殺すため、エメロード自身が呼んだ最終手段、いわば「死刑執行人」だということを知らされるのでした。
自分たちの信じてきたエメロード姫が、恋人を失った復讐の魔物となって迫る姿を目の当たりにした光たちの心情は計り知れません。
90年代の少女アニメ作品は、「かわいい」「かっこいい」だけでは語り切れない、物語の重さによって作品の深みが増し、いまもなお愛され続けているのでしょう。