「ガンダム」シリーズにおいて、主人公機はまず負けませんが、それでもあと一歩というところまで追い詰められることはあります。「主人公補正」かどうかはさておき、そこまでやっても勝てなかった「敵方」の敗因を探ってみましょう。
キュベレイはZZの渾身のハイメガキャノンを受け止めた。「HG 1/144 キュベレイ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
【画像】おまえもだいぶ異形だな! こちらがもうちょっとで歴史を変えた「ヴァル・ヴァロ」です(10枚)
あと一歩で歴史は大きく変わっていた…!
「ガンダム」シリーズにおいて、主人公が万事休すという場面は、よく訪れます。そしておおむね、ライバル側に何かしらの要因があって、主人公が勝ちを収めてきました。そうした、主人公をギリギリまで追い詰めつつも敗れたライバルたちは、なぜ負けてしまったのかを見ていきます。
正々堂々と戦い負けた……「キュベレイ」
『機動戦士ガンダムZZ』のラストバトルでは、「キュベレイ」の「ハマーン・カーン」が「ZZ」の「ジュドー・アーシタ」を決定的に追い詰めた場面があります。
ビームサーベルを打ち合う両機、スキを見つけたキュベレイは、ZZの背面にとりつき羽交い絞めにするとファンネルを放出しました。キュベレイ勝利の目前、ZZは分離しファンネルの攻撃を回避します。
最後は再びお互いサーベルを振るうと、キュベレイは両断され、再起不能となりました。
負けを潔く認めたハマーンに、ジュドーは「なぜもっとファンネルを使わなかった!?」と詰め寄ります。ジュドーはそこに「手心」が加わっていたことを感じていたのです。これに対しハマーンは、一騎打ちを望んでいたことを打ち明けました。
「カミーユ」「クワトロ」「シロッコ」と渡り合ってきた彼女が、容赦のないファンネル攻撃をしていれば、この戦局はもしかすると勝者が入れ替わっていたかもしれません。
娘に執着しなければ……「ラフレシア」
『機動戦士ガンダムF91』のラスボス、「鉄仮面」の「ラフレシア」も、主人公の「シーブック・アノー」が駆る「F91」をもう一歩のところまで追い込みました。
ラフレシアは、遠距離はビーム兵器、近距離は「テンタクラー・ロッド」、さらに「Iフィールド」(ビーム無効化)持ちという攻守にスキのないモビルアーマーです。
このラフレシアに挑むF91と、鉄仮面の娘である「セシリー・フェアチャイルド」が操る「ビギナ・ギナ」は、無尽蔵に繰り出されるテンタクラー・ロッドにより、取り付く隙も見出だせません。
やがて、ロッドでビギナを捕らえ動きを封じると、鉄仮面は娘が乗るコックピットをこじ開け、親子で顔を突き合わせての舌戦を繰り広げます。
その間F91は、ロッドの猛攻に活路を見いだせなかったものの、やがて「質量をもった残像」が発生すると、鉄仮面はこれに翻弄(ほんろう)されます。
鉄仮面はコックピットに戻り戦闘に専念し、F91の右足、左腕を斬り落とすほど追い詰めますが、「質量をもった残像」に冷静さを欠き、誤射で自身のコックピットを撃ちぬいて敗北してしまいました。
完全に優勢で冷静に臨めば勝っていたと思われるこのバトルは、娘であるセシリーとの対話を試み、F91に猶予を与えたことが敗因だったのかもしれません。
ビグロの高速移動でアムロは瞳孔を開き気絶した。「1/550 ビグロ」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
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「ヴァル・ヴァロ」の敗因は「横やり」…?
無双アムロ・レイを追い込んだ名機「ビグロ」
主人公を追い詰めるのは、いわゆるラスボスだけではありません。
『機動戦士ガンダム』の「アムロ・レイ」は、「黒い三連星」や「ハモン」の特攻、「マ・クベ」の駆る「アッザム」などにも九死に一生を得る戦いをしています。なかでも、あと一歩まで追い詰めたといえるのは、宇宙で戦ったジオン軍パイロット「トクワン」の操るモビルアーマー「ビグロ」ではないでしょうか。
まずビグロは、アムロの「Gスカイ」とともに出撃した、「セイラ・マス」の「Gブルイージー」を、得意の運動性と機動性をいかし、クローで捕縛します。しかしなぜかビグロはGブルに攻撃を加えず、宇宙空間に放り投げました。
その後、ビグロはガンダムに換装したアムロと戦闘に入り、やはりここでも機動力で翻弄します。そして、ガンダム最大のピンチが訪れました。
ビグロと交錯したガンダムは、その機体にとりつくと、高速移動のGに耐えられずアムロは気を失ってしまいます。
完全に無力化したガンダムをビグロはクローでつかみ、メガ粒子砲門を開き、勝利確定かと思われましたが、クローの衝撃で目を覚ましたアムロは瞬時にメガ粒子砲をかわし、その砲門にビームライフルをぶち込み、逆転勝利を収めます。
ビグロの敗因は、やはりGブルを解放したことにあると思われます。ここで決定的なダメージを与えておけば、アムロはガンダムへの換装ができず、ビグロとトクワンは勝利をつかむことができたかもしれません。
一騎打ちのはずが……「ヴァル・ヴァロ」
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』では、「ケリィ・レズナー」の「ヴァル・ヴァロ」が、「コウ・ウラキ」の「ガンダムGP01Fb」(以下フルバーニアン)を、勝利目前まで追い詰めました。
一騎打ちを望んだケリィのヴァル・ヴァロは、フルバーニアンをスピードで翻弄し、「プラズマリーダー」でその動きを封じ、勝負あり、と思われました。
しかし「チャック・キース」が搭乗する「ジム・キャノンII」が現れ、プラズマリーダーを破壊します。さらに、男の決闘に「ニナ・パープルトン」が介入してきました。
そのように横やりが入るものの、ヴァル・ヴァロに2度目のチャンスがおとずれます。「クローアーム」でフルバーニアンを捕らえ、再び動きを封じたのです。ところがフルバーニアンは機体を分離させるファインプレーで逃れ、ビームサーベルで機体を突かれたヴァル・ヴァロは敗北してしまいました。
モビルスーツ戦で「一騎打ち」を望むというのも問題がありますが、キースやニナが水をさしたのが敗因となったのではないでしょうか。ここでもニナか……。