60年代のミッチーブーム、70年代の『エースをねらえ!』、そして2000年初頭の『テニスの王子様』など、日本では何度かテニスブームが起きた。また、錦織圭、大坂なおみなどトッププロが国際大会で成績を残せばニュースにもなる。だが、年々競技人口は減っており人気スポーツとは言いがたい。対照的に韓国ではいまテニスが盛り上がっているという。その理由とは?
「ミッチーブーム」と『エースをねらえ!』
「テニス」と聞いて何を連想するだろうか? 日本においては世代によって抱くイメージに大きな違いがあるスポーツだろう。
「ミッチーブーム」「テニスコートの恋」などのフレーズがパッと思いついた人は、昭和の高度経済成長期のどまんなか世代だろう。「ミッチー」とは、現上皇后の美智子さまのニックネームだ。
民間人の美智子さまがときの皇太子と軽井沢のテニスコートで出会い、自由恋愛を経て結婚に至った現代のシンデレラストーリーは、たちまち女性たちを虜にした。ミッチーと言えば、テニス。テニスと言えば、軽井沢。軽井沢といえば、おしゃれで上品でキラキラしている——。
そんなイメージが日本全体をすっぽり覆ったのが、1960年前後の時代の空気感だった。
その後、70年代中盤から80年代にかけて再び大きなテニスブームが訪れる。火付け役となったのは、大ヒット漫画『エースをねらえ!』だ。さらに1975年ウインブルドンで沢松和子がアン清村と組みダブルス優勝したことで人気に拍車が掛かった。
大学生たちはラケットを手に、男性はVネックセーター、女性は白いワンピースをまとってコートへ向かう。テニスといえばオシャレで開放的……そんな時代があったのだ。
それから時は流れて、2020年代——。
日本のテニスコートから若い女性たちの姿が消えてしまった。1979年にテニススクールとして開業した、総合スポーツクラブ『ルネサンス』の岡本利治代表取締役は、次のように述懐する。
「我々がテニススクールをオープンしたころ、80年代は圧倒的に若い女性が多かったんです。それが最近では、日中は中高年の女性が中心。夜になると仕事終わりの男性が多くなりますが、若い女性は少ないですね」(岡田利治 ルネサンス代表取締役社長)
かつては一世を風靡したテニスブームだが、1990年代中盤から人気が下火になりはじめた。
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『テニスの王子様』人気
その後、2000年代初頭の『テニスの王子様』人気や、2010年代の錦織圭・大坂なおみらの活躍もあったが、その時期の『ルネサンス』の客層はどうだったのか?
「『テニスの王子様』のときは、男の子を中心にジュニア選手が増えました。錦織選手のときも会員は増えたのですが、若い人というよりも、社会人になって一旦テニスを離れた男性たちが戻ってきた感じでした」(岡田利治 ルネサンス代表取締役社長)
つまり競技人口が増えるタイミングはいくつかあったが、若い女性は少なかったという。
もはやテニスは人気がないのか? 実際世界的に見ればそんなことはない。
全豪・全仏・全英・全米、4大大会が行われる国々ではサッカーに匹敵するほどの人気。世界の競技人口は1億人を超えており、間違いなく人気スポーツなのだ。先日も37歳のジョコビッチがパリ五輪で金メダルを獲得、史上5人目となるゴールデンスラムを達成したことが話題になった。
では4大大会などもない、アジア人の文化やライフスタイルにテニスは合わないのだろうか?
それがそんなことはない。
現在空前のテニスブームが訪れている国があるという。それがお隣の国、韓国だ。しかもハマる人の多くは若い女性。どうやら韓国では、テニスは「かわいい」スポーツとして人気を博しているようなのだ。