Jクラブの新たな強化方法に? 関塚隆TDが語るJ3福島が川崎や湘南と業務提携を結び、“新米”寺田周平監督を招聘したワケ【インタビュー2】

 寺田周平監督が新たに率いる今季の福島は、4-3-3を基本システムに、主体的に、技術を大切にしながら、魅せて勝つスタイルを標榜している。

 24試合を終えての成績は、10勝3分11敗、36得点・27失点で10位。今季のJ3は上位2チームがJ2へ自動昇格し、3~6位のチームが昇格プレーオフへ出場するレギュレーションで、福島も昇格レースに食らいついている状況だ。

 鬼木達監督の右腕として川崎で数々のタイトル獲得に貢献してきたが、プロクラブを指揮した経験はなかった寺田監督の招聘は、大きな挑戦に映ったが、ここまでは奏功していると言えるだろう。では、元教え子へのオファーを関塚氏はどう決めたのか。そこには川崎との業務提携というクラブの強化策も関係していたという。

「まず川崎さんの強化と話していたのは、『若い選手のレンタル先を探しているのですが、セキさんのところで来年度どうですか』ということだったんです。それで福島のサッカー見たいと練習試合に来てくれて、当時の服部監督がしっかりボールを大事にするサッカーを目指していたので、『来年に向けていろいろ話を進めさせてください』ということでした。お互いにウィンウィンの関係を築きたいね、と。

 そして玉手(淳一/福島の強化部長)も含めて、選手の意識や技術など全体の基準をもっと高めたいというところで、そのためにはどういう風にするのが良いかと話していた際、川崎さんとの業務提携という選択肢が出てきたんです。

 その話を進めるなかで、寺田が監督に挑戦したいという想いを持っていると川崎さんから教えてもらい、スタイルや方向性にも合っているということで、オファーをさせてもらったという流れでした。

 彼は選手としての実績もあり、川崎でアンダー世代のコーチ、監督も長く経験し、ここ4年はトップチームのコーチも務めてきた。その意味で勝者のメンタリティを持っている。また川崎一筋25年で、地域密着を大切にしてきたクラブで、その重要性も理解している。そう考えたら今、一番適任だなという想いがありました」
【動画】寺田監督らからのメッセージ
 すると昨年12月には寺田監督の就任を発表し、年が明けた今年2月には川崎との業務提携を締結。福島としては2013に業務提携したJ1の湘南に続く、2クラブ目となるパートナーの誕生であった。

 福島と川崎は今回の業務提携についてこう発表している。

【目的】双方のチームおよび選手の強化、育成によりクラブの発展を図ること
(1)両クラブ間の選手などの人材交流
(2)スカウティングの情報ならびにチーム強化のノウハウの共有

【期間】2024年2月1日~2026年1月31日(2年)
※2013年に締結いたしましたJ1湘南ベルマーレとの業務提携については、今後も継続させていただくこととなります。
同提携は、福島の復興支援、両クラブの事業拡大ならびにチーム強化を目的とした内容となっております。

 その背景には関塚氏の想いもあった。

「僕自身もJリーグが始まった93年から、1年は清水にコーチで行かせてもらいましたが、鹿島で10年やらせてもらい、成績だけじゃなく、地域に密着しながら満員のスタジアムを目指すなかで、ジーコの教えや、クラブのスタッフと選手らが、どういう風にチームを作り上げていくかを学び、さらに川崎でも色々なことを吸収でき、大きな財産になりました。

 その経験を還元したいという想いもありつつ、育成面を含めて、今は世界的に見ればレッドブルグループや、シティグループなど、ひとつのメソッドの上でいくつかのチームを強化していく流れが示されているけど、ひとつのクラブでやれることは限られている面もある。だから提携という、手を取り合って、選手育成にしても、指導者の育成にしても、やれることを増やしていくというのは、必要なことなのではないかなと感じていました。

 それに湘南さんとは震災の際に福島の選手が、平塚の馬入の練習場でトレーニングをさせてもらったり、絶対に切っても切れない関係性があるので、川崎さんとの提携に関しても、湘南さんに話をさせてもらったうえで進めさせてもらいました。

 財政的な面やクラブの規模からしても、福島はまだまだ成長が必要。そのためには、ノウハウや力を借りながらお互いに大きくなっていくっていうのは、湘南さんとも、川崎さんとも、やっていければ良いなと思っています」
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 その点では、改めて福島は施設面で足りない部分もある。

 練習場にはクラブハウスがなく、シャワーは簡易的なもの。選手たちは提携している一柳閣(温泉宿)で身体を癒し、スポンサーの株式会社ダイオーに協力してもらいながら食事を取っている。

 またホームのとうほう・みんなのスタジアムはアクセス面などで課題も抱え、集客に頭を悩ませている。

 それでも関塚氏は初めて練習場である十六沼公園天然芝グラウンドに足を運んだ際に感銘を受けたと振り返る。

「グラウンドがすごく良くて驚かされてね。天然芝が2面があって、山に囲まれた、静かな環境で、まさにサッカーに集中できる。成長するために練習に打ち込みたい選手にとっては素晴らしい環境だなって。

 それに福島は新幹線で東京から1時間30分ほど、大宮からだったら1時間5分ほどで、アクセスだって悪いわけじゃない。環境的にも本当にポテンシャルがあって、やりようによっては、もっと充実できるなと」
 ポテンシャルを秘めているのはスタジアムも同様だろう。関塚氏は最近はアウェーの地でも吸収できることはないか、探す日々であるという。

「アクセスのせいにするだけでなく、やれることってまだまだあると思っていて。アウェー戦で各スタジアムに行くと試合前や、スタジアムの周りなどで楽しんでいる人がいるじゃないですか。

 イベントや食べ物のブースが設けられていたり、そういう楽しみがあって、なおかつ試合がある。夢が詰まっているというか、美味しいものや、そこでしか食べられないものなどを楽しんでもらって、試合でも盛り上がって、喜んで帰ってもらう。そうすれば、もっとお客さんが来てくれる場になると思うんですね。

 Jリーグスタート時の鹿島でも1万5000人のスタジアムを満員にしようと色んなことを模索していましたからね。そうやってみんなで協力しながらひとつずつ作り上げていった。

 川崎では、風変わりなイベントがたくさんあった。それこそファン感謝デーでは川崎競輪場で4番のブルーのヘルメットを被って自転車で走ったりしたからね(笑)。あの時は、ここまでやるのかと思ったけど、斬新だったよね。そうやって知恵を出し合うことも必要なのかなと」

 そうした一つひとつの模索がまたクラブの新たなページを作っていくのだろう。

 では、テクニカルダイレクターとして、改めてピッチ内でも大事にしていることはどういうことなのか。

(第3回に続く)

■プロフィール
関塚 隆 せきづか・たかし/1960年10月26日、千葉県生まれ。現役時代は本田技研でFWとしてプレーし、引退後は鹿島でのコーチなどを経て、2004年からは川崎を率い、魅力的なサッカーを展開。その後はロンドン五輪代表、千葉、磐田でも監督を務め、昨年7月から福島のテクニカルダイレクターに就任。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

■8月31日はスタジアムへ!
8月31日(土) 18:00
北九州戦(とうほう・みんなのスタジアム)
は「集まれ5,000人!ユナまつり」と題し
様々なイベント(花火やベースボールシャツをプレゼントなど)を企画中!
詳細は下記へ
https://fufc.jp/lp/2024/0831

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