人気マンガが実写化される際、必ずといっていいほど注目を集めるのが「キャラクターの再現度」です。何となく再現度が高ければ「成功」、逆に悪ければ「失敗」と見てしまいがちですが、世の中にはそこまで再現度は高くないにもかかわらず、原作ファンを納得させた実写化作品が存在します。
2025年1月10日(金)に公開される劇映画『孤独のグルメ』のティザービジュアル (C)2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会
【画像】そんなに違う? 似てないのに成功した「実写化キャラ」と「原作キャラ」を比較(6枚)
新しいキャラクター像を確立させた実写化の数々
2024年12月公開予定の実写映画『はたらく細胞』の第4弾キャストが、8月20日に発表されました。今回は深田恭子さん、加藤清史郎さん、片岡愛之助さんなど合計9人が発表され、注目を集めました。
このように人気マンガの実写化において、キャラクターの再現度は何より気になるポイントのひとつでしょう。しかし、これまでの実写化作品を振り返ると、そこまで再現度は高くないにもかかわらず、「別路線」で成功を収めた例も存在しました。
例えばドラマ作品でいうと、2012年よりテレビ東京系列でシリーズ化されているドラマ『孤独のグルメ』はその最たる例ではないでしょうか。同作は原作の久住昌之先生と、作画の谷口ジロー先生による同名マンガをもとにした作品で、輸入雑貨商を営む主人公の「井之頭五郎」が、仕事の合間にふらりと飲食店に立ち寄り、空腹を満たす様子が淡々と描かれます。
ドラマシリーズも基本的な構図は原作と同じですが、エピソードはオリジナルが主体で、なおかつ五郎の人物像に変化が加えられていました。というのも原作の五郎は、やや人見知りでニヒルな性格だったのに対して、ドラマ版は柔和で人好きなキャラクターに変化しているのです。
また見た目に関しても、原作はズングリとしていましたが、五郎役にキャスティングされた松重豊さんはシュッとした体型でした。唯一の共通点といえば、大食漢なところくらいではないでしょうか。
そうした違いもあり、実写化が発表された当初は「イメージが違う」と否定的な声も少なくありませんでした。しかし「おじさんがただただメシを食っているだけ」というシュールな絵面や、松重さんの見事な食べっぷりはたちまち話題となり、2025年1月には松重さん自ら監督と脚本を務める劇場版が公開されます。
なおYouTube動画「【孤独のグルメ】松重豊が「井之頭五郎」になったワケ【孤独のグルメの素 #2】」で原作者の久住先生が語ったところによると、松重さんが五郎役に抜擢されたのは、「ロケ弁をものすごく美味そうに食べたから……」だそうです。些細な理由ですが、『孤独のグルメ』の実写化においては、それが一番大切だったのかもしれません。
藤原竜也さんが夜神月を演じた映画『デスノート』ポスタービジュアル (C)大場つぐみ・小畑健/集英社「週刊少年ジャンプ」 (C)2006「DEATH NOTE」FILM PARTNERS
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藤原竜也さんの怪演に引き込まれた『デスノート』
映画『デスノート』で藤原竜也さんが演じた「夜神月(やがみ らいと)」も、独自の魅力を放っていました。原作の月といえば、優秀ながらも控えめな高校生で、友人との交流などはほとんど描かれていません。対して実写版の月は大学で友人たちと賭けバスケに興じるなど、不必要に思えるような描写がチラホラ見受けられました。
そのため原作と実写版では月の印象が少し異なりますが、だからといって劇場版の評価が低いわけではありません。特に「暴走した正義」による狂気を全面に押し出すような藤原さんの感情的な演技は見事で、観る者をグッと引き込みました。これは月がもともと持っていた魅力に、藤原さんならではの演技が加わって、化学反応が起きた結果ではないでしょうか。
原作再現度という点では、「L」を演じた松山ケンイチさんの方が評価は高いものの、ファンの間では「顔は全然似てないけど、藤原竜也の月は本当に月してる」「ただの藤原竜也だけどあれはあれで大好き」といった声が少なくありません。
一方、実写映画『バクマン。』の山田孝之さんも印象的でした。同作は主人公の「真城最高(通称:サイコー)」とクラスメイトの「高木秋人(通称:シュージン)」がタッグを組み、漫画家を目指していく物語です。実写映画ではサイコーを佐藤健さん、シュージンを神木隆之介さん、そして彼らを支える「週刊少年ジャンプ」の編集者の「服部哲」を山田さんが演じていました。
ただ山田さん演じる服部は、そのビジュアルはおろか性格もだいぶ原作とは異なります。原作ではサイコーたちに熱心な指導を行うなど、熱血漢な側面が見られましたが、実写版では冷静さのほうが際立つ、どちらかといえば「ザ・編集者」といった人物像でした。しかし原作をまったく再現する気がないような振り切った役柄にもかかわらず、かえって服部の存在感を際立たせていた印象です。
キャラクターのビジュアルはもちろん大切ですが、見た目がそれほど似ていなくても成功を収めた実写化作品は多く存在します。そういった不思議な魅力を感じられるのも、実写化を楽しむひとつの醍醐味なのかもしれません。