連載が再開された『SHAMAN KING THE SUPER STAR』に続き、『シャーマンキング』の新章「SKY」の内容も明らかに……? 作者の武井宏之先生自ら、これからますます重要になるキーワードや、新章で描きたいことなどについて語っていただきました。
中泉八雲との戦いのなかで、道黽が披露した「ニュートランス」に、ガッコや葉羽は驚愕する。『SHAMAN KING THE SUPER STAR』#52より (C)武井宏之/講談社
【画像】ヤバい奴多すぎ! これが「ニュートランス」した者たちの姿です(6枚)
新要素「ニュートランス」に込められた重要テーマ
「SHAMAN KING」シリーズ原作者・武井宏之先生のインタビューをお送りしています。今回は後編として、最新作『SHAMAN KING THE SUPER STAR』に続く新章『SHAMAN KING YARD』(SKY)について、詳しくお聞きしました。
(取材・執筆:タシロハヤト/編集:マグミクス編集部。講談社編集担当のY田氏にも同席いただきました)
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――新章となる『SKY』では、歴代シャーマンキングが指名したシャーマンたちによる戦い「フラワー・オブ・メイズ」が描かれると以前からおっしゃっていました。2024
年8月24日から連載再開する『SUPER STAR』のネームが最終回まで完成した現状で、何かもう少し話せることはあるでしょうか?
武井宏之(以下敬称略) 「ニュートランス」かな。ニュートランスっていう新しい要素が出てきて、やっぱりそこに僕が伝えたいテーマが存在するんですね。これまでの世界って「強さ」っていうものをみんな外に求めてたんですよ。偉大な名前であるとか、強い武器であるとか、権威とかそういったものにみんな依存していたんじゃないか。
でも本当の強さとか本当の神というのを探っていったときに、「外じゃないよ」と。世界も今変わりつつあるじゃないですか、いろんな認識に基づいて。「外に頼っていた状態」から、これからは個人単位で「自分が強くなるんだ」っていうふうに移っていくんだと思うんです。そこに明快な言葉を与えていけたらと思ってます。
――それが『SUPER STAR』のなかで道黽(タオメン)が言っている「神は自分の中にある」「世界は自分が作り出している」と関わってくるわけですね。彼の認識はこれまでのところニュートランスの核心となる概念だと思いますから、それが『SKY』ではよりはっきりと描かれることになるんですね。
武井 そういうことです。
――そういったテーマがマンガやエンタメ作品として描かれるのはあまり例がないと思います。すごく楽しみですね。世の中を見渡すと、子供や若い世代が搾取されるということが現実に起こっているし、それに手を差し伸べる人も出始めてはいるけれども、まだまだ足りないのが現実だと思います。そういう世界を彼ら自身がどう乗り越えるのか? となったとき、確かに暴力とか権力とかそういうものではもう対抗できなくなっていて、別の何かで解決する力が必要なんじゃないかと思います。
武井 子供たちってかなり賢いですよ。これからの子供たちは僕らが何か言ったりやったりする前に、自分で気付いて新しい世界を作っていくんじゃないかという気がします。そこに僕は希望を持ってて。親の世代がテレビとか広告とか大きいものにのみこまれていたことに、最近になってやっと気付いてきた。そういうのを見た子供たちは、自分たちでなんとかしなきゃってなりますよ。
――昨年のインタビューで『SKY』は少年マンガらしいものを描きたい……と話されていて、先ほど(インタビュー前編参照)も、改めてそれをしっかりやりたいと仰っていましたが、それは子供たちへの期待が入っているからこそ、ということになりますか?
武井 あー、それはそうだけど、そこはちょっと難しくてですね……悩んでいます。
麻倉花を中心に、少年少女たちが苦闘を通じて「本当の強さ」に気づいていく展開は、ある意味「少年マンガ」らしい要素? 『SUPER STAR』#51より (C)武井宏之/講談社
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描くことは決まっているが、大きな悩みが……?
――悩んでいる、というのはどういったところでしょうか?
武井 このマンガを読む世代っていうのはだいたい今の30代、40代ぐらいじゃないですか。いくら次の世代に伝えたいと思ったところで、もう子供たちにはあんまり届かないんじゃないか……僕が始めたい「少年マンガ」っていうのも、実のところは昔の少年マンガ世代に向けた少年マンガになるんじゃないか? って思ったんですね。本当の子供たちに伝えたい。伝えたいが、このままだと伝えられないと。何らかの大きいきっかけとかがあればあるいは……なんだけど……というのが、『SKY』に対してまさに今リアルタイムで悩んでることです。
次の世代に直接伝えたいのか? 僕のマンガを読んでいた世代に答え合わせをしたり、これからの生き方を改めて確認してもらいたいのか? っていう。
――それはとてもよくわかる話です。私もゲームを作る「中の人」ですが、今の時代はエンタメが多様化して分散しているので、マンガとかゲームという単独の媒体で代替わりが起きづらく、新しい世代に届けることが難しいと感じることはあります。
武井 うん、それをどうやって伝えていこうかということがあって、その一部が『イベンチュア』だったり、まったく別の媒体とか活動だったりするのかな。別に絶望しているわけではなくて、どう届けるか、そもそも届ける必要があるのかで悩んでる、迷ってるということですね。
――同じマンガ媒体でも、別の作品で同じテーマを伝えるとか、もしくは提供のしかたを変えるとか、あるいはマンガとは違うもので伝えようとするとか……ということですね。そうなると「武井宏之」という名前で広げていくという方法もあるかもしれませんね。
武井 ああ、自分の名前にはそんなに期待してないです(笑)。子供たちは作家の名前はあんまり気にしなくて、いい作品かどうかなので。名前に対する縛り、縛られっていうのはもうだいぶなくなりました。それはここ最近あったいい解放でしたね。どうあるべきっていうのもなくなったし、わりと自由です。トシとっただけかも知れないけど(笑)
――(笑)ともあれ、『SKY』で目指す「少年マンガ」がどう着地するのか、答えが出るまでにはもう少しかかりそうですね。それでは最後に、『SKY』の開始時期……みたいなものは言えるんでしょうか? それって『SUPER STAR』がいつ終わるかというのと同じ話かもしれないので難しいでしょうか……?
武井 ああ、それはあの、『SUPER STAR』が終わったらいったん別のことをやります。『SUPER STAR』が終われば、『FLOWERS』も決着してスッキリするでしょ? そうしたら全力で『SKY』の連載準備をするために、まだ終わっていないものも全部描こうと思ってまして。『四駆郎』(『ハイパーダッシュ!四駆郎』)と『ユンボル』(『ユンボル -JUMBOR-』)もスッキリさせようと思ってます。
――なるほど! それは楽しみですね。しかし、『SUPER STAR』は最終廻まで一気に連載されていくし、それが終わっても他の作品をスッキリさせるし、それが済んだら『SKY』が待っているので、一段落してもあまり休めないかもしれませんね。『SUPER STAR』の連載再開はもちろん楽しみなのですが、どうかお身体に気を付けて頑張ってください! どうもありがとうございました。
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今回のインタビューでは、もちろん作品のあらすじなどに踏み込むわけにはいきませんでしたが、これから動き出す物語に武井先生が込める思いや悩みなどを包み隠さず語っていただきました。『SHAMAN KING THE SUPER STAR』最新話は、2024年8月24日(土)より、講談社マンガアプリ『マガポケ』で配信され、毎週更新されていきますので、ぜひご覧ください!