「7イニング制」「ドーム球場での開催」…酷暑対策まったなしの夏の甲子園。高野連はなぜ選手たちに意見を聞かないのか

高野連は球児に全国一斉アンケートを

早見 僕もまったく同じことを思っていました。辞退するチームが出てくるんじゃないかなと思ってたくらいなんで。僕はそのとき星稜に密着していたんですけど、素直に大喜びしていたんですよね。あれはびっくりしたな。

中村 甲子園の常連校は勝利至上主義に毒されているみたいな言われ方をすることもありますけど、そんなことぜんぜんないんだと思わされました。

早見 それくらい大きくて、懐の深い器なんでしょうね。甲子園は。

中村 ただ、アンケートをとるにあたって難しいのは、高校野球って本当にいろいろな高校があるじゃないですか。なにせ3500校近くあるわけですから。同じようでぜんぜん同じじゃない。私は30年以上前、千葉で野球をやっていたんですけど、当時はまだ出場校数が170校くらいあったので、全体の6割から7割くらいの高校は甲子園なんて行けるわけないと思っていたと思うんです。

早見 そう考えると、全校一斉アンケートも意味を成さないのかな。甲子園に近い上澄みの1、2割の高校と、それ以外の高校ではぜんぜん違う結果になる気もしますね。甲子園に出るために週7回練習している高校の「甲子園でやりたい」という1票と、週1回しかやってない高校の「甲子園じゃなくてもいい」という1票が同じだというのも何か釈然としないですよね。

中村 これだけいろいろな高校が集まっているところで誰もが納得するルールなんて不可能な気もしてしまいます。プロ野球みたいに12球団しかなくて、しかもほぼ同じレベルのチームが集まっていてもなかなかまとまらないわけですから。

早見 だから全校一斉アンケートをとったら、いろんな角度から検証してみればいいんじゃないですか。各都道府県のベスト8以上のチームと、それ以外のチームの意見を比べてみるとか。上から1000チームずつレベルを分けて、各層の意見を比較してみるとか。

中村 それ、見てみたいですね。

早見 どんな改革も、最初の一歩はそこですよ。とにかく当事者の声に、選手自身の声に耳をかたむける。それは絶対だと思います。

中村 今はものすごくピンときています。

撮影/下城英悟 

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アルプス席の母

早見 和真

2024/3/151,870円(税込)354ページISBN: 978-4093867139

まったく新しい高校野球小説が、開幕する。

秋山菜々子は、神奈川で看護師をしながら一人息子の航太郎を育てていた。湘南のシニアリーグで活躍する航太郎には関東一円からスカウトが来ていたが、選び取ったのはとある大阪の新興校だった。声のかからなかった甲子園常連校を倒すことを夢見て。息子とともに、菜々子もまた大阪に拠点を移すことを決意する。不慣れな土地での暮らし、厳しい父母会の掟、激痩せしていく息子。果たしてふたりの夢は叶うのか!?
補欠球児の青春を描いたデビュー作『ひゃくはち』から15年。主人公は選手から母親に変わっても、描かれるのは生きることの屈託と大いなる人生賛歌! かつて誰も読んだことのない著者渾身の高校野球小説が開幕する。