先日、幕を閉じたパリ・オリンピック。男子サッカー代表(U-23代表)はグループステージを全勝で勝ち上がるなど勢いを見せたが、準々決勝でスペインに敗れ、またもメダル獲得の夢を叶えることはできなかった。
そのピッチには大関友翔が川崎アカデミーで切磋琢磨してきた同期のCB高井幸大の姿があった。
「ポジションが違うので、難しいところもありますが、一緒にやってきて、なんかもう憧れなくちゃいけないぐらいの存在になっちゃいましたよね。それは冗談ですけど、事実として今のお互いの立場的なものがある。ただ、本当にいい刺激をもらっていますし、やっぱり負けてらんないっていう気持ちにさせてくれます」
もっとも2005年2月6日が誕生日で、現在19歳の大関友翔は、いわゆる“早生まれ”で、2028年のロス・オリンピックへの出場資格を有している。彼にとってはこちらが、本命のチャレンジになるのだろう。
昨年にはかつて長身FWとして鳴らした船越優蔵新監督の下、2025年のU-20ワールドカップを目指すU-18日本代表が発足し、大関は数度の活動で10番を託された。
「ロス(・オリンピック)より先にU-20ワールドカップがあるので、まず自分の目標はそっちですね。出場権を手にして、メンバーに入れるかが大切ですし、活躍して自分の力を示したい。なので、そこに向けて自チームでもやっていかなくちゃいけないという想いです」
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今年初めには森保ジャパンのトレーニングパートナーとしてアジアカップでの活動にも帯同。先輩たちの姿に大きな感銘も受けたのだろう。世代別であるが、日本代表として10番を背負う責任も感じているという。
「10番を付けさせてもらえる機会は増えていて、すごく誇らしいですし、評価をしていただいていると実感しています。ただ、その分、10番に相応しい活躍をしなくてはいけないという責任感も生まれていますし、満足することはないです。
(船越監督からは)もっとプレーの強度を上げてもらいたいという話もしてもらっていますし、もっとプレーの幅も広げていきたい。監督は常に求めてくれますし、それを実現していけば、次のステップに上がれるはずです。そのためにも、常に代表に入って、高い意識を持ち続けたいです」
今年6月にはリーグ戦の真っただ中で船越監督率いるU-19代表の10番としてモーリスレベロトーナメントに参加。クラブ事情により、大会中にチームメイトより先に帰国したが、代表と自チーム、二足の草鞋を履きながら戦う経験もしている。
「凄く充実した日々を送ることはできています。代表活動をして、帰ってきてすぐに週末のゲームというスケジュールは身体的にキツイ部分もありますが、サッカー選手としては幸せなことですよね。
ただ、先日、初めて時差ボケになったんです。それも一週間くらい。深夜に目が覚めてしまってあまり眠れた気がしなくて。でもこれも良い経験。去年までは試合に出られていなかったので、代表のゲームにフルパワーで臨めていましたが、今年は自チームでも代表でもフルパワー。そこでのコンディション作りを学ぶことができていますし、周りのスタッフの方にも助けてもらっています」
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一つひとつの質問に的確に答え、こちらの意図も汲んでくれる。
以前から10代とは思えないコミュニケーション能力、言語化能力の高さが際立ち、それも中村憲剛ゆずりと感じていたが、本当はそうでない一面もあるのだという。
「いや結構人見知りはするんですよ。ある程度の良い関係性を築くまでは固いというか。先輩の人に対してはグイグイいける面もあるんですが、同い年とか後輩には何を喋れば良いか分からなくなる時もあって。世間話をするのは苦手かもしれないですね」
いやいや、と突っ込みたくなるが、本人の自己分析はそうらしい。ただ、川崎時代には7つ離れたFW小林悠とのこんなエピソードもあった。
「シーズン途中からは悠さんとは月一くらいで、食事に行っていました。実は悠さんとは一緒に脱毛に行っていて、そのまま食事に連れて行ってもらったりしていたんです。その後は『寮の他の選手も誘って良いよ』と言ってもらえたので、行きは悠さんに乗せてもらい、帰りは寮の選手の車で帰ってくるという形でしたね。悠さんのプライベートな話や熱いサッカーの話を聞かせてもらい、勉強になることばかりでした。それと川崎界隈では有名な悠さんの“ポンコツ話”も大好きでした」
福島でもそんな人たらしぶりは発揮していそうだが、初のひとり暮らしで、料理にも挑戦しているという。「両親や寮母さんのありがたみを感じる」日々を過ごしているとも話すが、最近はクラブがお世話になっている旅館(一柳閣)で食事をご馳走になることもあるのだとか。
ただひとつ問題が。食べるのが異常に遅く、筋肉も付きにくい体質だというのだ。
「食事は人の3倍ぐらい時間がかかるんです。夕食だったら1時間半ぐらいかかりますかね。これはみんなに聞かれるんですけど、喉が細いんだと思うんです。だから一気に食べると詰まっちゃうので、ちょっとずつ。
それに太りにくく、量はみんなと同じだと体重が増えないので、プラスアルファして食べています。だから今は食べるか、寝るか、サッカーをするかのほぼ三択ですね。体重は今、64キロくらいですが、70キロは超えたいと思っています」
スラっとした体形に、相手に力負けしない筋肉の鎧も付けていく。それが今後のテーマでもあり、改めて目指す選手像も口にする。
「簡単に言えば点が取れるミッドフィルダーになっていきたいです。そして攻撃で違いを作れる選手になりたい。今の時代、走れて守備もできるのは大前提で、その中でやっぱり攻撃面を評価してもらえる選手を目指したいですね。
日本代表(A代表)にもいつか入りたいですし、今はアンダーの代表で、各国の選手とプレーさせてもらい、基準やスケールが違うと実感しています。そんな彼らと日常から対戦するため、レベルアップするため、いつかは海外挑戦もしなくちゃいけないと思いますが、自分はまだそう言えるほどの活躍はできていないと自覚しています。だからこそ今はまず福島で結果を残し、J2昇格に貢献するのが使命だと思っています」
そして寺田監督の下、様々な攻撃のアイデアを示しながら相手を崩すサッカーに改めて楽さを覚えていると笑顔も見せる。
「4-3-3で、みんな流動性を持ってプレーしていて、恐らくJ3のなかでも、なかなかないスタイルなのではないでしょうか。自分の特長にも合ってると感じています。
(寺田)周平さん(監督)の下、チーム全体で目指すべき方向性も揃っていますし、しっかり積み上げていけているので毎日が楽しい。前に進んでいるスピード感もあります。なかなか勝てない時期もありましたが、やっているサッカーが間違っているとは思わないですし、自信を持って挑めています。
自分自身もクロスから得点も取れていますし、2列目からの飛び出しもより意識できるようになっています。インサイド(ハーフ)からフォワード追い越すランニングは有効なので、さらに増やしたいですね」
練習を行なっている十六沼公園天然芝グラウンドにはクラブハウスがなく、シャワーも簡易的なものだが、スタジアムも含めて素晴らしい芝生が広がり、サッカーに集中できる環境が揃っている。そしてクラブとして前に進もうとする活気に満ちている。
8月31日(土)のホーム北九州戦(18時キックオフ)では、5000人を集客しようとの盛り上がりも見せている。大きな伸びシロを感じさせるクラブと新進気鋭のMF。その相乗効果は要注目である。
■プロフィール
大関友翔 おおぜき・ゆうと/2005年2月6日、神奈川県生まれ。真福寺FC―FC多摩ジュニアーFC多摩Jrユース―川崎U-18―川崎―福島。新時代の司令塔。トップ昇格した川崎ではなかなか出番を掴めなかったが、今季レンタルで加わった福島では中盤の欠かせない存在として活躍を続ける。
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
■8月31日はスタジアムへ!
8月31日(土) 18:00
北九州戦(とうほう・みんなのスタジアム)
は「集まれ5,000人!ユナまつり」と題し
様々なイベント(花火やベースボールシャツをプレゼントなど)を企画中!
詳細は下記へ
https://fufc.jp/lp/2024/0831/
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