パリ五輪で大岩剛監督が率いるU-23日本代表は、準々決勝でスペインに敗れ、8強敗退に終わった。56年ぶりのメダル獲得は果たせなかったが、多くの選手が可能性を示したのは記憶に新しい。
次は2028年のロス五輪。チームはまだ立ち上がっておらず、監督も決まっていない。そうした状況下で、ロス世代の最上級生組となるU-19日本代表は、来年5月のU-20ワールドカップに向けて準備を進めている段階だ。
今年9月にはU-20アジアカップ予選(U-20ワールドカップの1次予選を兼ねる)が控えており、まずは船越優蔵監督のもとで世界大会を目ざして競争をしていくことになる。そのグループに割って入るべく、一学年下のU-18日本代表の面々が今夏のSBSカップ国際ユースサッカーに参戦。静岡の地でアピールしている。
今回のU-18代表は、すでにU-19代表に招集されている佐藤龍之介(FC東京)や中島洋太朗(広島)といったJデビューを飾っている高校3年生組は不在。多くの選手は初選出やU-19代表のラージグループと見なされ、U-19代表と並行してU-18代表を率いる船越監督も「目標はSBSカップで優勝すること。あとはU-19代表への個人昇格。この2本柱を彼らに提示している」とし、チャレンジャーとしてアグレッシブなプレーが求められているのは明確だった。
誰が生き残っていくのか――。22日のU-18韓国代表戦、23日の静岡ユース(18歳以下の静岡県選抜)戦では、昨秋のU-17ワールドカップに出場したCB土屋櫂大や右SB柴田翔太郎(ともに川崎U-18/3年)が可能性を示したが、初代表組のふたりもポテンシャルを存分に発揮した。
ひとり目がMF嶋本悠大(大津/3年)だ。180センチのサイズと確かな技術を持つプレーヤーで、大津ではトップ下を主戦場とする。その一方でサイドハーフやボランチでも機能する汎用性を持っており、スコアレスドローとなったU-18韓国代表戦では4-4-2の左サイドハーフで先発し、後半途中からは3-4-2-1のダブルボランチの一角を担った。
サイドハーフでは内側にポジションを取りながら、タイミングを見て左サイドで突破を図り、キレのあるドリブルや正確なクロスでチャンスを演出。ボランチでは球際で厳しく戦いながら、多くの局面に顔を出してゲームをコントロールした。
「(左サイドでは)しっかり頭を使って、相手を見ながらポジションを取ることは意識していた」とし、ボランチでは「守備で貢献しながら、攻撃ではボールに触ってリズムを作る」ことを心掛けてアピールした。
0-0でPK勝ちした23日の静岡ユース戦では、スタートから中盤の底に入り、長短織り交ぜたパスで攻撃陣をリードした。「決めきれなかったことが悔しい」と決定力に課題を残したものの、複数のポジションで持ち味を発揮した点は次につながるはずだ。
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ふたり目はFW安野匠(帝京長岡/3年)だ。U-18高円宮杯プレミアリーグWESTでは4位タイの7ゴールを奪っており、今夏のインターハイでも得点ランキングで2位となる5得点をマーク。抜群の決定力が光るストライカーで、相手の背後に抜け出す動きも目をひく。
また、守備面での貢献度も高く、相手DFに外されても何度でも食らいつく。そうしたプレースタイルは代表でも発揮され、途中出場となったU-18韓国代表戦では2トップの一角でハードワークを続け、続く静岡ユース戦では先発で起用されて印象的なプレーを見せた。
55分にはオフサイドでゴールが取り消されたものの、柴田のクロスにニアで合わせて惜しいシーンを生み出している。「とにかくチャレンジする。自分の良さを全面に出してやろう」というメンタリティからは“ギラギラ感”を漂わせており、「とにかく結果を残したい」という言葉からも代表の生き残りに懸ける想いが伝わってきた。
U-19代表への個人昇格は簡単ではないが、SBSカップで爪痕を残せれば、道は切り開ける。残された試合はあとひとつ。25日に行なわれるU-18アルゼンチン代表との一戦は80分で勝利を掴めば、優勝となるシチュエーション。プレッシャーはあるが、U-19代表に呼びたいと思わせるような選手の台頭に期待したい。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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