現代日本の「非婚」の増加は、日本全体が貧しくなっていることが原因か…「一般には子だくさんが嫌われていた」江戸時代化する日本の家族形態

子だくさんを嫌った江戸後期の庶民

時代を遡れば、平安末期に編まれた『今昔物語集』の伝える有名な「わらしべ長者」も、男の結婚難や生活苦を背景に生まれた物語です。

皆婚社会が実現する16・17世紀になるまで、結婚は特権階級にゆるされるものであった、だから御伽草子には結婚への憧れが描かれていた、と書きましたが、実は、近世後期から幕末にかけては人口が停滞し、「1世帯当たりの平均子ども数が1・2人前後という数値は近世後期の村落よりは少し多い」という少子化ぶりでした。

しかも当時、「子どもの数を1人から2人に限定したいという文言に出会うことは珍しくなく、一般には子沢山が嫌われていた」(太田素子『子宝と子返し 近世農村の家族生活と子育て』)といいます。

結婚が庶民にもできるものになってくると、特権階級の人々が綴った文学と同じような、「少子」への志向が現れてくるのです。

理由については太田氏が分析していますが、時代ごと様々な理由や事情によって、日本人が少子を志向する一面があるのは興味深いものがあります。

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現代日本は下流化しているのか、家族の形態や概念の変化か

翻って今はどうでしょう。低所得の男性の結婚率が低いことはかねていわれてきたことですが、近年、社会全体に単身世帯が激増していることが明らかになっています。

令和2年度(2020)の国勢調査によると、一般世帯のうち、世帯人員が1人の単身世帯(単独世帯)は38.1%、「夫婦と子供から成る世帯」は25.1%、「夫婦のみの世帯」は20.1%、「ひとり親と子供から成る世帯」は9.0% でした。2015年と比べると、「単独世帯」は14. 8%も増えて、一般世帯に占める割合は34.6% から38.1% に上昇しています。

先に紹介した鎌倉中期の下人の家族形態に似ていませんか?

下人には3世代同居は一例もなく、夫婦揃って子もいる家庭は全体の22.3%、最多はひとりみ(単独)で、全体の約42.6%でした。母子家庭・父子家庭といった、ひとり親と子の世帯も多かったものです。現代日本は全体に下流化しているのか、それとも家族の形態や概念が変わってきているのか。

今のところ、その両方の要素があるという気がしています。