人気マンガのなかには、アニメ、実写とさまざまなメディアミックスを果たした作品も少なくありません。実写はキャラクターや世界観の再現度が不十分である可能性も高く、不安視する声も見られますが、アニメ、実写両方で高い評価を得ている作品もありました。



映画『3月のライオン』前編 ポスタービジュアル (C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

【画像】え…っ? 神木君すごッ!こちらが再現度が分かる『3月のライオン』原作と実写の比較です(3枚)

「実写はイマイチ」のイメージを大きく覆す!

 人気マンガの実写化が発表されると、独特の世界観やキャラクターデザインの再現について、不安視する声がX(旧:Twitter)のトレンドに入ることも珍しくありません。

 一方で人気マンガのアニメ化は、「そろそろしてもいいんじゃないかと思ってた」「キャストとか主題歌も楽しみ」とポジティブな反応も多く見られます。

 そんなファンの声が正反対になることが多い実写化、アニメ化ですが、意外にも両方の作品が好評を博する結果となったマンガもありました。

『3月のライオン』

「るろうに剣心」シリーズの大友啓史さんが監督を務め、『バクマン。』や『ホリック xxxHOLiC』など実写化作品に数多く出演してきた神木隆之介さん主演で実写映画化した『3月のライオン』(原作:羽海野チカ)は、2017年に前後編が公開されました。

 当初は実写化を不安視する声も多かったものの、神木さん演じる主人公「桐山零」のビジュアルが公開された後は「まさかここまで再現されるとは」「これなら期待したい」と、ポジティブな反応が増加します。

 幼い頃に家族を交通事故で亡くし、孤独を抱えながら将棋の道に生きる決意をした零が、和菓子屋を営む川本家の三姉妹との交流を通して自分の居場所を見出していくという物語です。神木さんは見事に零を演じきり、原作ファンの「原作のイメージ通りで良かった」と太鼓判を押す声も多々ありました。

 また、本作は2016年から2018年にかけてNHK総合にてアニメも放送され、『魔法少女まどか☆マギカ』や『<物語>シリーズ』で知られる制作会社シャフトによる美麗な作画や、キャラクターの心象風景が大きな話題となりました。

 特に物語開始当初は荒々しく、暗いトーンで表現されていた零の心情が、人との出会いによって徐々に豊かになっていくにつれて温かみのあるトーンになる過程が丁寧に表現されており、「これはアニメならではの良さ」「原作も読んでたけどもっと作品が好きになった」という意見も多く出ています。

『銀魂』

 やりたい放題なギャグかと思いきや、時折見せるシリアス展開とのギャップも魅力のひとつであるSF時代劇マンガ『銀魂』も、アニメと実写がいずれも人気の作品です。

 2017年に1作目、2018年に2作目『銀魂2 掟は破るためにこそある』が公開された『銀魂』の実写映画は、小栗旬さんや橋本環奈さん、菅田将暉さんをはじめとする豪華キャストによるキャラクターの驚きの再現度が話題を呼び、「実写化どうなるかと思ったけどこれは観るしかない」と実写化に批判的だった原作ファンも思わず納得していました。さらに、意外にも2作目ではカーチェイスや殺陣など本格的なアクションが増え、「大迫力で銀さんの活躍が見られるとは思わなかった」と驚きつつ喜ぶ声も少なくありません。

 原作者の空知英秋先生は、実写化2作目の公開時に「爆死確実と言われた超豪華俳優無駄遣いB級コスプレ映画」と半ばネタにするようなコメントを出していましたが、その「コスプレ映画」や「B級映画」というイメージが『銀魂』に合っていたとも考えられます。

『銀魂』はアニメも2006年から2018年まで4期にわたって放送されたほか、3本の劇場版やOVAによって原作のほぼ全てのエピソードがアニメ化されています。パロディや悪ノリが激しいあまり、BPOへ「放送局はいったい何を考えているのか」と苦情が出たことさえありましたが、「それでこそ銀魂」「苦情が入るところまでがネタ」とある意味でファンも慣れてしまっている節があるようです。

『ゴールデンカムイ』

 2014年から2022年にかけて「週刊ヤングジャンプ」(集英社)にて連載されていたマンガ『ゴールデンカムイ』は、完結間近の2022年4月に実写化が発表された直後、「絶対にやめてほしい」といった反対意見が続出し、Xのトレンドが関連ワードで埋まるほどの事態となりました。それは、ファンの原作愛ゆえだったともいえます。

 しかし、キャストとキャラクタービジュアルが発表されると再現度が話題を呼び、さらに原作者である野田サトル先生の「実際に作品を観てくだされば原作ファンの方たちも実写を愛せるはずだと信じてます。」といったコメントも出たため、「野田先生がそう言うなら信じたい」「まずは観てみないことには」といった、好意的な意見も少しずつ見られるようになります。

 公開後は忠実なストーリに―本格的なアクションシーン、個性的なキャラクターたちの細かい描写も評価され、「実写は実写の良さが合って最高」「批判してた人も絶対満足できるから観てほしい」など高評価を集めました。2024年秋にはWOWOWにて映画版の続編となるドラマの放送、配信が決定しており、「観るために契約を検討している」「続編のキャストも本気」と期待の声が寄せられています。

 なお、『ゴールデンカムイ』は2018年よりアニメも放送されており、豪華声優による全力のギャグパートやシリアスなシーンのギャップも合わさって高評価を得ています。次々と登場する変態キャラやクセが強過ぎるキャラに、「原作がすでに面白いのに声がついたアニメはもっと面白い」と、声優の演技でさらに魅力が加わったことも人気を集めています。また、TV放送は無理だったものの、「モンスター編」「支遁動物記編」などの過激エピソードもOADでアニメ化されており、実写版ではどのように再現されるのか、注目が集まります。