初代『超時空要塞マクロス』に登場したリン・カイフンは異常なまでの反戦主義者であり、命がけで戦う軍人たちから反感を買っているにも関わらず、ヒロインであるリン・ミンメイと結ばれるというありえない展開で、ヘイトを集めまくりました。彼が周囲から嫌われた行動とはどのようなものだったのでしょうか?
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異常なまでの反戦主義者リン・カイフンの謎
TVアニメ『超時空要塞マクロス』15話「チャイナ・タウン」で初めて登場した「リン・カイフン」を初めて見た方は「は? なんなのコイツ?」と腹を立てたのではないでしょうか。
「ゼントラーディ軍」の攻撃を避けるため、民間人を巻き込んだ空間転移(フォールド)を行なって冥王星近辺へと移動してしまった戦艦「マクロス」は、苦難に満ちた1年の航海の末、ようやく地球への帰還を果たしました。
主人公の「一条輝(いちじょう ひかる)」と「リン・ミンメイ」は、ふたりでミンメイの故郷である横浜へと向かいました。中華料理店を経営するミンメイの両親は、死んだと思っていた娘が帰ってきたことを喜びますが、アイドル活動については大反対。「いずれは婿をとってこの店を……」と言い出した両親に、アイドルとしてのプライドを傷つけられたミンメイが反発し、揉め始めたところに現れたのが従兄のカイフンでした。
ミンメイとカイフンは再会を喜びます。輝に対してもカイフンは最初、気さくな態度でしたが、輝が軍人だと知ると「軍人が民間人を助けるのは当然ですが、ま、感謝しておきましょう」と冷たく言い放つなど態度を豹変させました。
ミンメイによると、とにかくカイフンは軍が嫌いで、当時マクロスがあった南アタリア島への移住を決めた両親に反発し、世界を放浪していたとのこと。
しかも次の16話「カンフー・ダンディ」では「早瀬未沙」やブリッジの三人娘たち軍人に対し「戦いは何も生み出しません。戦いが生み出すのは破壊だけです」と言い放つなど、1年もの間、生き延びるために戦い抜いた人間に対してあまりにも失礼な言葉を当然のように言ってのけています。いったい、何のためにこのキャラクターを出したのか、疑問に思うほどです。
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』では「無害」な人物に改変された (C)1984 BIGWEST
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劇場版ではキャラ改変がされた
その後もカイフンは、ミンメイとともに映画『小白竜』の主演を務めるなど、どんどん親密になっていきます。しかもそれだけではなく、美沙からは「初恋の人に似ている」と密かに想いを寄せられるなど、輝と言うより『マクロス』視聴者のストレス源になっていきます。せめてカイフンが「なぜ軍を嫌っているのか」納得できる理由さえ分かればよかったのですが、単に輝たちの命がけの戦いを言葉だけで否定して、ヒロインをかっさらう役回りでは嫌われるのも当然です。
やがてカイフンはミンメイと結ばれ、婚約し、マネージャーを務めるようになります。「ボドル・ザー艦隊」との決戦後は、復興途上の地球でミンメイとともに巡業を行ないますが、市民を扇動して軍にけしかけ、自分たちはさっさと立ち去るなどのヘイトが溜まる行動を繰り返していました。
人口の99%を失った地球上では巡業もうまくいかず、カイフンは酒浸りになり、ミンメイとも仲たがいし、最終的には破局してしまいます。それでも最後に「いつの日か、優しい歌をまた聴かせてくれ。身体だけは大切にな」と言い残しており、ミンメイの歌を愛していたことだけは確実です。その後、彼がどうなったのかは定かではありません。
劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』ではミンメイの「実兄」としてマネージャーやプロデューサーを務める常識人へと設定が変更されています。軍が登場する作品に反戦主義者を登場させると話が混乱する上に、視聴者にとっては不愉快な場面が増えるため、良い改変だったと思えます。
なお、作中ではミンメイたちとともにゼントラーディに捕らえられた際に、キスをして彼らを動揺させるなど、おいしい場面はきちんとかっさらっています。ボドル基幹艦隊との最終決戦時にもミンメイの歌を敵味方に中継する重要な役割を担っており、TV版でのハチャメチャな扱いと最後を考えると、かなり株を上げたキャラクターと言えるのかもしれません。