「貯金ゼロ、収入ゼロでプロポーズしたっていいじゃない」未婚化が進む日本に足りない、オスの「厚かましさ」【和田秀樹×池田清彦】

「結婚できない」の言い訳とは

池田 そこにはお金の問題もあるね。とくに女性の場合、こんな亭主と一緒にいたくないと思っても、離婚すると食べるに困ることも少なくないでしょう。だから、こんな男の介護など心底うんざりだと思いながらも、新たな一歩を踏み出せなかったりする。これは気の毒だよ。

和田 最近はそういう女性でも離婚しやすくなっていて、年金が分割できるようになったことが、熟年離婚が増えた決定的な理由です。60代の女性が働ける場もかつてに比べて増え、人手不足が深刻な介護職では外国人でも高齢者でも現場で働き、フルタイムであれば年収300万~400万円くらいにはなります。加えて年金もあるわけですから、新生活を始めるのはけっして難しいことではない。もちろん、勇気のいることですが。

池田 覚悟さえ決めれば一人でもどうにかやっていける世の中ではあるから、嫌いなやつのメイドみたいになってストレスを抱え込む必要はないですよね。

和田 それと、「男が女を食わさなきゃいけない」という古い価値観をいまだに背負っている人が多いですね。今、男性の生涯未婚率は約28パーセントといわれていて、アンケート調査で真っ先に挙げられるのは経済的理由。要するに、金がないから結婚できないと考えている男がたくさんいるということです。でも、先ほどの話ではないですが、貯金ゼロに収入ゼロでも惚れた相手と結婚する人もいる。「金がない」を「結婚できない」の言い訳にしているような気がしてならないのです。

池田 「男が女を食わさなきゃいけない」は、結婚相手を条件で選ぶことを恥ずかしげもなく肯定する価値観なんです。日本の若い男たちは「女を養う」という条件をクリアできないという自信喪失もあいまって、どんどん元気がなくなっているのかもな。

和田 日本衰退の原因の一つがここにあると私は思います。「どうせ俺には結婚なんて無理だ」「自分は条件を満たしていない」と自らを卑下して一人で納得したつもりでいる。謙虚といえば聞こえはいいですが、「身の丈に合わせて分相応に生きる」というある種の諦念が過剰なまでに蔓延っている。「金も仕事もないけど君と結婚したい」と情熱だけで突っ走るような男がものすごく減っている気がします。いいじゃないですか、分不相応でも。

池田 金もないのにプロポーズなんて、若い頃の自分がいかに厚かましいやつだったか、今さらながらよくわかった(笑)。

和田 今の日本の男に足りないのはまさしくそれです、身の丈に合わなくても自分はこれがやりたいんだ、と言い切れる厚かましさ。日本が元気になるためには、「厚かましい男」がもっともっと増えるべきなんです。

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『オスの本懐』(新潮社)

和田秀樹 池田清彦

2024年8月19日946円(税込)192ページISBN: 978-4106110559

ぼーっと生きてると、「去勢」されてしまう!

近頃、ニッポンの男性は元気がない。

コンプラにポリコレ、健康常識に老後設計……時代の変化と社会の要請に揉まれ、
オスとして大切な何かを失いつつあるらしい。

「高齢になればなるほど、性ホルモンは若々しさや元気の秘訣になる」(和田)、
「多くの凡人は色気と食い気が満たされていなければ、楽しく生きられない」(池田)。

オスがオスらしく生きるためにどうあるべきか、医師と生物学者が本音で語り合う!

〇若いオスのヘンな行動の意義
〇老いたら「心のエロ度」を全開に
〇我慢がオスの生命力を奪う
〇メスを敵に回してはいけない
〇モテる男はズラし上手
〇オスの行動と精子の動きはリンクしている
〇不倫は生物学的には正しい行動
〇日本の「男女平等」にはバグがある
〇「置かれた場所」でなんて咲けない