HD-2D版『ドラクエ3』には、「とくぎ」や「マップ画面」など、新たな要素が加わります。そのため、プレイ体験も大きく変化することでしょう。こうした躍進には、期待と不安が付きまといます。
ファミコン版を彷彿とさせるHD-2D版『ドラクエ3』のキービジュアル。その魅力を受け継ぐ一方で、新たに加わる要素も多い。 (C)ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX
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新要素でHD-2D版『ドラクエ3』はどう変わる?
ファミコンを代表するRPGのひとつ『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』は、当時ブームを巻き起こすほど話題となり、時代を経ても語り継がれる名作として名を馳せています。
この名作をフルリメイクし、現行機向けに蘇らせるHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が2024年11月14日に発売され、徐々に明らかになっていくゲーム内容に対し、多くのファンが期待をいっそう高めています。
しかし期待が高まるほど、不安をかき立てる想像も湧き上がってくるもの。HD-2D版『ドラクエ3』の新要素はいずれも興味深いものばかりですが、一方でそこから連想される不安もあります。
「とくぎ」の導入で、戦闘や編成に影響を及ぼす可能性
HD-2D版『ドラクエ3』では、戦闘中に使える「とくぎ」が新たに加わりました。これは、もちろんファミコン版にはなかった新要素です。
スーパーファミコン以降のリメイク版『ドラクエ3』には、「とくぎ」と呼ばれる能力が追加されましたが、こちらはフィールド上で使用できるものだけです。「くちぶえ」や「しのびあし」といった特技が使えたものの、戦闘で使える「とくぎ」はこれまでの『ドラクエ3』にはありませんでした。
そのため、今回のHD-2D版で初めて『ドラクエ3』に戦闘中の「とくぎ」が加わる形となります。発表済みの情報では、「しっぷう突き」「もろは斬り」「きゅうしょ突き」「うけながし」「かばう」といった特技が確認できます。
ナンバリングの後期では、「とくぎ」は定番といえるほどおなじみの要素になっています。しかし、歴代の『ドラクエ3』にはなかった新しいファクターなのも確かです。
「とくぎ」が導入されるとなれば、当然「とくぎ」を前提としたバランス調整が行われるはず。逆をいえば、「とくぎ」を使いこなさずに勝つのは少々難しくなると思われます。
近年の「ドラクエ」作品にも慣れ親しんでいる人は、「とくぎ」も難なく使いこなせることでしょう。一方、ファミコン版やスーパーファミコン版以来という往年のファンにとっては、「とくぎ」が前提となる新たなゲームバランスに苦戦するかもしれません。
『ドラクエ3』におけるバトルは、ゲーム進行のみならず、爽快感にも大きく関わる部分です。そのため「とくぎ」を採用する影響で難易度が上がるかも、と不安視する人がいてもおかしくありません。
特に『ドラクエ3』は、自由なパーティ編成も魅力のひとつ。自由度の高いゲーム性とバトルの醍醐味を、「とくぎ」込みでどう成立させるのか。大きな関心が集まることでしょう。
なお、HD-2D版『ドラクエ3』では、「楽ちんプレイ」「バッチリ冒険」「いばらの道だぜ」という3段階の難易度選択が可能です。仮に「とくぎ」を使いこなせず、攻略に手こずったとしても、難易度を変更できるのでご安心下さい。
HD-2D版『ドラクエ3』では、世界の広がりも感じられる。だからこそ、湧き上がってくる不安もある。(C)ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SPIKE CHUNSOFT/SQUARE ENIX
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マップ画面でストレスフリー! でも冒険の醍醐味が薄れるかも?
『ドラクエ3』も含め、RPGの多くは「冒険」へと挑みます。そのため、プレイヤーにとっては未知の世界に足を踏み入れるのも同然です。見知らぬ場所なら、迷子になる可能性も十分あります。
しかし、HD-2D版『ドラクエ3』で道に迷う恐れは、さほどありません。本作ではミニマップが右上に表示されるため、自分たちの周囲に何があるのか確認しやすくなっています。また、現在地一帯をまとめて把握できる「マップ画面」もあり、付近の把握も容易です。
道に迷い、その挙句目的にたどり着けないのは、誰にとってもストレスフルな状況といえます。こうした問題も、HD-2D版『ドラクエ3』のミニマップやマップ画面のおかげで、華麗に回避できそうです。ミニマップとマップ画面はダンジョン内でも有効なので、本当に頼もしい存在です。
こうした機能が便利なのは間違いありません。しかし、マップの影響で見通しが良くなってしまうと、未知だったはずの世界があらわとなるため、冒険の醍醐味が損なわれる恐れもあります。
ただし、マップ画面で全てが明らかになるわけではありません。例えば、ダンジョン内の宝箱などはマップ画面に表示されないため、どこに何があるのか実際に移動して確かめる必要があると思われます。その意味では、未知の場所を探索する楽しさは健在といえます。
頭身が上がり、世界は広がり、移動距離も長くなるかも……
HD-2D版では、過去の『ドラクエ3』作品と比べ、キャラクターの等身が少し上がりました。丁寧に描かれた背景の効果も加わり、HD-2Dの魅力を存分に生かした臨場感を醸し出しています。
雰囲気もよく没入度も後押しする素晴らしいグラフィックは、一見の価値アリ。この世界の冒険がどんな面白さを提供してくれるのかと、期待を高めている人も多いことでしょう。
ただし頭身が上がった影響か、世界全体も広がっている印象を受けます。先行プレイの動画を見ても、城下町や村の敷地がこれまでの『ドラクエ3』作品と比べて明らかに広くなっているのが分かります。
頭身に合わせて広くなったとすれば、世界をよりリアルに感じられる利点もあるものの、移動する距離が単純に伸びた可能性があります。移動する距離の長さは、RPGにおいてストレスを感じやすい部分のひとつなので、ここの要素も気になります。
ダンジョンやフィールドではモンスターと遭遇しやすくなりますし、街中にある施設への行き来は、ひんぱんになるほどそこまでの距離が気になるものです。世界が広くなるのは嬉しいものの、移動に関する不安が一切ないとまではいえません。
しかし、「ルーラ」や「キメラのつばさ」でフィールド上の移動は省略可能ですし、HD-2D版『ドラクエ3』では移動速度もかなり上がっているので、前述の不安が想像だけに留まる可能性は十分あります。
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何かを得れば、何かを失うもの。一般的によく言われているこの言葉が、楽しみにしているゲームに当てはまるかもと考えると、胸のなかに不安が広がります。また、バランス調整に「万人が最適と思う答え」がないのも、厄介なところです。
例えば、HD-2D版『ドラクエ3』には「どうぐぶくろ」と「そうびぶくろ」が実装され、アイテム管理が行いやすくなると思われます。しかし、アイテムの個数や種類を持ちやすくなることで「やりくりの楽しさがなくなりそう」と不安がる人もおり、「利便性が高い=正解」とは言い切れないのが現実です。
ただし、こうした不安が湧き上がるのは、HD-2D版『ドラクエ3』に向ける期待が高いからこそ。期待していない作品には関心が湧かず、自ずと不安も生まれません。不安は期待の裏返し、楽しみだからこそ悪い想像も浮かんでしまうもの。こうした不安を吹き飛ばしてくれるような、パワフルで魅力的なHD-2D版『ドラクエ3』の登場を切に願うばかりです。