家族が死んでしまう悪夢は何度も繰り返され、男性の精神を蝕みました。夢から覚めた彼は、家族と何気ない日常を過ごします。ところが、幸せなはずの日常を信じられなくなっていて……。作者の的野アンジさんにお話を聞きました。



妻と息子が死んでしまう夢を見た男性は、今が夢かどうか確かめようとし……?(的野アンジさん提供)

【マンガ本編】家族が殺される悪夢が繰り返す…「今は夢?現実?」家族とのやり取りに違和感を覚え「ゾッとした」

夢なら醒めてほしくない…?

 主人公の男性は、家族が惨殺される悪夢を何度も見ていました。その日の朝も、悪夢から目が覚めてリビングに向かうと、いつもどおりの様子の家族が彼を迎えてくれました。悪夢で起きたような残酷な展開にもならず、何気ない日常に安心感を抱きます。ところが、何度も悪夢を見続けた男性は「今」の幸せが信じられなくて……?

 的野アンジさん(@matonotoma)が「何度やり直しても、家族が死んでしまう話」としてX(旧:Twitter)に掲載した『僕が死ぬだけの百物語』が話題です。いいね数は4.8万を超えており、読者からは「このループはきつい……」「繰り返される悲劇と主人公の葛藤が印象的」「恐怖と絶望感がすごい」などの声があがっています。

 的野アンジさんは漫画家として活動しており、「サンデーうぇぶり」にて連載中のオムニバスホラーマンガ『僕が死ぬだけの百物語』全8巻(小学館)が発売中です。今回は第7巻に収録されているお話の紹介です。

 作者の的野アンジさんにお話を聞きました。

ーーストーリーや世界観にとても引き込まれました。今作『何度やり直しても、家族が死んでしまう話』を描いた理由や、生まれたきっかけを教えて下さい。

 子供のときに「起きても起きてもずっと夢の中」という体験をして、それがとても怖く印象に残っていたのでそれをテーマに描きました。



令和最恐のホラーミステリ『僕が死ぬだけの百物語』第8巻 著:的野アンジ(小学館)

ーー今作を描くうえで工夫したポイント、お気に入りのシーンやセリフなどがあれば教えて下さい。

 最終的に何が夢なのかハッキリしてしまうのは面白くないので、あえてわかりにくくしています。お話の最後に父親の決意を、小さな行動によって表せたので良かったです。

ーー父親のキャラメイクに読者の方から多くの反響がありました。制作時にこだわった点や、キャラクターの細かい設定などがあれば教えていただきたいです。

 短いお話なので、読み返したときに再び発見があるお話にしたいと思い、部屋の設計や服装などにはこだわりました。夢と現実、正反対の結末を描くうえで、キャラクター自身はどちらもそのものでいられるよう、髪の分け目など対象にしています。