嘘がバレる人は「聞いてないことを喋る」。元刑事が語る「嘘の見抜き方」

「この人は果たして本当のことを話しているのか」を知りたいとき、「ウソのサイン」をヒントにすれば真実に辿り着きやすくなる──そう語るのは、千葉県警で警部として詐欺、横領、贈収賄事件などを約20年担当した森透匡さんです。

現在は「ウソや人間心理の見抜き方」をテーマに、大手企業や経営者団体へ講演・企業研修を行う森さん。採用面接から契約、社内で起きた不正やハラスメントの原因究明など、あらゆるビジネスシーンにおいて、森さんのノウハウは活用されています。

人がウソをついているかを知りたいとき、どういったコミュニケーションを取れば良いのでしょうか。森さんに「ウソの見抜き方」のコツを伝授いただきました。

「ウソのサイン」は真相究明の近道

──まず「ウソのサイン」とはどういったものを指すのでしょうか?

人が動揺したり、焦ったりしたときに表れる行動や発言のことです。警察官が容疑者の取り調べをするときは、質問を投げかけることで「ウソのサイン」が出るかどうかを見極め、怪しいと感じたところを掘り下げるんです。

──なるほど。どういった行動が「ウソのサイン」に該当するんですか?

聞いていないようなこともよく喋るようになる、というのはよくあるケースです。

たとえばパートナーが夜遅く帰ってきて、あなたが「どこで飲んできたの?」と質問したとします。普段なら「新宿」とだけ返ってくるでしょう。

でも、続けざまに「同僚に二次会まで連れてかれちゃって」や「女の子はいなかったんだけど」と多弁になったら、相手は隠しごとをしている可能性があります。

──なぜそれが「ウソのサイン」になるのでしょうか?

必要以上のことを返すのは、「聞かれる前に全部答えてしまおう」という心理の裏返し。当人にとっては、ボロが出る前にその話題を終えたい一心なんですよね。その焦りが、自然と会話の中に表れた結果、ベラベラと余計なことまで話してしまう、と。

また「どこで飲んできたの?」という質問に対し、「えっ、どこで飲んできたかって?」と投げかけられた質問をおうむ返しにするのも、ウソのサインの一つなんですよ。ウソをごまかすための返答を考えるために、無意識で時間稼ぎをしようとしているんです。

──話し方や質問に対するレスポンスがヒントになるんですね。

あとは質問を投げた時に「顔を触る」「椅子に座りなおす」というちょっとした仕草もヒントになります。とにかくじっとしていられなくなるというか。逆にウソをうまくつきたかったら、首から下をあまり動かさないように意識することをおすすめします(笑)。

──相手の一挙一動をチェックしすぎて、逆に怪しまれないようにしなきゃいけませんね。

ただ、大前提として忘れてはいけないのは、別に「ウソを見抜くこと」がゴールではない、ということです。それよりも重要なのは「ウソのサイン」をもとに「ウソをつくことになった原因」を探ることだと思います。

そもそも本人が「これはウソでした」と認めない限りは、本当のことなんて分からないですよね。証拠がない限りは「怪しい」止まりなんです。その代わり「ウソのサイン」を頼りにすれば、その箇所を掘り下げて聞いたり、ほかのアプローチを試して証拠を入手したりと、真相究明の近道になります。

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唐突で「刺激」になる質問でウソのサインを引き出す

──では「怪しい」と感じたポイントの話題を掘り下げるとき、どういった質問をすれば良いのでしょうか。

相手にとってより刺激となる質問をすれば良いんです。ここでいう刺激というのは、短いフレーズの端的な質問を予期しないタイミングで突く、ということです。

──具体的には、どういった質問になりますか?

分かりやすく説明するために、まずはあえて逆の質問例を挙げますね。よく記者会見の中継で、報道陣が長い質問を投げかけるシーンを見たことがありませんか?「1つ目はこうです。そして2つ目は……」といった具合のものです。

実はあの質問の仕方だと意識が分散され、どの質問やフレーズが相手に刺激になっているかが分かりにくくなってしまい、ウソを見抜きにくくなってしまうんです。

──単刀直入に聞かれた時の方が、言い訳を考える隙もなくてうろたえてしまいそうです。

質問に対して後ろめたいことがなければ、どれだけストレートな質問であっても「そんなことないよ」と即座に反応できますからね。しかし後ろめたいことがあると「どこでバレたのか」「どう答えれば乗り切れるのか」とどんどん考えが膨らみ、明確な回答ができなくなるんです。

また、予期しないタイミングで急に質問されると動揺しますよね。だから面接や面談においても相手の「ウソのサイン」を掘り下げるとき、相手が予想していない流れの中で唐突に質問を差し込んでみると、より「怪しいポイント」の解像度が上がってくると思います。

──ちなみに、先ほど「ウソが見抜きにくくなってしまう例」を挙げていただきましたが、ほかに「ウソの見抜き方」が使いにくくなってしまうシーンはありますか?

「ウソの程度」が当人にとって重要ではないときほど、見抜くのは難しくなります。

たとえば商談の場で、商品を購入するかどうかを検討しているクライアントが「前向きに検討します」と言ったとしましょう。商談における「前向きに検討します」はもはや常套句。それが仮に「絶対購入しない」と決意している場合でも、抵抗なく言えるウソなんです。

そうやって言い慣れたウソほど、サインを見極めるのは難しくなります。