『ターミネーター』では、アーノルド・シュワルツェネッガーさんが恐怖の殺人マシーンを演じました。しかし、その続編となる『ターミネーター2』では、打って変わって仲睦まじい父子を演じています。



『ターミネーター2』ポスター (C)1991 STUDIOCANAL – All Rights Reserved

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「地獄で会おうぜベイビー」

 2003年にアメリカ映画協会が発表した「アメリカ映画100年のヒーローと悪役ベスト100」(AFI’s 100 Years… 100 Heroes and Villains)で、『ターミネーター』はヒーロー部門で48位、悪役部門で22位にランクインしています。

 人類の救世主となる「ジョン・コナー」の母親「サラ」の抹殺を目的に、「T-800」こと「ターミネーター」が未来から送り込まれますが、続編ではまだ少年のジョンの命を守る正義のヒーローとして君臨するのです。同一キャラクターが第1作と第2作でここまで属性が異なるのは、非常に珍しいケースといえるでしょう(正確には別のマシーンという設定ですが)。

 単に凶悪マシーンから善玉ヒーローにキャラ変しただけではなく、第2作でターミネーターは父親としての役割も担っています。映画の中盤で、「ジョンと遊ぶサイボーグ……私は突然理解した。ターミネーターは片時もジョンから目を離さず、彼を守る。(中略)父親代わりの男は大勢いたが、その役を果たせるのはこのマシンだけ」というサラのモノローグがインサートされますが、まさにターミネーターとジョンの関係は、本当の父子といえるものなのです。

 ジョン・コナー役を演じたのは、当時13歳だったエドワード・ファーロングさんです。『ターミネーター2』出演時点で演技経験はゼロでしたが、ちょっと影のある美少年ぶりも相まって、瞬く間にアイドル的な人気を博しました。著名なキャスティング・ディレクターのマリ・フィンさんが、バスケットボールに興じている彼を発見してコンタクトをとり、抜擢に至ったと言われています。

 ジョン・コナーと同じように、エドワード・ファーロングさんも父親を知らず、母親とは一緒に生活していませんでした。その孤独感と寂寥(せきりょう)感を、マリ・フィンさんは感じ取ったのでしょう。演技のトレーニングとスクリーンテストを経て、ジェームズ・キャメロン監督は彼こそがジョン・コナーであることを確信し、大役に抜擢します。

 撮影が始まると、エドワード・ファーロングさんとアーノルド・シュワルツェネッガーさんはすぐに打ち解けました。ジョンとターミネーターが楽しく会話を繰り広げたり、ハイタッチをしたりするシーンは、すべて即興の芝居です。

 父親を知らずに育った彼にとって、偉大なるスター俳優であるシュワルツェネッガーさんは本当に父親のように映ったことでしょう。父子のような距離感が、この場面にはよく表れています。映画のなかでも、そして映画の外でも、「ターミネーター=アーノルド・シュワルツェネッガー」は、13歳の少年の守護者となったのです。

 その後エドワード・ファーロングさんが麻薬におぼれ、転げ落ちるように人生を悪化させてしまったことは、よく知られています。当初は『ターミネーター3』にも出演予定だったものの、ドラッグ問題がたたって、ジョン・コナー役はニック・スタールさんに交代しました。

 エドワード・ファーロングさんも、いまでは薬物依存症とアルコール依存症を断ち切り、新しい俳優人生をスタートさせています。またティーンエイジャーの大きな息子もいます。かつてのターミネーターのように、今度は彼自身が息子の良き守護者となる番が来たのです。