パラアスリートが子どもたちに伝える“気づき”
事業を企画したサステナビリティ経営推進部調査役の杉山江美さんは、関わってみなければ分からなかった子どもたちの反応と教員が抱える教育現場の課題の双方を感じている職員の一人だ。
「先生方の悩みとして、テストの成績で順位付けされ学力が“見える化”すると、『自分はこれくらいの高校に行って普通にサラリーマンになって……』みたいな守りの人生を想像し、挑戦することを諦めてしまう子どもが多いというお話を聞きました。でも、そこにアスリートがやって来て、躓きながらも人生を選択してきた経験談を語ると、子どもたちの中に『夢をみつけるために好きなことに広くアンテナを張っていこうと思った』 とか『夢は一つじゃなくていいし、途中で変わってもいいんだ』というような気づきが生まれたと聞いています」
特に東京パラリンピックで銀メダルを獲得した車いすバスケットボール選手たちがプレーする姿を間近で見ることや授業で選手から話を聞くことは、 閉塞感のある子どもたちの心を動かすという。
「希望ある未来を描くお手伝いが出来たのかなと思うと嬉しいですね」と杉山さん。
杉山さんと同じ部署で働くスポーツプロモーション担当部長の真鍋秀一さんも、DREAM HOOP PROJECTの効果を実感している。ある中学校で、アスリートが来ると知った不登校の生徒が、その日は登校したそうだ。
「スポーツやスポーツ選手の力ってすごいですよね」と真鍋さん。「特に地方ではトップアスリートと触れ合う機会が少ないため、社会課題の1つでもある子どもの“体験格差”を減らす一助になれば」と話す。
写真/越智貴雄[カンパラプレス]・ 文/高樹ミナ