膵臓がんで最愛の夫を亡くした倉田真由美のもとに、「今月末でアパート解約したけん」と突然押しかけてきた23歳の姪。奇妙な共同生活がもたらしたものは…

前を向かせてくれたのは、自分とは真逆の姪だった

──10代、20代、そして50代の倉田さんと3世代で暮らされているわけですが、食べ物の好みとか合うんでしょうか?

みんなが好きなのは果物かな。果物って、みんな好きなのに剥いてやらないと食べないですよね。夫もそうでした。

食べたいときに果物を剥いたり、飲みたいときにお茶を淹れたり、そういうちょこちょこっとした身の回りのことを最後までやれたのが彼と結婚して1番よかったことです。特別じゃないけど、余裕がないとできない生活の彩りですよね。それは夫との思い出でもあり、今子どもたちにしてやりたいことでもあります。

──3人での生活を通して、姪御さんや娘さんに年長者として教えたいことはありますか?

「楽しく生きろ!」ということですね。常にやりたいことをやり尽くして、人生がいつどこで切れてしまっても心残りがないように。

これは夫が体現していたことなんです。やりたいことをやってきたから、余命宣告されても、「死にたくない」と生にしがみついて悲観せずにすんだ。娘に対しても向き合ってきたから「あいつなら、オレがいなくても大丈夫!」と言えていました。読んでる漫画の続きとか、『プレデター』の新作が見れないとか、そういう未練はあったみたいですけどね(笑)。

──倉田さん自身が今やりたいことはありますか?

姪と一緒にお店を出したらおもしろいかもって考えているんですよ。スナックのママって昔からやってみたくて。今、人と会っているときが楽しいし、1番やりたいことなんですよね。じっとしていたら誰とも会わないでドヨーンとしてきちゃって、このままだとここから先の人生楽しくないなと思うんです。お店だったら私と話したい人が向こうから来てくれて都合がいい(笑)。

こうやって前向きなことを考えられるのはやっぱり姪がいるからかな。彼女はめちゃくちゃ人あしらいが上手くて、いつでもどこでも楽しそうなんですよ。

「田舎に引っ込んで畑でもやって、誰とも会わないで暮らしたい」と願うときもあるんですが、姪を見ていると、人と関わって楽しい人生にすることもできそうな気がしてくるんです。

取材・文/宿無の翁 写真/わけとく