フグ毒を食べたトラフグ稚魚は、腸内細菌叢が変化する
これまで、フグ毒「テトロドトキシン」は、神経伝達をブロックするだけで、細菌に対する阻害効果は無いと考えられてきました。
しかし近年、「テトロドトキシンが一部の細菌に対して増殖を阻害する効果を持つ可能性」が報告されています。
このことは、テトロドトキシンが腸内細菌にも何らかの影響を及ぼすことを示唆しています。
トラフグ稚魚へのテトロドトキシン投与実験のイメージ / Credit:濵﨑恒二東京大学 大気海洋研究所)_フグにフグ毒を与えるとどうなる? ―テトロドトキシン摂取によるトラフグ腸内細菌叢の変化―(2024)
そこで今回、濵﨑氏らの実験では、トラフグの稚魚を対象にテトロドトキシンを混ぜたエサを与え、腸内細菌叢が変化するかどうか調べました。
「フグ毒入りのエサ」を1日2回、合計8日間与え続けたのです。
その結果、毒入りのエサを食べたトラフグの稚魚は、毒なしのエサを食べたトラフグの稚魚と比べて、腸内の半数以上の細菌種が異なっていると分かりました。
今のところ、この細菌種の違いがフグに対して良い影響を与えるのか、それとも悪い影響を与えるのかは分かっていません。
それでも、それら細菌種の違いによって、脂質代謝や糖代謝などいくつかの機能に違いが生じる可能性があると分かっています。
つまり、「フグにフグ毒を与えるとどうなるのか」という疑問に対して、現時点では、「フグは、フグ毒によって麻痺することはないが、腸内細菌叢が大きく変化する」という答えが得られているわけです。
参考文献
フグにフグ毒を与えるとどうなる? ―テトロドトキシン摂取によるトラフグ腸内細菌叢の変化―
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2024/20240731.html
自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_01.html
元論文
The impact of tetrodotoxin (TTX) on the gut microbiome in juvenile tiger pufferfish, Takifugu rubripes
https://doi.org/10.1038/s41598-024-66112-y
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部