映画『愛に乱暴』森ガキ侑大監督インタビュー!「世界中に僕の映画のファンがいることが本当にうれしい」

江口さんと作り上げた桃子はひょうひょうとしていて、強くてユーモラス

主人公・桃子のキャラクターを、どのように作り上げていかれたのですか?

小説もそうなんですが、作品自体はシリアスになりがちですけど、ちょっと笑えるユーモラスな場面もあって、その両方を表現できる演者は江口のりこさんしかいないと思いました。桃子の設定は、僕がバーッと設定を書くんですけど、桃子を演じるうえで、江口さん自身が桃子っていう人を肉体的に作っていくわけで、そうすると江口さん的にも「桃子なら、やっぱりこうだよね」っていうのが出てくるんですよ。それで、2人で話して答え合わせしながら作っていった感じです。

原作にはないラストシーンも、江口さんと話しながら?

「最後は希望の光がある感じで終わりたいですね」という話はしました。撮影中に、ロケ地がある街で盆踊りがあったので、浴衣姿の江口さんが盆踊りの輪の中に入っていく……という台本を書いていたんです。でも諸事情から別案を考えることになってしまって、「どうしよう?」と考えているとき、江口さんから「監督が思っているほど女性は綺麗なもんじゃないですよ。もっとしたたかだから」と言われて、「なるほど、そういう感じか」と。それで、ああいうラストシーンになりました。いろんな事情を抱えているけどひょうひょうとしていて、たしかに強さも感じさせるし、なんかユーモラスでもある。江口さんだからこそ表現できる桃子になりました。

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チェコでイギリスの学生から突然抱きしめられた!

関西にはよく来られるんですか?

双子の弟が大阪の企業に務めていたので、おいしい店なんかはよく教えてもらいました。過去に、関西のテーマパークのCMや広告を作ったりもしていたので、結構頻繁に来てますね。通天閣にアメリカ村、有名な場所はだいたい行ったんじゃないかな。串カツ店で「二度付け禁止」と書かれた張り紙を見て「本当に書いてあるんだ!」と思いました(笑)。

ところで、「anna」の由来は「あんなぁ」という関西弁から来ているんですが、最近誰かに「あんなぁ」って話したくなった出来事を教えてください。

チェコで開催された『カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭』に行ったとき、イギリスの映画学校の学生が「グッバイ、グランパ!」って言いながら僕に急に抱きついてきたんです。あまりにも突然だったので、一瞬「刺された!?」と思ったんですけど(笑)、その子が「あなたのファンだ」と言うんです。僕の映画デビュー作が『おじいちゃん、死んじゃったって。』なんですけど、海外では『Goodbye, Grandpa!』というタイトルだったんです。それに気づいて、すごくうれしくなっちゃって。

映画のタイトルを叫んでいたんですね。

そうなんです。だから、「『愛と乱暴』っていう新作があるから観てほしい」って伝えたら、「映画学校の同級生の友だちはもう皆観た」と。『カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭』には全世界から映画学校の生徒たちが来ていて、映画の勉強をしているそうなんです。それで、先に『愛と乱暴』を観た彼の友人たちが、すごくよかったって褒めてたから「僕も絶対に観るよ」と言ってくれました。

森ガキ監督作品のファンが世界中にいるんですね。

一つひとつ丁寧に作ったいい作品は、世界に広がっていくんだ、僕の映画を見てくれる人が世界中にいるんだと実感して、本当にうれしかったです。

今の社会に問いかけるような作品を撮ろうと思ったきっかけや、リアリティを追求した撮影現場、主演の江口のりこさんとのエピソードなど、撮影秘話を気さくに話してくださった森ガキ監督。

写真/YukiNakamura 文/中野純子