捨てられた高齢者が行きついた「YouTube」
今回の定量調査で明確になったのが、現時点のデジタル高齢者の利用率が比較的高く、情報を届けるメディアとして有効なのが、「YouTube」「LINE」「検索(Google検索やYahoo!検索)」の3つにとどまるという現実だ。
ただし、デジタルリテラシーが高い一部の間で「Facebook」の活用も進んでいる兆候が垣間見られた。今後、新人類世代やバブル世代が高齢者になる時代には、Facebookも有効なメディアとなり得るだろう。
特に、コンテンツの作成や広告の出稿先として、有望となるYouTubeはデジタル高齢者を強く引き付けるツールとして、積極的に活用すべきだ。高齢者へのロングインタビューによる定性調査でも、デジタル高齢者でYouTubeを視聴しているユーザーは非常に多く見られた。
YouTubeの視聴が加速したのは、2つの事象が関係している。1つがテレビがコア視聴率(主に13〜49歳の個人視聴率)を採用し、49歳以下をターゲットとして、高齢者を事実上見放したことだ。
もう1つが、2020年春から新型コロナウイルス感染症によって巣ごもり生活が続き、YouTubeを視聴する機会も時間も増えたことだ。
本来ならコロナ禍ではテレビを見て過ごしていたはずだが、その肝心のテレビが自分たち向けの番組づくりを放棄してしまった。それらの高齢者向けの番組はBSに相次いで引っ越した。
だが、BSを見る高齢者は一定数いるものの、視聴環境を整えている高齢者世帯はそれほど多くない。そこで、行き場を失ったデジタル高齢者が向かった先がYouTubeだった。テレビが見放した高齢者をYouTubeが受け皿となって拾い、視聴回数が一気に上がったというのが要因の一つだ。
写真/shutterstock
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「シニア」でくくるな! “壁”は年齢ではなくデジタル(日経BP)
原田曜平
2024年6月28日1,980円(税込)304ページISBN: 978-4296205363
日本の若者研究の第一人者であるマーケティングアナリストがシニアを独自調査健康・お金・人間関係の悩みなど……リアルなシニアの実態が浮き彫りに! これから”黄金期”を迎えるシニアマーケティングの新常識が学べる1冊
この本は「シニア世代のマーケティング」について書かれた書籍です。
現在、日本で最大のボリュームを誇る「団塊の世代(1947~49年に生まれた人々)」が全員75歳以上の後期高齢者になることによって起こる「2025年問題」が、高齢化社会に直面した日本において、シニアのみならず幅広世代に重くのしかかろうとしています。
本書ではその問題を負の側面ではなく、消費という観点で捉え直しました。著者の原田氏はこれまで培った世代分析の手法を駆使し、独自調査に基づいて現在のシニアの実態をあぶり出し、そこに「デジタル」という大きな”壁”があることを突き止めます。そこから、現代のシニアが本当に生き生きと暮らせる方法を導き出し、目前に控えた「史上最高・最大級の高齢者マーケット」の攻略法について様々な角度から提案します。
では、今回、独自調査で明らかになった現在のシニアはどんな人たちでしょうか。そして、原田氏が本書で強く訴える「デジタルの壁」は、シニアたちにどのような影響を与えているのでしょうか。