アニメ映画『天空の城ラピュタ』にて、パズーとシータを追い詰めたムスカが「3分間待ってやる」と猶予を与えたのは有名な話です。しかし、ムスカは根っからの悪人だったはずで、なぜここで一見慈悲深く見えるような行動をとったのか、不思議ではないでしょうか。その裏には、意外な真相が隠されていました。
『天空の城ラピュタ』場面カット (C)1986 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli
【画像】え…っ? 似てるかな? こちらが『ラピュタ』より前の宮崎駿作品に出ていた「ムスカの子孫」です
やっぱりムスカはムスカだった
「3分間待ってやる――」これは『天空の城ラピュタ』に登場する「ムスカ」の有名なセリフです。ムスカといえば、憎めない悪役が多いジブリ作品のなかでは珍しい純然たる悪役として知られ、人気を誇っています。なぜそんな血も涙もない人物が、「パズー」たちに3分間の猶予を与えたのでしょうか。
まずこのセリフに至るまでの状況を振り返ってみましょう。ムスカは「ラピュタ王」になるため「シータ」を狙っており、彼女を玉座の間へと追い詰めているところでした。そしてシータを守ろうとするパズーも、グレネードランチャーが弾切れとなっており、ムスカにとっては圧倒的に優勢という状況です。
しかしそんな状況にもかかわらず、ムスカは「シータとふたりきりで話がしたい」というパズーの要求を呑み、ふたりに3分間の猶予を与えます。結果的にこれが命取りとなり、パズーとシータが唱えた滅びの言葉「バルス」によって、ムスカの野望は儚く散ってしまいました。
ではなぜムスカは、3分間の猶予を与えたのでしょうか。単純に受け取るなら、ふたりに対して「情けをかけた」結果のように見えるでしょう。非情な悪党にも、ひとかけらの良心が残っていた……というわけです。
ですが真実はまったく異なります。実は2001年に発売された『スタジオジブリ絵コンテ全集』第2巻には、当該シーンの絵コンテが収録されており、「このスキ、装弾する」「実はもう弾丸がなかったのです」と注釈が添えられていました。
3分間の猶予を与えたのは情けでも慈悲でもなく、「弾を装填する」ためであり、ふたりを始末するための準備を整えていたのです。実際にムスカはパズーとシータを監視しながら、銃のリロードを行っていました。ある意味、とてもムスカらしい理由と言えるでしょう。
ちなみに絵コンテには「実はもう弾丸がなかった」とありますが、実際はあと1発だけ弾が残っていた可能性があります。絵コンテによるとムスカの愛銃は「エンフィールド・リボルバー」という回転式拳銃で、装弾数は全部で6発でした。そしてムスカが劇中で放った銃弾の数は5発なので、1発は残っていた計算になります。
だとすると、わざわざ3分間の猶予を与えてまでフル装填したことが不思議に思えてきます。これは長年ファンの間で議論されている部分でもあり、ネット上では「落下時に暴発しないように、わざと1発分空けていた」「尺の都合上、1発分のシーンをカットしていた」などとささやかれています。
ただ、用意周到なムスカのことです。より勝利を確実なものにするために、弾をフル装填しておきたかったのかもしれません。そもそも弾が1発残っていたとしても、ふたりを始末するためには、どのみち2発は必要でした。
2024年8月30日(金)の『金曜ロードショー』では、『天空の城ラピュタ』が放送予定です。もう何度も観ているという人も多いと思いますが、セリフの裏に隠された駆け引きを知ることでまた違った印象を受けそうですね。