小学4年生の息子が不登校になった際の経験を母親目線で綴った漫画『子どもが不登校になったのでいろんな人に頼ってみた。』。作中に登場するカウンセラーの言葉にSNS上では「目から鱗」と反響の声が続出した。文部科学省によると2022年度の小中学生の不登校児の推移が約30万人と過去最多に迫る中、母子がたどり着いた不登校克服の鍵とは何だったのか。作者の川口真目氏に話を聞いた。
コミュニティの不登校児の自殺未遂にショック受け 家から学校の概念を封印
――息子さんが不登校になった当時の心境をお聞かせください。
川口真目(以下同) 約2年前の小学4年生のとき、担任の先生と相性が合わず、1学期の5月の連休明けから急に学校に行けなくなってしまいました。学校で傷つく出来事があったことがきっかけで、どんどん元気がなくなっていく息子を傍で見ているのはすごく辛かったですね。
息子が「今日はがんばる」と言って学校に行こうとすると直前で頭やお腹が痛くなってしまって。
当時は本人も私自身も少なからず、「学校は行かなくてはいけないもの」と思っていました。息子は徐々に自信を失ってきてしまって、今まで当たり前にできていた一人の留守番や塾通いもできなくなってしまいました。どうしてこうなってしまったんだろうって私自身も相当追い詰められていました。
――息子さんが不登校の期間、お二人はどのように過ごされていたんですか。
息子はしばらく家に引きこもってゲームをするようになりました。私は知人に紹介されて地元の不登校の子どもを持つ親のコミュニティに参加したんですけど、そこで「子どもが自殺未遂しました」って話を聞いたのが衝撃的すぎて。自分が通っていたカウンセラーの先生に伝えたところ、「親が無理矢理連れて行くとそういうケースになるから今は休ませて」と言われました。
それがきっかけで、「学校は行かなくていいよ」とランドセルも上履きも教科書も全て倉庫にしまって、家から学校という概念を封印しました。息子の習いごとも全部休みにして、私も仕事をセーブして、「さっ、今日は何しようか」っていう毎日でしたね。
――子どもの自殺未遂の話はかなりショッキングですよね。
もうすごく怖くなってしまって。「学校なんて行かなくていい」って私自身が勝手に決めつけてしまいました。でも息子には「まだ答えが出てないから」とはっきり言われましたし、カウンセラーにも「お子さんは自分で答えを探しているし、迷って悩んでいるので待ってあげて」と諭されました。
私たち親は信じて待つというのがとても苦手なんですよね。復学を目的にしたビジネスが最近SNSで炎上してましたけど、復学もひとつの選択だし、私も意固地になっていたなと思います。それでフリースクールの見学に行ったり、不登校の子ども専門のカウンセラーを探したり、いろいろ調べたり、探していく中で「今は学校という概念を消して遊んだほうがいい」という選択が取れました。
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提案し子どもに委ねる教育スタイルへ
――息子さんに変化が出たのはいつ頃だったのでしょうか。
不登校から2カ月経ったぐらいですね。徐々に外にも出かけられるようになったので、昔から好きだった科学館でプラネタリウムを見たりして一緒にたくさん遊びました。不登校ってよく「親のせいだ」とか言われて親御さん自身もふさぎ込むことが多いと思いますが、子どもって親のメンタルに左右されると思うんです。
だから、不安はあるんだろうけど、罪悪感を感じずに遊べるときは遊んで、楽しめるときは楽しんでほしいなって思いますね。
――そこからどのように不登校の状況を脱したんでしょうか。
外に遊びに行けるぐらい元気になったタイミングで、もともと通っていたフリースクールに通うようになりました。そこで大人と将棋で遊んだり、好きな算数の勉強をしたりして、大人が偏見なく寄り添ってくれたんですよね。そこから息子も自信を取り戻していきましたし、私と一緒に遊んだ期間も「学校に行かない僕でも、ママは嫌いにならないんだ」という安心感を感じていたらしく、徐々に大人への信頼を取り戻していきました。
――小学6年生の今では毎日学校に行かれているということですが、その後どのように復学されたんですか。
小学4年生のときは週1回、算数の先生のクラスだけ通っていたんですが、5年生で担任が変わったことがきっかけで、通えるようになりました。ただしばらくは「行けるときに行く」「しんどかったら帰る」という独自のルールのもとで登校してましたね。習いごとはすべてストップしてました。
――不登校の経験を通じて得たものはありますか。
息子自身は不登校の期間を通じていろんな大人と接したことで、決断力も付きましたし、「自分は他の子と違って大丈夫」と理解できたと思います。私自身は息子に提案はするけど、最後は自分で決めてねというスタンスに変わりました。不登校期間のカウンセラーの先生のアドバイスがなければ、今でもよかれと思ってアドバイスをし続けたり、待つということができなかったかもしれません。