小4息子が不登校に…「心配より信頼を」追い詰められた母子を救ったカウンセラーの言葉に反響の声が続出の漫画『子どもが不登校になったのでいろんな人に頼ってみた。』作者インタビュー

不登校克服の鍵は「心配より信頼」

――ご自身の経験を漫画にしようと思ったきっかけを教えてください。

不登校児の自殺未遂の話にショックを受けたのがきっかけでした。真面目な親御さんほど、なにがなんでも学校に連れていこうとしてしまい、結果的に親が一番望んでいない方向へ行ってしまう。再登校するのも他の選択肢を取るのもすべて子どもが決めることで、子どもの本心を知ってほしいし、親や社会の「学校にいかない=悪」という価値観を少しでも緩めたいと思ったんです。

――作品の中で最もこだわったシーンがあれば教えてください。

カウンセラーの先生が話していた「心配は子どもの自信を奪う 信頼は子どもに自信を与える 心配より信頼をしてあげて」という言葉ですね。不登校期間を息子と過ごす中で最も心に響いた言葉です。これまで心配=愛情と思っていましたが、心配するほど子どもの自信を奪っていたんだなって。

――ただやはり心配してしまうのが親ですよね。

そうですね。でも心配って信じてないから出てくる感情なんですよ。学校に行くことを信じるのではなく、この子なら何があっても大丈夫って先に信じることで変わってくるんです。なぜ信じられないかっていうと「どうせ私の子どもだし」って親自身に自信がないからなんです。

信じるって本当に難しいけど、子どもを信じられるようになったら、自分自身も信じることができるようになったんです。日本人は知らぬ間に条件を付けて子どもを愛している人が多いと思います。学校に行く子ども、成績のいい子ども…そういう自分に気付くことができたのも大きな一歩でした。

――作品をSNSで公開されたところ、200万PVという大きな反響がありました。率直にどう思いましたか。

思っている以上に不登校で悩んでいる人は多いんだなという印象でしたね。不登校ってマイノリティっていわれてますけど、変わらない学校と変わり続ける人のズレが本質的な問題だと思うんで、マイノリティの問題ではないんですよ。大事なのは「学校に行く・行かない」ではなく、価値観をアップグレードしていくこと。そうしないと子どもも親も心を壊してしまいます。

(広告の後にも続きます)

私たち親がやるべきことは?

――変わらない学校と変わり続ける人のズレとは具体的にどういうことですか。

大企業に入ることが幸せ、組織に所属することが安泰という従来の価値観だったら、学校教育の中で、自主性よりも協調性を大事にしてみんなで同じことやるのは意味があると思うし、全然間違いではない。

でも今は大企業でも副業推奨されて給料カットされたり、フリーランスも増えてきている時代で、大事なのは自分で考えて自発的に行動していく人だと思うので、従来の教育スタイルでできるのかといわれたら難しいと思います。

――読者からの感想で特に印象に残ったものはありましたか。

不登校の経験者や親はもちろんですが、「不登校になりたかった」というコメントがとても多かったことですね。学校に行きたくなかったけど、無理矢理親に連れて行かされて、辛い思いを受け止めてもらえなかった心の傷は不登校児よりも深いのではないかなと感じました。あとは山口県の公立小学校の校長先生から「学校だよりで漫画を掲載したい」といわれたときはとてもうれしかったです。

――最後に現在不登校で悩む子どもや親御さんに伝えたいメッセージはありますか。

とてもしんどいと思うんです。ほとんどの親が「今が学校に行かせない方がいい状況だ」と分かっていても、「学校に行かせなきゃ」って思ってしまう。知らぬ間に人は「すべき」「しなくてはならない」という価値観に囚われてしまう。その最たるものが「学校には行かなくてはならない」という考えで、今までの価値観を変えることは仏の修行かってぐらい大変なことです。

でもそれを経験して条件なしで子どもを愛することができた時、世界が広がるし、自分自身も生きやすくなる。囚われていた「すべき」を崩せた時、親も子どももとても楽に生きられるんじゃないかなって思います。

 

取材・文/集英社オンライン編集部 イラスト/川口真目