「僕はハゲかけている」…自身の体験をもとに漫画『東京ハゲかけ日和』で描く作者のトリバタケハルノブ氏。自分は必死に生やしたいと思っているときに、ふと気になってしまった「毛」に対するあるスタンス……。
頭髪は永久発毛したいのに、それ以外は…
薄毛が気になりだしてから毎朝髭を剃るのが嫌になった。同じ悩みを持つ友人も笑って頷いていたので、薄毛あるあるなのかもしれない。
頭髪はぜったい死守したいと願いつつ、ほんの十数センチ下にある毛を毎日剃っている。こんな不条理があるだろうか?
いや考えてみれば、髭どころか胸毛、脇毛、腕毛、すね毛。鼻から下の体毛のほとんどが身だしなみ的にはない(薄い)ほうがいいこととされている。
かつては胸毛や腕毛が男らしさの象徴のように思われていた時代もあったようだけど、「男らしさ」という言葉自体が死語になりつつある現代では、男性でも自分で処理したり脱毛サロンに通う人が珍しくない。
さらには将来自分が誰かに介護してもらう可能性を考えて、下半身の毛を永久脱毛する人が男女問わず増えているという。
こうなってくるとそもそも人間の体毛はなんのために生えているのか不思議に思えてくるし、逆に鼻から上の体毛だけは頑なに残そうとしているのも奇妙だ。
ほとんどの体毛を永久脱毛したがっているのに、頭頂と付近のごく一部のみ永久発毛したいと考えている。人間以外の動物から見れば、なんとも意味不明な習性ではないだろうか。
そこまで考えてふと「(進化の過程や品種改良、病気など以外で)人間以外にも薄毛に悩む動物がいるのか?」と気になった。
仕事中でも気になることが浮かぶとつい検索してしまうのは僕の悪い癖だ。そこで出てきたテキストを読むうちにまた新たな疑問や興味が生まれ、さらに検索し、脱線。いつのまにか無駄な時間を過ごしてしまい激しく後悔した、という経験が何度もある。
「薄毛 人間以外」のキーワードで検索すると、すぐに「ベニガオザル」という名前がヒットした。人間以外で数少ない、男性ホルモン由来の薄毛(つまりAGAか)を発症する動物であるという。
薄毛になることで彼らの生活にどういう影響があるのかまではわからなかったが、その特性ゆえ育毛剤の研究用に飼育されることもあるらしい。ハゲが原因で実験動物として我々の犠牲に……。
今回ばかりはそれ以上検索する気が起こらず、そっとブラウザを閉じ、すぐに仕事に戻った。
文/トリバタケハルノブ