焦げたトーストを食べるとがんになるのか / Credit:Depositphotos
「焦げを食べるとがんになる」という知識は、今や常識のように広まっています。
真っ黒なトーストや、バーベキューの網の上で放置されていた肉や野菜は食べるべきではない、というのです。
しかし、これらの情報は完全に正確なわけではありません。
アメリカ国立がん研究所(NCI)の上級研究員であるラシミ・シンハ氏は、焦げとがんの関係性を科学的に解説しています。
目次
焼くと焦げができるのはなぜ?焦げには発がん性があるのか?ヒトでの発がん性は実証できていない
焼くと焦げができるのはなぜ?
加熱するとメイラード反応が起こる / Credit:Depositphotos
食材を焼くと、当然ながら食材に含まれる水分が飛びます。
しかし水分が失われただけでは、色まで変化しないはずです。
実は私たちが食材を加熱するとき、そこでは「メイラード反応」という特殊な化学反応が起こっています。
食材に含まれるタンパク質と糖が加熱によって結びつき、褐色物質を生み出していたのです。
そしてこのメイラード反応は食材の旨味を凝縮させたり、香ばしさを与えたりする効果があるため、「適度な焦げ」を作ることは1つの調理法として用いられてきました。
実際、黄金色のトーストや炊き込みご飯のおこげ、ステーキの香ばしい焼き色は、多くの人を魅了します。
しかし多くの人が危惧しているように、このメイラード反応では、発がん性が疑われている物質も作られてしまいます。
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焦げには発がん性があるのか?
焦げに含まれる物質のうち、発がん性が疑われているのは次の3つです。
①ヘテロサイクリックアミン(HCA)
②多環芳香族炭化水素(PAH)
③アクリルアミド
①②は肉を加熱した際に発生するものです。
③はトーストやフライドポテト、コーヒー、麦茶、クッキーなどに多く含まれています。
しかも③は食材に限らず、タバコの煙などのあらゆるものに含まれているとのこと。
フライドポテトには多くのアクリルアミドが含まれている / Credit:Depositphotos
そして大切な点として、①②③すべては体内でDNAの一部を破壊し、突然変異を生じさせる(つまりがんを発生させる)おそれがあります。
実際、シンハ氏によると、「①HCAと②PAHはサルを用いた2004年の実験で、③アクリルアミドはマウスを用いた2015年の実験で、それぞれ発がん性が認められました」とのこと。
ところが全体として研究者たちのスタンスは、「焦げががんの原因になるとは断言できない」というものです。
ではなぜ、焦げとがんの関係性は曖昧なままなのでしょうか?