毎シーズン多くの新作アニメが放送されており、全部の作品をチェックするのは難しい状況です。人によっては、事前情報やタイトルだけで視聴を判断することもあるでしょう。しかし、実際に放送が始まると、そういった事前情報からは予想できない展開がくり広げられた作品もあります。
TVアニメ『ゲキドル』キービジュアル (C) ゲキドル製作委員会
【画像】え…っ? いや、そんなキービジュでシリアスになるんかい!? こちらが衝撃だらけのアニメです(4枚)
演劇アニメなのに、訪れる世界存亡の危機
アニメは毎シーズン新しい作品が始まり、作品数が多すぎるため全ての作品をチェックするのも難しく、タイトルや事前情報だけで視聴を決める人もいるでしょう。しかし、実際に放送されると、そうしたわずかな情報からは予測できない展開を迎えた作品もありました。
たとえば『ゲキドル』は、タイトルと中身のギャップに驚かされた視聴者が多かった作品ではないでしょうか。タイトルから考えると「演劇とアイドル」を合わせた作品のように思えますが、実施には次第に演劇よりもSFの要素が強くなり、視聴者から「近年まれに見る怪作」と言われるほどのインパクトを残しました。
序盤では突如として街の一部が消滅する災害に見舞われた池袋を舞台に、主人公の「守野せりあ(CV:赤尾ひかる)」が寂れた劇団に入団し、仲間たちとともに舞台に立つ姿が描かれます。ただ、登場人物が回想する池袋消失によるトラウマや、演劇の練習相手として使われる自動人形「ドール(CV:M・A・O)」の思わせぶりな立ち振る舞いなどから、不穏な空気が漂い始めます。それでも、女の子たちが仲睦まじく舞台に立つ序盤から、後半で複数の時間軸を巡ってさまざまな思惑が行き来し、世界崩壊の危機にまで至るストーリーを予想できた視聴者は少なかったでしょう。
またコメディー作品では、『姫様“拷問”の時間です』も、タイトルと内容のギャップで、視聴者にインパクトを残した作品です。最初に公開された告知動画では、重々しい音楽が流れ、囚われた「姫(CV:白石晴香)」の前に、魔王軍の最高位拷問官である「トーチャー・トルチュール(CV:伊藤静)」が訪れるシーンが描かれます。トーチャーが拷問器具を開き、姫が「屈しない」と抗う姿が映し出され、シリアスな雰囲気が漂っていました。
しかし、実際の内容は拷問というよりも、むしろ「接待」に近く、作風はコミカルです。姫がラーメンやかわいい動物、友人との遊びといった誘惑に負け、秘密をあっさり自白してしまうというユーモラスな展開が繰り広げられ、特に「飯テロ」要素に関しては、「姫ではなく視聴者にとって拷問」といわれるほどでした。
もっとも放送開始までコメディー路線を隠していたわけではなく、第1弾PVからすでにその内容は明かされています。物騒なタイトルとは裏腹に、優しい世界観が人気を集め、放送直後に第2期の制作も決定しました。
さらに視聴者が予想できないような展開の作品では、『勇気爆発バーンブレイバーン』もひと筋縄ではいかない強烈さでした。同作は主人公で自衛隊の「イサミ・アオ(CV:鈴木崚汰)」と、アメリカ軍に所属する「ルイス・スミス(CV:阿座上洋平)」を中心に、人類と地球を侵略する謎の生命体「デスドライヴズ」との戦いを描いています。
第1弾PVでは、イサミとルイスが人型機動兵器「ティタノストライド」で戦う姿が描かれ、まるでリアリティを重視したシリアスなロボットモノの作品のように見えます。しかし、実際にはPVの内容は1話前半の合同訓練を描いたもので、そこから先のデスドライヴズが襲撃してくるくだりや、彼らと敵対する謎のロボット「ブレイバーン(CV:鈴村健一)」という、ヒロイックで一騎当千の力を持つロボットものの要素が伏せられていました。
そうなるとリアル系ではなく、スーパーロボット系の作品ととらえられるかもしれませんが、実際には、どちらとも一線を画す独特な雰囲気があります。
ブレイバーンがイサミに抱く異常なまでの愛情表現がたびたび描かれるところも独特で、たとえばブレイバーンは、真面目な会議の場でも、初めてイサミが乗ったときの体験をどこか官能的に語り始める場面がありました。同作は単なるスーパーロボット系やリアルロボット系に収まらず、ロボットアニメの定石を踏まえつつも、それを打ち破る異彩を放つ作品として話題になっています。
最近は各シーズンに放送されるアニメ作品が増えたのもあり、「0話切り」のように、タイトルやキービジュアルの印象で早めに視聴を断念することを表す単語も生まれています。それでも事前情報に惑わされず、実際に視聴することで、思わぬ面白さに出会えるかもしれません。