人気マンガの実写化作品において、原作の再現度はファンが注目するポイントのひとつです。とはいえ上映時間の関係などで「改変」も必要で、なかには原作と異なる結末が描かれた作品もあります。原作の終わり方に改変が加えられた作品は、どのような評価がされたのでしょうか。



ラストを含め良改変といわれた実写映画「DEATH NOTE デスノート the Last name」DVD(バップ)

【画像】え…っ? 「原作だと君死んでたよね?」「こんな映画あったっけ」 これが実写『デスノート』でしかありえない「スピンオフ」です(3枚)

不安要素の匂わせで原作よりゾッとする

 マンガ作品の実写化において、物語がどのように再現されるのかは、原作ファンが注目するポイントのひとつです。とくに作中の名場面や見どころは、原作に忠実に描いてほしい場面でしょう。一方で、肝心な「結末」が原作と異なりながら、高く評価された作品もありました。いったい、どのように改変されたのでしょうか。

※この記事では『ミュージアム』『デスノート』『恋は雨上がりのように』の原作マンガ、実写版のネタバレに触れています。

『ミュージアム』

 実写映画の結末が意味深といわれた作品としては、2016年に公開された『ミュージアム』(原作:巴亮介)があげられます。本作は、雨の日に起きる連続猟奇殺人事件の犯人「カエル男(演:妻夫木聡)」と、彼を追う刑事「沢村久志(演:小栗旬)」の攻防を中心に描いたサスペンスホラー作品です。

 映画でカエル男の持病の光線過敏症が心因性のものであることが明かされたり、カエル男の妹「橘幹絵(演:市川実日子)」が登場人物に追加されたりと、実写オリジナルの設定があり、結末にも異なる印象をもたらしています。

 実写版のクライマックスでは、沢村の妻「遥(演:尾野真千子)」と息子の「将太(演:五十嵐陽向)」、そして助けに来た沢村を監禁していたカエル男こと「霧島早苗」は、駆け付けた警察に追い詰められて屋外に飛び出す展開になります。

 そこで日光を浴びたことで、霧島は意識を失い、逮捕されました。その後、昏睡状態で警察病院に入院する霧島は、病室に侵入した幹絵に殺害されるのです。原作では昏睡状態が続いていたため、実写版でカエル男の末路が描かれたことで、事件が収束した印象がより強まっています。

 ところが実写版ではその後に、沢村と遥がビデオ撮影した将太の運動会を観る場面にて、ビデオに映る将太が執拗に首を掻くという演出がありました。それは霧島が、日差しを浴びたときに見せた反応と同じものです。

 監禁されて強いストレスを受けた将太が、彼と同じ心因性の光線過敏症を発症したと思われる場面に、「ゾッとするラストでうまい演出だと思った」「第二のカエル男が誕生する示唆なのか不安をあおられた」「これは意地悪(ほめ言葉)」など、物議を醸すラストになりました。

『デスノート』

 原作に比べ救いのある結末といわれたのが、2006年に公開された『デスノート』(原作:大場つぐみ/マンガ:小畑健)の実写版の後編『デスノート the Last name』です。本作では、「キラ」を名乗り「名前を書かれた人間は死ぬ」というノートで世界中の犯罪者を裁こうとするエリート大学生「夜神月(演:藤原竜也)」と、キラの正体を突き止めようとする名探偵「L(演:松山ケンイチ)」の頭脳戦が描かれます。

 原作の長い物語を映画の2部作に収めたこともあり、実写版は登場人物の設定や物語の展開に改変がありました。たとえば原作ではLが月の策略で殺され、後継者の「ニア」と「メロ」がキラを追い詰めた一方、実写版ではLが自分の命と引き換え(23日間の期限を設けて、先に自分の本名をノートに書く)にキラの正体を暴き、事件の解決につながっています。

 そして、キラとして人殺しを行ってきた月の死にざまもまた、原作と異なりました。原作では、最終的に死神「リューク」に自身の名前をデスノートに書かれて死を悟った月が、「死にたくない」「逝きたくない」とわめくみじめな姿を見せています。読者の間では、クールな月の性格に合わない最期だったことが、納得できない人もいたようです。

 対して、実写での月は「僕のやってきたことは正義」「こんな場所で死ぬわけにはいかない」と、最後まで自分の正義を信じ抜いたまま息を引き取ります。ネット上では「月なりの信念がうまく表現されていたと思う」「あらためて正義について考えさせられる結末だった」など、一応は月の思想が尊重されるラストが評価されていました。



恋は実らずとも友人関係が続くラストが評価された映画『恋は雨上がりのように』ポスタービジュアル (C)2018映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 (C)2014 眉月じゅん/小学館

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原作よりモヤモヤがないラスト?

『恋は雨上がりのように』

 2018年に公開された映画『恋は雨上がりのように』(原作:眉月じゅん)も、オリジナルの結末が好評だった作品です。本作は冴えない中年のファミレス店長「近藤正己(演:大泉洋)」に、片思いをする女子高生「橘あきら(演:小松菜奈)」の恋の行方を描いています。

 けがで陸上の夢を絶たれたあきらと、小説家になる夢から目を背けていた近藤は「夢を諦めた経験」という共通点がカギとなります。互いの存在をきっかけに自分自身と向き合い、成長していくふたりの姿が魅力的な作品です。

 原作でも実写版でも、あきらが近藤に対してまっすぐに想いをぶつけるも、彼女に夢を追ってほしいという願いもあって、近藤は気持ちに応えずふたりは結ばれません。

 原作では、近藤があきらにプレゼントを渡してアルバイトのクビを言い渡し、あきらは陸上部に復帰します。しかし、近藤を想い続けている描写もあり、「モヤモヤが残る」という読者の声もありました。

 一方、映画ではプレゼントを渡していなかったものの、あきらの陸上部復帰後に再会したふたりが互いの近況を報告し、あきらが近藤に連絡先の交換を提案したところで幕を閉じています。一応はその後のふたりの関係が期待できる結末で、原作ファンの間でも「お互いに前に進んでいく姿がよかった」「美しい終わり方だった」などの声があがっていました。