弘兼憲史氏の人気連載が300回を突破。これを記念して小説家・北方謙三氏とのスペシャル対談が実現した!  実は共に今年喜寿を迎える同級生。心境の変化、女性にモテル秘訣、若さの保ち方、そして若者への一喝‥‥など77歳の今もバリバリの現役で活躍する2人が爆笑トークで盛り上がった。

弘兼 北方先生とは同学年。70歳の古希の時にも対談をさせていただきました。7年ぶりですね。

北方 我々も77歳、今年で喜寿を迎えます。この連載も300回を迎えられたとか。おめでとうございます。

弘兼 ありがとうございます。北方先生も長年「ホットドッグ・プレス」(講談社)で読者の悩み相談の連載をされていましたけれど、「ソープへ行け!」というアドバイスは今も語り継がれていますね(笑)。

北方 あれは、前後の文脈がかなり省かれていて、別にただ行けって奨励したわけではないんですよ。童貞の男の子から「好きな子ができた。初体験をスムーズに済ますためにはどうしたらいいか」という相談を受けて、真剣に答えた結果だったんですよ。

弘兼 言葉のインパクトが先行したんですね。話は戻りますが、77歳を迎えるにあたり、何か変化はありましたか?

北方 僕はね、弘兼先生にお会いしていなかった間、2019年に膀胱ガンを患いました。早期に見つかったので、内視鏡手術で除去することができました。

弘兼 お元気そうで何よりです。

北方 でも、体力は徐々に落ちているし、大雑把になりました。あと、注意深さがなくなって、何もないところで転んだりすることも多くなりました。

弘兼 私も確かに転ぶことは多くなりました。あと尿が近くなりました。

北方 尿が近いという話は以前も仰っていましたね。

弘兼 70歳くらいからずっと続いています。行きたくなったら、もう我慢できない。トイレのドアが見えたら、尿漏れしてしまったことがあったので、先日、トランクス型の尿漏れパンツを買いました。

北方 私はまだ漏らしはしないですね。でも、日常的に少しずつ不都合なことが出てきます。

弘兼 我々の仕事は目が命ですが、目の調子はいかがですか? 私は1時間くらい描くと目の焦点が合わなくなってきて、10分くらい遠くを見たり違うことをしたりして、また戻って描く。だけど、1時間くらいするとまた目が疲れての繰り返しです。

北方 僕も原稿用紙に手書きで原稿を書いていますが、ほとんど目をつぶって原稿を書いています。だから文字が原稿用紙の枠をはみ出す時もあります(笑)。

弘兼 私は北方先生にお会いしていなかった間に、孫が3人できました。今は5歳、3歳、1歳になります。

北方 そうですか! それはにぎやかですね。ウチはもう中学2年、中学1年、小学2年になりました。上の孫2人はずっと僕のことを貧乏だと思っていてね。「ばあちゃんにお金をもらうばかりではなく、じいちゃんは会社に行った方がいい。部屋で勉強ばかりしているからお金がないんだよ」と言われたことがあります。友達のお母さんに「ウチのじいちゃんは真面目なんです。歳をとってますけど、いい会社はありますか?」と相談していたとも聞きました。

弘兼 我が家も、子供たちが小さかった時には「ウチはお金がないから」と言い聞かせていました。ウチは私も妻も漫画家で、ずっと家で作業しているから、子供はどんな仕事をしているかわからないですからね。

北方 子供からしたら、ネクタイを締めて、スーツを着て、朝会社に行くお父さんが普通なんだよね。

北方謙三(きたかた・けんぞう)1947年、佐賀県生まれ。中央大学法学部卒。81年、「弔鐘はるかなり」でデビュー。91年「破軍の星」で柴田錬三郎賞、05年、「水滸伝」全19巻で司馬遼太郎賞、11年、「楊令伝」全15巻で毎日出版文化賞を受賞するなど数多くの賞を受賞。13年、紫綬褒章受章。16年、「大水滸伝」シリーズ全51巻で菊池寛賞を受賞。20年、旭日小綬章を受章。24年「チンギス紀」(全17巻)で毎日芸術賞を受賞。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部。松下電器産業(現パナソニック)に勤務後、74年に「風薫る」で漫画家デビュー。84年に「人間交差点」で小学館漫画賞を受賞。91年「課長島耕作」で講談社漫画賞、00年「黄昏流星群」で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、03年日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年には紫綬褒章を受章。「弘兼流60歳からの手ぶら人生」など著書多数。

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