宇宙を満たすダークエネルギーの正体とは? / Credit:pixabay

宇宙論を聞いていると、たまに「ダークエネルギー(暗黒エネルギー)」という単語が登場します。

その言葉を聞いて暗黒物質(ダークマター)の別名だと思った人、鎮まれ俺の右腕と思った人、フォースの暗黒面だと思った人、いろいろいるがもしれませんが、それらはすべて間違いです。

ダークエネルギーとは、宇宙を膨張させる未知のエネルギーのことを指しており、その力の意味するところは負の引力です。

興味は湧くけど理解するのが難しい天文用語「ダークエネルギー」について、今回は解説していきます。

 

目次

アインシュタインの生涯「最大の過ち」宇宙の膨張を観測したハッブル蘇る宇宙項

↓↓動画でも解説しています。

アインシュタインの生涯「最大の過ち」

「ダークエネルギー」という用語で使われている「ダーク(暗黒)」という言葉は、「まったく未知の検出できないもの」を意味しています。

けっして黒いわけでも邪悪なわけでもありません。

また、暗黒物質と呼び方が似ているためよく混同されますが、暗黒物質とも関係はありません。

むしろまったく逆の存在といってもいいかもしれません。

「ダークエネルギー」は、重力に逆らって宇宙空間を加速膨張させていく未知のエネルギーのことを表しています。

ただ、いきなりそんなことを言われても意味がよくわからないので、きちんとダークエネルギー発見のいきさつについて語っていきましょう。

まずそもそも、宇宙という時空は、内側に重力で引っ張り合う数多の天体を持っているため、基本的には収縮する力が働いているはずです。

一般相対性理論を発表したとき、アインシュタインも自身の重力場方程式の中に宇宙を収縮させる作用があることに気づきました。

しかし、当時はまだ宇宙についてほとんど何もわかっていなかった時代です。

ビッグバン宇宙論もなく、宇宙がある瞬間に誕生したという考え方はアインシュタインでさえ持ち合わせていませんでした。

宇宙とは永遠不滅にして不変のもの。

それが当時の常識であり、アインシュタインもそのように考えていたのです。

そのためアインシュタインは、「宇宙が縮むはずがない。何らかの作用によって宇宙は不変の状態に保たれているはずだ」と考えました。

そこで重力場方程式の中に、宇宙の収縮を押し止める「時空が持つ斥力」として宇宙項というものを導入したのです。


アインシュタインは自らの理論が導く宇宙が収縮するという問題を解決するため、宇宙を膨張させる宇宙項を方程式に導入した / Credit:canva.ナゾロジー編集部

つまりアインシュタインは、自らが考える宇宙モデルと辻褄が合うように、方程式を改ざんしてしまったわけです。

暗黒面に堕ちたアインシュタイン。彼はのちにこのことを深く後悔します。

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宇宙の膨張を観測したハッブル

その後、宇宙望遠鏡の名前にもなった偉大な天文学者エドウィン・ハッブルが宇宙は膨張しているという証拠を、遠方銀河の観測から発見します。


エドウィン・ハッブルは遠方銀河の赤方偏移を観測し、宇宙が膨張しているという証拠を掴む / Credit:canva,Wikipedia ,ナゾロジー編集部

宇宙が膨張していた理由は、後にジョルジュ・ルメートルのビッグバン理論によって説明されることになります。

宇宙はビッグバンという大爆発から誕生していて、その時の爆発の勢いが未だに続いているため、宇宙は膨張を続けているというのです。

宇宙が不変でもなんでもなく、風船のように膨らんでいるとわかった以上、もはや宇宙を不変に保つための宇宙項は必要ありません。

そこでアインシュタインは重力場方程式から宇宙項を削除し、このことを「生涯最大の過ちだった」と語ったのです。

しかし、そんなアインシュタインの「最大の過ち」は、後の世で高く評価されることになります。