4次元の迷路を作って遊んだりできるだろうか?

ここまでで分かったように、次元はあるものの位置や変化を示すために必要となるパラメータの数を示しているものです。

そしてそのパラメータは常に空間だけを示すものではありません。

時間であったり、本ならページ数のように空間とは独立した値のときもあります。

なので超ひも理論のように、宇宙が10次元と言った場合でも、それは素粒子を構成するような存在(ストリング)まで表現しようとしたら、その位置などを計算するのに変数が10個必要になってしまった、というだけなのです。

そのため物理学者や数学者が、10次元や11次元の話をしたとき、彼らは何も複雑な空間を頭に思い描いているわけではありません。単に自分が考えている問題を数式にしたとき変数はいくつになるか? と考えているだけなのです。

そしてそれが4つ必要だなと思ったら4次元の問題と表現するし、10個必要だとなったら10次元の問題と表現しているだけなのです。

こうした理屈を理解すると4次元の迷路なんてものを作ることも可能になってきます。

これは普通の2次元の迷路を左右二つ並べてあるだけですが、右の迷路を進むと左の迷路の形が変化し、左の迷路を動くと右の迷路の形が変化するように作られています。

しかし、2つの迷路の形はそれぞれの迷路の位置ごとに関連づいていて、2つで1つの迷路です。自分の位置となる玉は二つの迷路にそれぞれ描かれていますが、実際は2次元+2次元という方法で4次元上の一つの位置を表現しています。

これは明治大学の先生が、学生時代に思いつきで作ったプログラムが元になっているそうですが、実際に人にプレイさせると、2つの迷路の関連性がだんだん理解できて、4次元の迷路としてゴールまでの道筋を見つけ出すことができるようになるといいます。

私たちの脳は、この3次元空間の世界に対応しているため、3次元以上の空間をイメージすることはできないようにできています。

しかし、2次元+2次元という形で位置を表現する迷路なら4次元の迷路も理解できてしまうのです。

このように4次元とか五次元というものを考えるときに、イメージできないものだからと難しく考える必要はありません。

位置が特定できればいいのだから、場合によっては次元を2つに分けてしまえば、ずっと理解しやすくなるのです。

※この記事は2020年12月公開の記事を再編集したものです。

参考文献

重力とは何か(幻冬舎新書)
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ライター

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

編集者

ナゾロジー 編集部