『ドラえもん』の最終回には、都市伝説的なうわさも多数ありました。実際に公式が発表した『ドラえもん』最終回には、複数の回が存在するのをご存知でしょうか。
「さようなら、ドラえもん」の回が収録された、てんとう虫コミックス『ドラえもん』第6巻 著:藤子・F・不二雄(小学館)
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事情により複数回あった「最終回」
9月3日はマンガ『ドラえもん』に登場する「ドラえもん」の誕生日です。ドジで怠け者な「のび太」との掛け合いがファンから人気を集め、いまも世界中で愛され続けています。
その『ドラえもん』には「最終回」にまつわる都市伝説が多くありました。例えば「ドラえもんの存在は、交通事故で植物状態になったのび太が見た夢」といったうわさ話を耳にした人もいるのではないでしょうか。
もちろんこれはデマで、生前に原作者の藤子・F・不二雄先生自身も「そんな突然で不幸な終わり方はしない」と否定しています。
『ドラえもん』が連載されていたのは学年別の学習雑誌「小学〇年生」だったため、学年が変わるタイミングで「ドラえもんとのび太の別れ」をテーマにした「最終回らしい最終回」が描かれました。そのため複数の「最終回」が存在します。
ひとつめの最終回が、1971年の「小学四年生」3月号に掲載された「ドラえもん未来へ帰る」の回です。
このエピソードでは、「時間観光旅行」で未来からやってくる観光客のマナーの悪さが問題視され、過去への渡航が禁止される法律ができてしまいます。それに伴い、ドラえもんも未来に帰らないといけなくなるという展開でした。
別れの際、ドラえもんは悲しみのあまりに絶叫します。そしてドラえもんがいなくなり、静かになった部屋で、のび太がしみじみドラえもんを思い出すという切ないラストシーンが描かれています。
続いて、ふたつめの最終回が1972年の「小学四年生」3月号に掲載された「ドラえもん未来へ帰る」の回です。
のび太がドラえもんに頼りきりな状況を心配する「セワシ」とドラえもんは、「ドラえもんは故障した」とウソをつき、未来に帰ろうとします。結局そのウソはのび太にバレますが、のび太は心配するふたりの提案を泣く泣く受け入れ、ドラえもんは未来へと帰っていきました。
そのラストシーンでは、努力するのび太の様子を、未来からドラえもんが応援するほほ笑ましい姿が描かれています。
それと一説によれば、藤子先生が最終回のつもりで描いたと言われているのが、1974年の「小学三年生」3月号に掲載された「さようなら、ドラえもん」の回です。
未来に帰ることになったドラえもんを心配させないよう、のび太は自力で問題を解決しようと奮闘します。ジャイアンに殴られても決してへこたれず、ジャイアンが根負けするまで殴られ続けました。
そこに現れたドラえもんに、ボロボロになったのび太は「かったよ、ぼく」「もう安心して(未来に)帰れるだろ」と誇らしげに語ります。
のび太を家まで連れ帰ったドラえもんは、涙を流しながらのび太の寝顔を見守り、彼が目を覚ましたときには、すでにドラえもんの姿はありませんでした。
ドラえもんが開けたままにしていったであろう机の引き出しを見つめるのび太の表情は晴れやかで、印象深いラストシーンです。
ちなみに「小学四年生」の1974年4月号には「帰ってきたドラえもん」の回が掲載され、ひみつ道具の「ウソ800」の効果により、再びドラえもんは戻ってきました。
このように未完の作品である『ドラえもん』には、さまざまな事情もあって、便宜上、複数の最終回が用意されました。
どのエピソードも、『ドラえもん』の本当の最終回だとしても不思議はない感動的なストーリーなので、未読の方はこの機会に一読してみてはいかがでしょうか。