TV放送から今年で半世紀を迎えた『グレートマジンガー』。大ヒット作『マジンガーZ』の後番組として満を持して制作された作品でした。しかし、その評価は人によって大きく異なります。その理由とは。
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『グレートマジンガー』第1話が独特の展開だったワケ
1974年9月8日からTV放送を開始したアニメ『グレートマジンガー』は、大ヒットした前作『マジンガーZ』と世界観を同じくする続編です。今年2024年は50周年のメモリアルイヤーとなりました。
TOKYO MXでは「誕生50周年記念」として、2024年9月3日から放送を開始、以降も火曜日19時半の時間帯で毎週放送される予定です。
このタイミングが奇跡的なのは、ほぼ本放送時と同じ時期に放送されるという点でしょうか。つまり当時の季節感に添って作品を楽しめるということです。加えて今年のカレンダーは50年前と同じなので、録画して日曜19時に観ることで当時の雰囲気を味わうこともできるでしょう。
前述したように、本作は前番組『マジンガーZ』の続編として制作されました。主役ロボ「グレートマジンガー」は、すでに『マジンガーZ』最終回でTV初お披露目を済ませています。そういう意味で、新番組というよりも人気シリーズの仕切り直しという側面を強く持った作品でした。
それゆえ第1話「大空の勇者 グレート・マジンガー」は、普通のロボットアニメ作品の第1話とだいぶ違った雰囲気のあるエピソードです。第1話にありがちな説明的台詞も少なく、キャラクター紹介もかなり端折った感じがするかもしれません。
なにしろ主役ロボであるグレートマジンガーはすでに前週、ひと仕事終えていて、前線で「戦闘獣」を指揮する敵幹部も『マジンガーZ』から引き続き登場している「ゴーゴン大公」でした。第1話の物語の中心も「ボス」の乗る「ボスボロット」や、「兜シロー」といった従来のレギュラーとなっています。
しかし、新鮮味がないかといえばそうではありません。『グレートマジンガー』のヒロインとなる「炎ジュン」が、第1話から印象的に描かれています。作中のボスと同じく、1話にしてひと目惚れしてしまった子供も多いヒロインでした。
また、本作の敵となる「ミケーネ帝国」の「七大将軍」が初登場しており、いきなり幹部が7人もいるという展開におどろいた子供もいたことでしょう。そして、これまでの敵母艦よりも巨大に描かれていた「万能要塞ミケロス」も第1話で初登場しました。
ラストは、グレートマジンガーの名前を呪うように連呼する「暗黒大将軍」たちでしめられているなど、独特の雰囲気を持った第1話といえ、当時の子供たちの心を鷲掴みにしたのでした。
こうして始まった『グレートマジンガー』は、しかし、その評価は人によってさまざまです。どうしてそのように意見が分かれる作品になったのでしょうか。
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当時のグレートマジンガーの人気度は?
本作品を評する際に、主人公「剣鉄也」をやり玉に挙げる声は、これまでもよく聞かれてきました。鉄也は身寄りがおらず、「兜剣造」によって育てられ、そしてグレートマジンガーのパイロットになるべく、厳しい訓練を日々こなしていたという設定です。
それゆえに「戦闘のプロ」ともいえる存在で、前作主人公「兜甲児」とは性格もかなり異なるタイプでした。これが影響してか、リアルタイムで甲児の活躍を見てきた子供たちには、鉄也が受け入れられなかった人も少なくなかったわけです。
もちろんすべての子供がというわけではありません。実際、筆者はどちらも同じくらい好きです。ところがファンというものは、対抗するキャラに対してはアンチになりやすく、そしてそれが作品の評価へと直結するわけです。
こうした気持ちの部分は、グレートマジンガーに対するマジンガーZでも同様でした。ダブルマジンガーのどちらが好きか、という論争は放送当時からあったものです。これも、もちろん甲乙つけがたく、「どちらも好き」という人もいました。
まったく別の作品なら論争もあまりないものですが、同じ作品世界を持っているがゆえのジレンマというところでしょうか。それでは、グレートマジンガーの人気は高くなかったのか、というと、そうではありません。当時の筆者の肌感覚でいえば前作と変わらないくらいの人気がありました。
実際、当時の筆者は、グレートマジンガーの超合金が売り切れで買えなかった思い出があります。玩具店のショーウインドーに飾られた見本品を売ってくれとせがんだことは、今でも忘れていません。
もっとも本作のセールスが好調でなかったのは確かなようです。1974年の「ポピー(現在のバンダイ)」の玩具売り上げで、『マジンガーZ』が1位だったのに対して、『グレートマジンガー』は4位だったと記録には残っていました。それに対してさまざまな考察があります。
ひとつは、マジンガーZとグレートマジンガーが似すぎているというものでした。つまり、お金を出す親から見ると「また同じものを買って」と思うから、という考察です。筆者的には納得いかない部分もありますが、確かに興味のない人から見たら同じものに見えるという点は否定できません。
むしろ筆者が支持する考察は、玩具的プレイバリューの低さです。つまり合体や変形がないことで、この点は時代背景を見ると納得できる点です。本作の半年前ほど前から放送されたアニメ『ゲッターロボ』を皮切りに、時代は合体または変形するロボが主流となりました。
実際、この翌年のロボットアニメではそれが顕著に現れています。ポピーは変形ロボとして『勇者ライディーン』、合体ロボとして『UFOロボ グレンダイザー』のオモチャを販売していました。
この『グレンダイザー』は『グレートマジンガー』の後番組です。当初はマジンガーシリーズ第3弾『ゴッド・マジンガー』の予定だったところを、オモチャの売れ行きが好調ではなかったことから、1975年夏公開の劇場映画『宇宙円盤大戦争』をベースとした作品に変更されたのでした。
そう考えると、ロボットアニメブームを作った『マジンガーZ』ではあるものの、その直系である『グレートマジンガー』では、新たな時代の波に乗れなかったということかもしれません。後の知名度や人気から考えると、複雑な思いに駆られる人も多いことでしょう。
しかし、当時の憂さを晴らすかのように、50周年の今年になって『グレートマジンガー』の新しいオモチャが次々とアナウンスされています。「超合金魂」(BANDAI SPIRITS)のラインナップで、「GX-110 暗黒大将軍」がすでに発売されており、来年2月には同じく超合金魂で「GX-114 ヤヌス侯爵 & GX-12R ビューナスA」が発売予定です。共に超合金としては初の立体化となりました。
放送当時、オモチャの売れ行きが今ひとつといわれた『グレートマジンガー』ですが、半世紀ほど経った現在で初の商品化が連発するというのも、時代の皮肉を感じる出来事かもしれません。