物質第4の状態プラズマとは何なのか? / Credit:canva

「プラズマ」という言葉を聞くと、プラズマテレビやプラズマクラスターなどの家庭用機器を思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかし、科学の世界のプラズマとは、私たちの日常生活とは少し異なる存在です。プラズマは、固体、液体、気体のいずれでもない物質の第4の状態を指しています。

プラズマは、物質が非常に高温になったとき、気体の分子だけでなく原子までがバラバラに分解され、電子と陽イオンに分かれて激しく動き回っている状態を指します。

これにより、プラズマは電気を通し、電磁場の影響を強く受ける特性を持つのです。

自然界では、太陽や他の恒星、オーロラ、雷などがプラズマの代表例です。また、蛍光灯やネオン管の中でもプラズマが利用されています。

今回はそんなプラズマを扱うプラズマ物理学が、物理学の一分野として特別な扱いを受けるようになった経緯、その歴史と重要性について解説していきます。

目次

プラズマの発見気体でも液体でも固体でもない!物質の第4の状態「プラズマ」核融合発電から最新医療までプラズマが重要になっている

プラズマの発見


クルックス管(真空放電管)電極をオンにすることで管内に残った僅かなガスが電離してプラズマとなる。 / Credit:commons.wikimedia

プラズマの概念自体の発見は、19世紀後半に遡ります。

1879年、イギリスの物理学者ウィリアム・クルックス(William Crookes)は、初期の真空放電管の中で光るガスを観察しました。

クルックスはこのガスを「放電気体」と呼びましたが、これは後に「プラズマ」として知られるようになる現象の初期観察でした 。

プラズマという言葉は、1928年にアーヴィング・ラングミュア(Irving Langmuir)によって初めて使用されました。


詳細 アーヴィング・ラングミュア(1923) / Credit:commons.wikimedia

ラングミュアは真空管内のガス放電実験中に、この第4の物質状態を発見し「プラズマ」と名付けたのです。これはギリシャ語で「形成するもの」を意味します。

そして彼はプラズマが電子とイオンが自由に動く電離ガスであり、非常に特殊な物理的性質を示すことを明らかにしたのです。

では、この物質の第4の状態とはなんなのでしょう?

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気体でも液体でも固体でもない!物質の第4の状態「プラズマ」

私たちは小学校の理科で、この世の物質は温度によって「気体」「液体」「固体」のいずれかの状態を取ると教わります。


物質の三態 / Credit:depositphotos

しかし、ラングミュアは、この3つの状態に収まらない第4の状態としてプラズマを発見したのです。

最初発見は真空管の中でしたが、プラズマは通常、物質を非常に高温に加熱されたとき、気体よりもさらに上位のエネルギー状態として現れます。

通常高温の物質は分子がバラバラに飛び交って気体になりますが、さらに高温の状態になると、分子どころではなく原子を構成する電子と原子核(陽イオン)がバラバラになってしまうのです。

つまりプラズマは、原子を形作るための電気的な結びつきの力よりも、熱運動量の方が上回ってしまい、原子の基本的な構造を保てなくなってしまった状態なのです。

このバラバラになった電子が原子のもとに戻ると、電子は持っていた余剰エネルギーを光として放出します。そのためプラズマは自己発光する性質があり、これがオーロラやネオン管の光の正体です。

またプラズマは電離したガスであるため、電気や磁場の影響を受けやすい性質を持ちます。

例えば最近良く耳にする太陽嵐の原因はプラズマです。

太陽の中心部は温度が1600万度に達し、水素がプラズマ状態になっています。これが太陽の大気(コロナ)となって太陽の周囲を覆っているのですが、磁場の乱れで太陽表面に激しい爆発(フレア)が起きると、この磁場の影響で太陽のプラズマが吹き飛ばされ、太陽嵐となって宇宙空間を吹き荒れます。


太陽表面の磁力線に沿って移動するプラズマ / Credit: University of Central Lancashire

太陽嵐では太陽の電離したガスが激しく降り注ぐため、地球上の通信を乱したり、電子機器を破壊してしまうのです。

このようにプラズマは色々と特殊な性質を持った物質の状態です。しかし、宇宙ではもっともありふれた物質の状態の1つであり、99%以上の物質がプラズマ状態だとされています。

太陽や星々、さらには地球のオーロラや雷もプラズマです。このため、プラズマを理解することは、宇宙や自然現象を理解するために不可欠です。また、核融合研究や宇宙探査、さらには先進的な材料科学にもプラズマの知識は不可欠です。

そのため物理学ではプラズマ自体を扱うプラズマ物理学という分野が登場することになったのです。

ではプラズマの理解は、現代の私たちの生活にどの様に役立っているのでしょうか?