マンガ作品のアニメ化には原作改変が付きものです。さらに長編の原作に対し、決められた話数で放送をしないといけないため、原作の大事なパートも容赦なくカットされることもあります。なかには、あまりにもかけ足すぎる展開になったために、視聴者を置き去りにして物議をかもした作品もありました。



「からくりサーカス Blu-ray BOX vol.1」(バップ) (C)藤田和日郎・小学館/ツインエンジン

【画像】え…っ?「本編にこの場面はありません」 こちらがみんな泣いた『からくりサーカス』最終巻のエモすぎる表紙です

原作の人気パートや大幅なカットをした結果、「よく分からない」

 マンガのアニメ化において、たびたび物議をかもすのが「原作改変」です。例えば巻数の多い原作であれば、決められたクールや話数のなかで完結まで描き切るのは、アニメ制作陣にとって大きな課題といえるでしょう。

 そういった条件をクリアするために本来のストーリーを「省略」するのは、手法のひとつではあるものの、結果的に大事なパートがなくなったことにより、「詰め込みすぎてよく分からなかった」という感想を抱く人もいます。

 たとえば、藤田和日郎先生の名作マンガ『からくりサーカス』のアニメ版も、省略によって分かりにくい箇所が多い作品といわれています。

 同作は父の「貞義」から莫大な遺産を受け継ぎ、命を狙われることになった少年の「才賀勝」と、勝を助けるも後に記憶喪失となって離れ離れになった拳法家の青年「加藤鳴海」の視点で描かれ、やがてひとつに収束していく物語です。原作も壮大な内容なうえに話が複雑で、何度も読み返さないと理解が追いつかないという声もあるなかで、アニメ版は全43巻425話分の原作を36話でまとめあげています。

 原作のボリュームとアニメの話数を見る限りでも容易に想像できますが、アニメは本来のストーリーから多くの場面がカットされることになりました。

 なかでも、勝の成長が描かれる重要なパート「黒賀村編」が丸々カットされたことに対し、ファンからは「本当にありえない。面白さが半減したまである」「分かりづらさを助長した原因になった」「シルベストリのエピソード見たかったのに」といった不満の声があがっています。

 ほかにも全体を通して不満の声はあるものの、ストーリーの流れ自体はカットされても原作に忠実だったため、「中盤からラストまでずっと涙が止まらなかった」「いろいろ言われている作品だけど、自分は最高なアニメだと思し、ラストは感動もの」など、好評のレビューも少なくありませんでした。

 また、尺の都合で大幅にカットされた『約束のネバーランド』(原作:白井カイウ/作画:出水ぽすか)のアニメ版も、物議をかもした作品です孤児院で育てられる主人公「エマ」と仲間が、鬼のための食用児として育てられる過酷な運命に立ち向かう物語で、マンガは世界累計発行部数が4200万部を突破するほどの大人気作でした。

 アニメの第1期は原作に忠実に描かれて好評を博したものの、問題の第2期では原作で人気のあるパート「GP編」がカットされてしまい、放送後に炎上するほど批判的な声がネット上にあふれます。その2期は原作6巻から最終巻の20巻までを全11話に詰め込んでおり、全体的にかけ足で物語が進行しまったのに加え、最終話は大幅に改変されています。

『約束のネバーランド』2期に対し、「いい作品なのにもったいなさすぎる」「時間をかけていいから2期だけ作り直してほしい」などの声が続出しました。「これはこれでアリ」と評価する声はあるにはあるものの、全体的に否にあたる意見が多いようです。



『覇穹 封神演義』キービジュアル (C)安能務・藤崎竜/集英社・「覇穹 封神演義」製作委員会

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2度目のアニメ化だったのに原作改変とキャラのカットで評価はイマイチ

 詰め込みすぎが話題になったアニメといえば、『覇穹 封神演義』も外せないでしょう。原作のマンガ『封神演義』(作:藤崎竜)は、1999年放送の『仙界伝 封神演義』、そして、2018年放送のリメイク版『覇穹 封神演義』(以下、覇穹)と2度にわたってアニメ化されています。

 1作目は、中国の古典『封神演義』を大胆にアレンジした人気作のアニメ化ということで期待されたものの、マンガが連載中だったこともあって、原作の途中で終了してしまいました。その後の原作が完結してから作られたアニメ『覇穹』は、最後まで描かれるだろうと注目されましたが、フタを開けてみれば、中盤のエピソードである「仙界大戦」を中心に制作されたためか、序盤からの大幅なストーリー改変やキャラのカットが加えられます。

 やはり『覇穹』も厳しいスケジュールだったようで、原作が全23巻に対して放送されたのは23話でした。1話あたり1巻のペースで放送しなければ、描き切れないなかで、『覇穹』は「仙界大戦を中心に描く」「ストーリー改変とカット」という手段に舵を切ったのです。

 さらにアニメは原作と違う時系列での構成だったのも相まって、分かりにくさを助長してしまうことになり、視聴者からは「正直、ついていけなかった」「展開が強引すぎるし、ラストも意味不明だった」など不満の声が出ています。

 せっかくリメイクした作品にも批判の声があがってしまうのは、残念な結果と言わざるを得ません。とはいえ、2018年に原作完結後の太公望の物語を描いた『封神演義外伝 ~ 仙界導書 ~』が発表されたのは、『覇穹』のおかげともいわれています。アニメをきっかけに原作の続編が出たのなら、決して『覇穹』の存在は無駄ではなかったのでしょう。