マンガ作品において主要キャラが死亡してしまう展開は、読者にとってショックが大きいものです。さらに、物語の要である主人公の死のインパクトの大きさは、決して忘れることはないでしょう。いまだに語り草となっている「主人公死亡」展開が描かれたマンガには、どのような作品が当てはまるのでしょうか。
『ベルサイユのばら』1巻(フェアベル)
【画像】え…っ?う、美しい…こちらが原作では見られないオスカルとアンドレの「ウエディング姿」です(3枚)
歴史になぞられた悲しい最期、そして、報われなかった正統派主人公の死
マンガを読み進めるなかで、作中の登場キャラに感情移入することは、よくあることで、思い入れが強くなったところでそのキャラが死亡すれば、みんな悲しくなるでしょう。いちばん肝心な「主人公」が死亡するマンガも多く、数々の作品が読者にショックを与えてきました。
1972年から「週刊マーガレット」(集英社)で連載された少女マンガ『ベルサイユのばら』(作:池田理代子)も、作中で主人公が死亡した作品として有名です。同作はフランス革命を背景に、武門の家を継ぐため、男として育てられた主人公「オスカル」と、王妃「マリー・アントワネット」、青年貴族「フェルゼン」、オスカルとともに育った「アンドレ」を中心とする人間ドラマが描かれています。
女性でありながら男としての教育を受けたオスカルは、マリー・アントワネットに仕え、フランス衛兵隊のベルサイユ常駐部隊長にまで昇りつめるも、フランス革命が勃発したことをきっかけに、貴族側ではなく民衆の一員となって戦いに加わりました。
そして、バスティーユ牢獄に攻め入り、陥落まであと少しとなったところで、相手の兵による銃弾がオスカルに当たり、その後、「フ…ランス……」「ばんざ…い…!」という言葉とともに息絶えてしまうのです。それまでにも、オスカルとの恋を成就させたアンドレも、オスカルをかばって被弾したことで絶命しており、アンドレを思いながら息絶えるオスカルの姿に、頬を濡らした読者も少なくないでしょう。
2025年新春に劇場版アニメ『ベルサイユのばら』の公開が控え、同作に関する話題が増えており、勇敢にも散っていったオスカルに対しもネット上で「オスカルの死は本当にショックでいまだに忘れられない」「初めてマンガを読んだときは感情を根こそぎ持っていかれた感覚」など、懐かしむ声があがっていました。
また、作中で壮絶な死が描かれた主人公といえば、マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』(作:荒木飛呂彦)の第1部「ファントムブラッド」の主人公「ジョナサン・ジョースター(ジョジョ)」も外せないでしょう。
第1部は19世紀末のイギリスが舞台で、貴族の「ジョージ・ジョースター卿」が恩人の息子「ディオ・ブランドー」を養子にするも、ディオは本当の息子であるジョナサンを退け、財産の横取りを計画して、謎の「石仮面」でジョナサンを殺そうとする、という物語です。
宿敵であるディオは、恐るべき力を持っていた石仮面によって不死身の吸血鬼と化し、ジョナサンと対峙しました。ジョナサンは吸血鬼に効果がある、太陽と同じ波長の生命エネルギーを生み出す呼吸「波紋法」を会得し、多くの犠牲を払いながらもディオとの決戦に勝利します。しかし、不死身のディオは首だけの姿になりながらも生き延びて、ジョナサンの肉体を乗っ取ろうと再び彼の目の前に姿を現しました。
ジョナサンは「エリナ」との新婚旅行のためにアメリカ行きの船に乗っており、彼は残酷にもエリナの目の前で致命傷を負わされます。その後、ジョナサンはエリナを逃がして船ごとディオと自爆したのですが、悲しいことに時間をおいた第3部で、ディオに首から下の身体を乗っ取られていたことが判明しました。
その無念は子孫の「ジョセフ」「承太郎」たちが死闘の末に晴らしますが、正義感にあふれる正統派主人公のジョナサンの死は、多くの読者に衝撃を与え、今も語り継がれています。
『侍ジャイアンツ(新装版)』第1巻(ゴマブックス)
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スポーツマンガで? 「立ったまま死亡」で衝撃を与えた主人公
あともう少しでハッピーエンドを迎えるタイミングで、まさかの主人公死亡が描かれた作品といえば、野球マンガ『侍ジャイアンツ』(作画:井上コオ/原作:梶原一騎)でしょう。読売巨人軍に入団した主人公の「番場蛮」が、常人では到底投げられない、あらゆる魔球を駆使して投手として活躍する姿が描かれた作品です。
ラストでは優勝がかかった中日戦、あとひとりを打ち取れば勝利が確定する場面で、番場はライバルであるバッターの「大砲万作」と対峙します。すでに身体を酷使したことで限界に近い状態の番場は、後先を考えずに、体に負担がかかる「分身魔球」を投げて、見事に大砲を打ち取ります。
そして巨人軍は優勝を勝ち取り、ハッピーエンドを迎えるかと思いきや、まだ19歳の番場は無理がたたって、マウンドに立ったまま心臓麻痺によって絶命していたのでした。とても死んだ人とは思えないような凛々しい表情の立ち姿が忘れられない読者が多いようで、「まさかの死に方だったけど、強烈なラストで一生記憶に残ると思う」「『北斗の拳』のラオウと並び立つカッコいいラスト」などの声があがっていました。
ちなみにアニメ版のラストは改変されており、最後は大リーグを代表する大打者レジー・ジャクソンをモデルにした「ロジー・ジャックス」と対峙して、数々の魔球をバットに当てられるも、最後の最後で思いついた「ミラクル魔球」を投げ、打ち取ることに成功します。そして、マンガのラストと違い、番場は死ぬことなく、勝利に喜ぶ姿が描かれたのでした。