ロボットアニメ史上、もっとも「ナンパ野郎」な主人公のひとりは、『オーガス』の「桂木桂」といって差し支えないでしょう。ロボアニメなのにやたらラブシーンが差し挟まれ、しかもそれが怒涛のスピードで展開していきます。
左からモーム、ミムジィ、桂。『超時空世紀オーガス』サウンドトラック(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
【画像】え…!ガチャガチャ遊びたい! こちらが四段変形を完全再現した「オーガス」です(6枚)
第1話冒頭からラブシーン…ロボアニメですよね?
1983年から1984年にかけてTV放送されたアニメ『超時空世紀オーガス』にはしばしば濡れ場が登場し、当時の子供たちに衝撃を与えていました。作中に登場したそれらのいくつかを振り返り、ストーリーにどんな影響を与えたのかを解説します。
『超時空世紀オーガス』と聞いて思い出すのが、第1話で唐突に登場した濡れ場という方は多いのではないでしょうか。ケーシー・ランキンが歌うオープニングテーマの「漂流~スカイハリケーン~」のメロディラインと、エンディングテーマの「心はジプシー」の圧倒的なインパクトも忘れられないものはありますが、メロドラマ並みの濡れ場がふんだんに盛りこまれた本編もまた、当時としては印象深いものでした。
さて、『超時空世紀オーガス』とはどんな作品だったのでしょうか。
主人公である「桂木桂(かつらぎ けい)」は、親友兼ライバルの「オルソン・D・ヴェルヌ」たちとともに腕を競い合う天才パイロットでしたが、女性関係に節操がない男でもありました。ある日、交際していた女性「ティナ」とベッドをともにした桂は、直後に発生した戦闘で撤退を拒否、効果範囲内の対象を別の時空へと吹き飛ばす次元兵器「時空振動弾」を起動し、時空を混乱させてしまいます。
20年後の世界に飛ばされた桂は、地球人によく似た人類「エマーン人」の隊商に拾われるものの、混乱した時空修復の鍵となる「特異点」とみなされ、エマーンと敵対する「チラム」など、各勢力による争奪戦が繰り広げられることとなるのでした。
改めて第1話「時空破壊!!」を観てみましたが、オープニング終了直後、いきなり濃厚なキスシーンから始まります。しかも夜這いで、気付いた父親が銃を持って駆けつけてくる始末でした。この辺りの描写は当時の夜や深夜に放送されていた西部劇映画の影響が強そうです。『超時空要塞マクロス』が終わり、『超時空世紀オーガス』という新番組が始まると知り、TVの前で放送を待っていた少年たちには、だいぶ刺激が強いシーンでしょう。
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ご安心ください、第2話以降もラブシーンの連続です
時空転移後、エマーン人の隊商と行動をともにすることとなった桂は、早速17歳の少女「ミムジィ・ラース」と急速に接近していきます。この手の早さは、ロボットアニメの主人公としては過去に類を見ません。
多くの戦いと人間関係の変遷を経て、桂とミムジィはいつしか互いを男女として意識するようになります。特にエマーン人女性の妊娠可能な期間は17歳までで、それを越えると数回の高熱を発して生殖能力を失うといい、そしてミムジィは作中ですでに高熱を発して倒れていました。もたもたしていれば子供を作れなくなる状況に置かれていたのも、両者の関係を加速させた原因となるでしょう。
このふたりが完全に結ばれたのが31話「チルドレン」となります。この回でもやはり濡れ場は最初で、オープニング終了後しばらくしてから始まります。流石に下半身こそ見えませんが上半身は両者ガッツリと裸で、そこそこ時間も長めに取られています。途中、エマーン人に生えている触手が「ピーン」と張って、すぐに「ヘナヘナ」と萎れてしまうのも非常にエロティックです。
しかもラブシーンを終えた後は、しっかりミムジィのお風呂シーンも追加され、「ちょっと下半身成分が足りないんじゃないかな?」と考えた方も納得の連携を見せてくれます。そのお風呂シーンの直後には妊娠が発覚しており、このスピード感は半端ではありません。
桂とミムジィ以外にも、人造人間のモームをはじめ女性キャラクターの半裸やお風呂シーンがひんぱんに登場する作品でもあった『オーガス』を、密かに親にバレないように観ていた人もいたのではないでしょうか。
なぜ、ロボットアニメにこれほど濡れ場を多く入れたのでしょうか。その理由は定かではないものの、当時のインタビューを紐解くと、意図的に濡れ場を多くしていたという証言があります。関東地方では前番組『超時空要塞マクロス』に引き続き、日曜日の14時からという特殊な時間帯で放送されていた『オーガス』には、「大人」を引き付ける要素が必要と考えられていたのかもしれません。