【山根視来の MLS挑戦記/第3回】大迫力のLAダービーと衝撃的だったテキサスの環境

 世界各地には様々なダービーが存在しますが、MLSにも注目を浴びる一戦があります。その名も“ロサンゼルスダービー”。

 僕が所属するLAギャラクシーとLAFC(オリビエ・ジルーやウーゴ・ロリスらが所属)のダービーマッチですね。先日、インデペンデンスデイ、いわゆるアメリカの独立記念日に行なわれ、スタンドには7万人を超える観衆が!! 

 あれだけ多くのお客さんの前でプレーをしたのは初めてでしたし、試合前にはたくさんの花火が打ち上げられ、頭上を飛行機が飛んでいく。ド迫力のセレモニーなどお祭り騒ぎで、雰囲気は抜群でした。

 もっとも個人的には想像以上に冷静にゲームに入ることができました。というのも、日本のカップ戦の決勝などと比べるとスタジアムの空気が異なっていたからです。日本ではサポーターの方々が常に声援を送ってくれますが、MLSではたまに静かだなと感じる瞬間がある。後半のイケイケの展開になると一気にスタンドは沸くのですが、変にテンションが上がり過ぎずに試合に臨めました。

 ただ結果は首位争いをするライバルに1-2の敗戦。特に前半は勇気が足りずもったいない試合をしてしまいました。0-2で折り返した後半は、監督の叱咤激励を受け、果敢に攻め、最近連係が深まってきたガブリエル・ペックのゴールで、1点を返すことができましたが…。この悔しさを次につなげたいですね。
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 そして7月には忘れられないゲームがもうひとつ。テキサスでのダラス戦は衝撃的で、MLSの洗礼を浴びました。僕らが過ごすLAは快適そのもので、日射しは強いですが、夏でも27、28℃までしか上がらず、湿度も低いので日陰に入れば涼しいほど。散歩をしていても汗をかきません。

 一方でテキサスは日本並みの暑さで、僕らは前日入りしたのですが、飛行機トラブルで出発が遅れるなど着いたのは夜。そして時差もあり…。次の日、試合と言われても本当に身体が動かないんです。あんな経験は初めてでした。身体が機能性を失い、どこが攣りかけているのかも分からないような状態。

 そういう厳しい環境にも強いタイプと自負していましたが、さすがに次元が違いました。数日前から現地に入って対策をできれば良いと思うのですが、連戦を戦うリーグ戦では、こういうシチュエーションをどう乗り切るか、良い経験になりました。

 それにしてもMLSはなかなかタフなリーグだと改めて実感しています。中2日と中3日で3試合を戦って1週間空き、また同じスパンを繰り返す日々を5月頃から続けています。さらに飛行機移動や時差も覆いかぶさってくる。疲労の蓄積は半端ないです。

 Jリーグ時代には日本代表のデビュー戦を含め中2日や中3日での“7連戦”にフル出場した経験もありますが、当時に比べてもキツイですね。様々な要因が絡むハードなリーグは、賢く戦う術を持つことが安定した戦いをするには必要だと感じています。時間帯や展開によって同じことを共有しながら試合を進めていけるようになっていきたいです。

 しかもこの期間はメンバーを入れ替えられるようなカップ戦もないので、より細かくバランスを意識しながらプレーしていきたいですね。
 
 そしてもうひとつアメリカに来て英語を勉強しているなかで気付いたことも。僕は中学生レベルにも達していない英語力で渡米しましたが、最近は聞き取れる言葉も増えました。それこそ英語のノートを作り、書いて覚えたり、監督が良く使う言葉をメモして、理解を深めようとしています。学生時代にもっと真面目にやっておけば良かったと後悔しつつ、人生で一番勉強をしています(笑)。

 そして英語を学ぶうえでは国語が必要だとこの歳で気付いたんです。僕は学生時代、問題の意図を読み解くことが得意ではありませんでしたが、どんなことでもこの文章は何を伝えたいのか、またサッカーにおいてもピッチ上で教えてもらうことの真意を掴むのは本当に大事なことです。

 それこそ昔の僕のようにコーチが話してくれていることを理解し切れずにいるのはもったいない。だからこそアメリカに来た身として言わせてください。英語を学んでいる皆さん、国語の勉強と読書はしっかりやっておきましょう!!

※原稿はサッカーダイジェスト9月号(8月8日発売号)から転載

■プロフィール
やまね・みき/1993年12月22日生まれ、神奈川県出身。178㌢・72㌔。あざみ野F.C.―東京Vジュニア―東京VJrユースーウィザス高―桐蔭横浜大―湘南―川崎―ロサンゼルス・ギャラクシー。J1通算196試合・14得点。J2通算37試合・0得点。日本代表通算16試合・2得点。粘り強い守備と“なぜそこに?”という絶妙なポジショニングで相手を惑わし、得点も奪う右SB。

構成●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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