視聴率が取れなくても、WOWOWがパラアスリートのドキュメンタリー番組『WHO I AM』を作り続ける理由

WOWOW独自でスポーツ大会を開催

今ではWOWOWは、番組から派生した性別、年齢、国籍、障害の有無などに関係なくスポーツを楽しむ大会「ノーバリアゲームズ」を開催している。

これは、『WHO I AM』シリーズで放送されたイタリアの車いすフェンシングの金メダリストであるベアトリーチェ・ヴィオとその両親が運営する団体「art4sport」が主催するスポーツイベントに着想を得たものだ。

大会では、借り物競走から大玉転がしなど、誰でも参加できる競技でみんなでスポーツを楽しむことを最も優先している。

田中氏は、その意義をこう話す。

「WOWOWとしては、東京オリンピック・パラリンピックが決まって『何かしないと』と思って始めたのが『WHO  I  AM』だったわけで、その意味では邪(よこしま)な想いもあったわけだけど、でも制作者の作った映像には強い力があった。

そこからいろんな企業や団体が東京パラリンピックに向けて何かしたいとなった。じゃあ、イベントをやりましょうということになり、ノーバリアゲームズにつながったわけです。

今年3月の高知大会では自閉症や発達障害の子どももみんな楽しんでくれた。それを見て、参加してくれたアスリートたちがボロボロ泣いているわけです。来年も高知でやってほしいとも言われて、そういう活動が今、大切なんだと思うんです」

パラスポーツには、一般のスポーツとは異なる魅力があると田中氏は言う。その本質を伝えることが、テレビマンの仕事であり、面白さであると。日本テレビで名だたるビッグスポーツイベントの中継で手腕を発揮してきた彼が、パラスポーツにのめり込むようになったのは、2008年にまでさかのぼることになる。

第2回では、スポーツ放送のスペシャリストであるWOWOW会長、田中晃氏にパラスポーツへの思いを聞く。

写真/越智貴雄[カンパラプレス]・ 文/西岡千史