W杯ベスト8の目標に向け、アジア予選は逆算した取り組みが必要。勝つことよりもどう勝つかが重要だ【コラム】

 森保ジャパンは、2026年W杯アジア最終予選を戦う。8大会連続8度目の本大会出場に向け、「負けられない」戦いが続くだろう。もっとも、今回は全体の出場チームが増えたことによって、アジア出場枠は4.5か国から8.5か国と大幅に拡大し、かつての切実さはない。

「予選突破は当たり前」とは言わないが、「アジアは厳しい」も今や的外れだろう。日本人選手の多くは、ヨーロッパの最前線で活躍。今や違うフェーズに入っており、アジアで勝てない場合、それは監督を含めた首脳陣の問題だ。

 率直に言って、この条件で枠を勝ち取れないなら、単にW杯に出る資格がない。テレビは「負けられない戦い」と煽るのだろうが、勝つことよりもどう勝つか、が重要だ。

「W杯ベスト8」

 その目標に向け、逆算した取り組みが必要となる。ただ、そこでアジアで戦う難しさがある。世界との戦いに向け、アジアは必ずしも鍛錬にならない。客観的に見て、相手が弱すぎる。

 実力差があっても、一発に沈むことはある。今年のアジアカップはいい例だろう。イラクに敗れ、イランにも黒星を喫した。サッカーはボールゲームの中で最も波乱が起こるスポーツである。油断は大敵で、それは戦いの中で忘れてはならないが…。

 アジアからW杯で戦いは大きく変わる。アジアの国々が日本に挑んでくる戦い方は、“弱者の兵法”の堅守カウンターと言える。世界では自分たちが優位に戦い、互角にぶつかり合うのだ。

 そして根本的な問題は、日本自体が世界で戦い方を変えてしまう点である。
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 カタールW杯では、弱者の兵法が功を奏した。しつこく守ってのカウンターで、ドイツ、スペインを下している。しかし、限界があった。コスタリカにはむしろ守り切られたし、結局、クロアチアには勝ち切れず、悲願のベスト8に進めていない。

 日本がW杯で弱者の兵法に変更するなら、世界では道半ばで返り討ちに遭うだけだ。

 アジアで切磋琢磨するのは難しい。しかし、そこで作った攻撃の形は捨てる必要もなく、W杯本大会でも同じ戦いを継続すべきだろう。さもなければ、W杯でベスト8には進めない。

 過去を振り返ると、日本はPK戦の結果次第でベスト8に勝ち進めた。どう転んでもおかしくはなかった。それで「PKを練習すべき」などというへんてこな論争も起きたが…。

 PKという運にかけるべきなのか?

 自分たちがもっと長くボールを持ち、戦いを有利にし、得点機会を増やし、必然で勝つ――。その戦いを構築するために、予選を懸けて全力を投じるべきだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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