すでに各地で閉店ラッシュがはじまっているイトーヨーカドーは、2026年2月までに全国で33店舗が閉鎖される。地元住民からは今までの感謝とともに悲しみの声があがっている。そんな中、「今ある日本国内のイトーヨーカドーに全部行く」という活動をしている人物に話を聞いた。
イトーヨーカドーが閉店ラッシュ 最盛期の半分に
今回の閉店ラッシュの中でもとりわけ話題になったのは、8月18日の神奈川県横浜市・綱島店の閉店だ。閉店時には多くの人が訪れて、まるで野外音楽フェスのように人であふれることに。
店長がでてきて最後の挨拶をし、店のシャッターが降りていく瞬間には拍手が巻き起こり、「ありがとう!」という声があちこちからあがった。
綱島店の閉店の様子はSNSで大きくバズったが、これほどの反響ではないにしろ、各地のヨーカドーでも閉店の際には、店長や従業員の最後の挨拶を見ようと多くの人が集まり、地域住民たちが店に感謝の気持ちを伝えている。
この反響を受けて、ネット上では〈こんなに愛されてるヨーカドー見たことない〉〈なんでつぶれちゃうの。みんな好きなのに〉といった声があがっているが、閉店の理由はやはり経営不振。株式会社イトーヨーカ堂は2024年2月期まで4期連続で赤字が続いている。そこで構造改革の一環として、全国で大規模な閉店ラッシュに踏み切ったのだ。
2016年2月末の時点では全国で182店舗あり、その街の中心として住民の生活を支えていたヨーカドーだが、2026年2月までの閉店によって、店舗数は93店舗に削減される予定。
子どものころにお世話になった思い出のデパートがなくなってしまうことを寂しく感じる人は多いだろう。そんな中、「今ある日本国内のイトーヨーカドーに全部行く」をテーマに、全国のヨーカドーをめぐる旅をするという変わった企画に挑戦している、まのさん(@This__is__Japan)に話を聞いた。
そもそもなぜ、この企画を思い立ったのだろう。
「実は私が生まれ育った地域にはヨーカドーがなく、隣町にある店舗に年に1回行くか行かないかで、ほとんど利用していませんでした。ところが就職を機に関東へ移り住み、最寄り駅近くにあるヨーカドーを利用しているうちに愛着が湧き、旅行先でもヨーカドーを見かけると、欠かさずに訪れるようになりました。
そんな中で昨年、『ヨーカドーを33店舗閉鎖する』というニュースを見て、この企画を思い立ちました。 “今しか見ることのできない景色を見たい!”という思いと、“ヨーカドーのよさを知ってほしい”、“今はヨーカドーがない地域にいる方にも懐かしんでほしい”という思いが生まれたのです」(まのさん、以下同)
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ヨーカドーの撤退で過疎化してしまった駅も
まのさんがこの企画を発案したのは昨年の10月22日だが、それまでにも全国のヨーカドーを訪れており、閉店した店舗も含めて、これまでに121店舗ものヨーカドーを回ってきたという。そんな中で、特に印象に残っている店舗はどこなのだろうか。
「残念ながら9月29日に閉店することが決まってしまった、青森県の弘前店が強く印象に残っています。こちらは現在営業している店舗の中では東北最古のヨーカドーで、約48年もの歴史があります。
地下を含めて9フロア、シースルーエレベーターが2基という出立ちは、まさにデパートといえる規模感で、東北地方における旗艦店のような役割だったのではないかと推測します。何度か訪れましたが平日でも賑わっており、撤退という決断はもったいない気もしてしまいますね」
いくら経営不振による撤退といえど、現在も多くのヨーカドーがその街の重要なインフラになっていることは疑いようがない。今年5月に福島県にあるヨーカドー福島店が撤退したところ、店舗があった福島駅西口の歩行者の通行量は3割以上も減少し、周辺の店舗の売り上げも減ってしまったと発表されている。
「閉業間際の各店舗のいくつかでは、開店当初のチラシやフロアガイド、新聞記事を展示していました。その中には『○日後に開店』という記事が当時の新聞の一面を飾っているものもあり、開店時はどれだけの人が楽しみにしていたのか、計り知れない期待の大きさを感じました。
しかしヨーカドー自体、新規開店するということをもう4年しておらず、私も開店に立ち会ったことはありません。総合スーパーのような業態はもう難しいかもしれませんが、何らかの形で新規開店をしてほしいと願うばかりです」
多くの人に期待されて開店し、その街のインフラとして地元住民の生活を支えてきたヨーカドー。最後に、各店舗の閉店時の店長の挨拶の中で、まのさんが強く印象に残っているものを聞いた。