有村智恵プロの連載第四弾。松山英樹選手の銅メダル獲得に沸いたパリ五輪、日本女子代表は惜しくもメダル獲得を逃しましたが、4年後のロス五輪では大いに期待できる理由を語っていただきました。
ロス五輪のコースは日本人向き、松山選手との夢のペアマッチも!?
こんにちは、プロゴルファーの有村智恵です。パリ五輪での松山英樹プロの銅メダル獲得、興奮しましたね!女子の山下美夢有選手も本当に惜しかった。選手たちが、普段のトーナメントと違って上位3人に入らなければ意味がないと考えてプレーしていることで、いつも以上に1打に重圧がかかっているように見えましたね。見ている方はとても楽しませて頂きましたが、プレーしている選手たちは本当に大変だったろうなと思います。
それにしてもコースが難しそうでした。ティーショットでは片側が池などのハザードがあるホールが多いうえに、ある距離で止めておかないと次が狙いずらくなっていたりと神経を使うホールばかりでした。ラフも男子の試合後に短くしてセッティングに違いは出したようですが、今回の芝は短く刈ってもすっぽりと埋まってしまってパワーがない選手はまともに飛距離を出せなかったようです。グリーンは比較的素直に見えましたが、グリーン周りのアンジュレーションはかなりあって、ショートもだめ、オーバーしても池があったりと、高い球でピンポイントに狙っていかないと寄らないどころかグリーンにすら止まらないようなホールが多かったです。
通常のトーナメントであればコースマネージメントをして、自分のペースで攻めていけるのでまだ良いのですが、今回はオリンピックということで全ての選手がメダルを狙っていました。ですから、守りたいのに攻めなければならないジレンマに選手は苦しめられていました。それだけに、飛距離やパワーはあまりない山下美優有選手のメダル争いは本当にすごいと思います。長いクラブはセーフティーに、短いクラブでは彼女の持ち味である縦距離を合わせる上手さで見事に戦っていました。今回のコースのお手本のようなプレーでしたし、アメリカツアー参戦時に世界の壁を感じてしまっていた私から見ても、こういう風に世界と戦えばいいんだ!と思わせてくれるようなプレーでした。最終日の9番と16番、あの2つのミスショットがなければ最後まで金メダルを争っていたのではないかと思います。
一方で、金メダルを獲得したリディア・コー選手は終始危なげない試合運びをしているように見えました。それでも終盤に池に落とすシーンを見たときには物凄い重圧も背負いながらプレーをしているんだなと感じましたね。実は、今回金メダルを獲得することが出来れば彼女自身の殿堂入りが決まっていたんです。彼女自身も試合前に、そのことについてふれていたので意識していたと思います。なによりオリンピック3大会連続のメダル獲得、そして悲願の金メダル獲得、並々ならぬ思いがあったと思いますし、その重圧を自ら背負い、現実として達成した今大会のプレーは彼女のゴルフ人生の大きなハイライトになるような4日間だったと思います。同じプロゴルファーとして素直に嬉しかったですし、心から祝福します。
それにしても、私たちの世代はゴルフをオリンピック種目として誘致していたので、今回の松山選手と山下選手の活躍は感慨深かったです。欧米の選手はライダーカップやソルハイムカップといった国を背負って戦う大会がありますが私たちアジアの選手は機会がないんですよね。それだけにオリンピックは特別な大会ですし、誰もが出場を望んでいます。今回の活躍を見て4年後こそ自分が出る!と火がついた選手は多いと思います。
少し気が早いかもしれませんが、4年後はロスアンゼルスのリビエラCCでの開催が決まっています。実は、私がアメリカツアー参戦時にホームコースとして練習させてもらっていたコースなので、今から高揚感がおさえられないんです。それに、リビエラは絶対に日本人向けです。距離が短くトリッキーなつくりは私たちが育った日本のコースに非常によく似ています。松山選手も今年優勝しましたし、男女メダル獲得!も可能性は低くないと思います。それに、次回は男女ペアマッチを取り入れるかもしれないというニュースも入ってきています。やっぱり、個人競技だけだといつものトーナメントと変わらないように見えてしまうのですが、国を背負ってお互いの1打1打を見守っていくような試合が見れたら最高に楽しいと思います。今から、4年後のオリンピックが待ち遠しいです!
いかがでしたか?4年後は誰が日の丸を背負って戦ってくれるのか、今から楽しみですね!
有村 智恵
●ありむら・ちえ/1987年生まれ、熊本県出身。159cm。通算14勝(メジャー1勝)4月に双子の男の子を出産。
構成=岡田豪太
写真=田中宏幸
協力=取手国際ゴルフ倶楽部