シャチは狩りの練習としてボートを襲っていた!? / Credit:Canva

イヌやネコはおもちゃで遊ぶのが大好きであり、これによってストレスを発散させるだけでなく、狩りのテクニックを学んでいます。

スペインでイルカの研究や保護を行う団体「Bottlenose Dolphin Research Institute(BDRI)」に所属するブルーノ・ディアス・ロペス氏ら研究チームによると、海洋生態系の頂点に立つ海の王者「シャチ」にも、同様の傾向があるようです。

新しい研究によると、シャチがボートを襲うのは、マグロを狩るための練習である可能性が高いというのです。

むやみに反撃しない人間たちのボートは、シャチたちが遊びながら狩りを学ぶのに都合の良い存在なのかもしれません。

研究の詳細は、2024年6月18日付の学術誌『Ocean and Coastal Management』に掲載されました。

目次

シャチがボートを襲う事件が相次ぐシャチは好物のマグロを追って移動し、チームプレーで狩りを行うシャチたちはマグロ狩りの練習としてボートを襲っていた

シャチがボートを襲う事件が相次ぐ

シャチは高い知能と社会性、そして驚異的な攻撃力を持つ「海の王者」です。

イベリア半島とアフリカ大陸を隔てる「ジブラルタル海峡」周辺では、2020年ごろから、シャチの一団がヨットやボートを襲撃する事件が相次いでいます。

最近の2024年5月でも、ジブラルタル海峡を帆走していた約15mのヨットがシャチの一団に襲われ、沈没させられました。

専門家らによると、高度な社会性を持つシャチたちの間では、一匹の始めた特定の行動が仲間たちの間で流行することがあり、ボートへの体当たりが続出する理由も、彼らの間でそれが流行っているための可能性があるという。

では、多くのシャチたちにとって、襲撃は単なる真似事であり、その行為自体には意味がないのでしょうか。

最近、ロペス氏ら研究チームは、その答えを見つけるため、イベリア半島やビスケー湾(イベリア半島の北義肢からフランス西岸に面する湾)における2020~2023年のシャチの発生記録を調査し、シャチたちの行動の理由を分析しました。

シャチの目撃記録は、上記の期間で、合計597件も集まりました。

そして、その記録のうち47%で、シャチがボートやヨットに接触していたことが分かりました。

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シャチは好物のマグロを追って移動し、チームプレーで狩りを行う

研究チームは、シャチの発生記録を元に、シャチの移動に関するコンピュータモデルを作成。

これにより、「シャチ」とシャチの獲物である「タイセイヨウクロマグロ(学名:Thunnus thynnus)」の季節ごとの居場所が同じだと分かりました。

つまり、シャチとマグロの移動は一致しており、マグロの居場所が分かればシャチの居場所も分かることになります。

ロペス氏によると、シャチは様々な獲物を食べることができますが、群れごとに異なる獲物を好むのだとか。


シャチたちはチームプレイでマグロの群れから1匹だけを引き離す / Credit:Canva

そしてイベリア半島付近のシャチたちは、このタイセイヨウクロマグロが大好きで、彼らを好んで狩るようです。

ただし、海の王者であるシャチでも、マグロを狩るのは簡単ではありません。

タイセイヨウクロマグロの成魚は、数メートル・数百キロの巨体であり、大きな群れを成して泳いでいます。

しかも彼らは海で最も速い魚の1つであるため、シャチたちはマグロを狩るために互いに協力しなければいけません。

シャチたちは狙いを定めた1匹のマグロに襲い掛かって体当たりし、まず群れから引き離します。

ロペス氏によると、1頭のシャチがマグロに襲い掛かった後、さらにもう1頭のシャチが追撃の形で襲い掛かることもある」そうです。

そのようにして何とかマグロを孤立させると、マグロを疲れさせてから、捕まえやすい浅瀬へと追いやります。

シャチたちは大好物のマグロを狩るために、チームプレイを駆使しているのです。